広島からユニコーン創出へ グローバル目指すスタートアップ5社の実証実験の成果
広島県 D-EGGS PROJECT「サキガケ」 デモデイ2023 イベントレポート
提供: 広島県
スマホ接続型デバイスを用いたオンライン眼科検診サービスを提供する
株式会社MITAS Medical
MITAS Medicalは、スマートフォン接続型デバイスを用いて、どこでも適切な眼科医療が受けられるオンライン検診サービスを提供している。アジアやアフリカをはじめ日本でも、眼科医不足や眼科医が都市部に偏在しているなどの課題を地方は抱えている。また、治療可能にもかかわらず、通院が困難なために、重症化したり失明したりしてしまう患者が多いという。
MITAS Medicalは山間地や離島の診療所にオンライン検診システムを導入し、気軽に相談できる体制を整備することで、眼科へのアクセスを改善する。開発したスマートフォン接続型の眼科診療機器「MS1」は、眼科医でなければできなかった検査を眼科診療経験がない人でも容易に行える。「MS1」で撮影した画像データは眼科医に即座に共有され、遠隔での検診が可能となる。
「サキガケプロジェクト」においては、広島県の中山間地域である安芸太田町の住民向けに、拠点となる病院を定めた定点型遠隔検診、巡回による住民検診、個別巡回型の遠隔検診といった3つのプランで実証を行った。成果として、地域住民が身近な会場で眼科検診が受けられるようになったことをはじめ、検診をきっかけに、眼科を受診していない人の中で約5%が眼科受診が必要と判定されたこと、住民検診に前眼部検診を初めて導入したことが挙げられた。
今後もさまざまな運用方法を検討しながら、検査内容の拡充を目指す。北氏は「眼科領域だけではなく、他の診療科目にもノウハウを還元していくことで、オンライン検診、診療のファーストペンギンとして活動していきたい」と語った。
ピッチ後には、ゲストのUTEC(株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ) 代表取締役CEO・マネージングパートナーの郷治友孝氏から、「医療機器としての承認とビジネスモデルに関してお聞きしたい」との質問が上がった。
北氏は「医療機器としての承認に関しては、FDAやCEマークを取得済みで、医療機器として販売可能。ただ、システムに関しては未取得なので、今後取得を進めていく。ビジネスモデルとしては、デバイスの販売を始めとし、クラウドサービスや検診システムを提供する形を考えている」と回答。郷治氏は「オンライン検診と相性の良いビジネスモデルだ」とコメントした。
オンラインでの簡易迅速尿検査により通院ハードルを解消する
株式会社ユーリア
ユーリアは「2分でわかる簡易迅速尿検査」を提供するスタートアップだ。広島県の離島や中山間地域などには、通院が困難な住民が多い。例えば今回実証を行った呉市の大崎下島のケースでは、呉市内の病院に行くためのバスが1日2本のみで、乗り遅れると宿泊が必要になるという不便さがある。
ユーリアは独自の検査キットとアプリを用いて尿検査をオンライン化することで、通院が困難な課題を解決する。具体的には、患者は病院もしくは薬局で検査キットを入手し、自宅で尿検査を行う。検査キットは尿がかかることで試験紙の色が変化する。この状態をスマートフォンのカメラで撮影し、アプリで画像を読み取り解析して検査データを取得。スマートフォン上に栄養状態や健康状態が表示される仕組みだ。
「サキガケプロジェクト」では、法規制に関するヒアリングと検出データの精度検証に取り組んだ。法規制のヒアリングでは、当初雑貨としての販売を見据えていたが、健康診断の項目を表示する場合は医療機器としたほうが良いと結論付けられた。検出データの精度検証は名古屋大学医学部附属病院で行われ、既存の医療機器と遜色のない98.8%の検出精度を記録した。
今後は医療機器としての承認を取得した後、実証を行う予定だ。水野氏は「オンライン診療が増えているなかで、検査のDXを推進したい。解決できる課題は多い。広島を拠点に医療機器の承認を目指して、開発を進めていきたい」と語った。
湯﨑知事は「広島県では医療機器の生産額が100億円から10年間で375億円にまで伸びている。昨年から、サポート対象を機器だけではなくサービスにも広げた。医療、健康関連のサポートやコミュニティを活用し、成長に向けて取り組んでほしい」と述べた。