フードロス、技術者の人材不足 社会課題に取り組む5社がプレゼン
豊田市「SENTAN Maker's Pitch」
豊田市は、2022年12月1日、新たな事業展開を支援することを目的としたピッチイベント「SENTAN Maker's Pitch」を愛知県豊田市のものづくり創造拠点SENTANにて開催した。本イベントは、豊田市内のものづくり企業や団体が、企業や投資家、メディアなどに対し、短時間でアイデア・技術・製品をプレゼンテーションすることで、事業化や販路拡大、外部との事業提携の促す交流を目的としたもの。令和4年度は12月1日と12月9日の2回開催し、1回目の今回は「新しい技術・製品・サービス」をテーマに、And Gamer 株式会社、合同会社学生ギルド、有限会社ソフトロックス、どんぐりピット合同会社、4th.aiの5社が登壇し、技術やサービスを紹介した。
新急成長中のeSports チーム「UNLOQ」を支援してくれるスポンサー募集
And Gamer株式会社は、2022年3月に法人化したばかりのeスポーツスタートアップ。ゲーム周辺機器の開発・販売、プロeスポーツチームの運営、eスポーツ大会の開催・運営を手掛けている。eスポーツ市場は現在急成長中で、2022年の市場規模は120億円と、2020年の60億円から約2倍に成長している。
同社が運営するeスポーツチーム「UNLOQ」は、超人気ゲームApex Legendsの大会「FFL GLOBAL CHALLENGE#2」の日本代表決定戦で1位を獲得。日本代表に選出されたチームは米国NYに渡航し、米国の強豪チームと遅延のない環境で対戦できる。
UNLOQの所属選手はいずれも世界的な実力を備えているが、現在は十分な給与が支払えておらず、アルバイトをしながら選手活動を続けている状況だ。同社では周辺機器の提供とスケジューリングなどのサポートを提供しており、より集中して選手活動に取り組めるよう、スポンサーを募集している。
スポンサーのメリットは、SNSやウェブページ、ユニフォームへのロゴの掲載、チームや選手とのコラボグッズの制作、選手のSNS等を通じたプロモーションなど。実際にゲーミングPCメーカーとのコラボ製品を制作しているとのこと。
既存のゴミ箱をスマート化できる「超長寿命観測装置 monaca」
合同会社学生ギルドが取り組むのは、公衆のゴミ箱問題。渋谷駅周辺にある公衆ゴミ箱の年間維持費1800万円を超えるという。ゴミ箱の容量超過は、景観の悪化、犯罪率の向上や風紀の乱れにつながる。
ゴミ箱の管理コストと公衆衛生の課題の解決策として注目されているのが、スマートゴミ箱だ。米BigBelly Solar社が開発したスマートゴミ箱「BigBelly」は、内部のセンサーがゴミの高さを検知し、ゴミがいっぱいになると通知することで適切なタイミングで収集できる。
しかし、スマートゴミ箱を全国に普及させるには、導入コストの高さ、電源とネットワーク環境の確保が課題となる。同社が開発した「超長寿命観測装置 monaca」は、既存のゴミ箱に装着するだけで簡単にスマート化できる装置だ。
電池は内蔵型で電源がない場所でも設置でき、省電力・長寿命で5~10年の連続駆動が可能だ。通信にはLPWAN(Low Power Wide Area Network)を採用することで、省電力かつ長距離の通信を実現する。さらに消費電力を抑えるため、通信頻度を少なくし、間欠データはAIで推定して保管する機能を備える。
推定モデルやセンサーの種類を変えれば、在庫管理や非常設備の保守、バスの乗降確認などにも応用できそうだ。現在は試作品が完成しており、今後はゴミ箱の製造メーカーや管理会社などと協力しながら実用化を進めていくとのこと。
波形判定・波形解析技術の企業への導入を推進し、日本のGDPを底上げする
有限会社ソフトロックスの波形判定・波形解析機は、1989年にトヨタ自動車株式会社からの「部品精度向上」「部品の全数検査」「次に不良品を流さない自己完結」「加工中に検査」という要件すべてに対応できる外部出力をもつ波形判定・波形解析機として受注開発。1990年に初代波形判定・波形解析機「サイクルロガー(CL-1・2)」を納入開始し、以来、30年以上トヨタの生産ラインで使われている実績がある。
波形判定・波形解析技術は、サンプリングポイントごとの複数の標準偏差から標準偏差波形を作成し、見える化するのが特徴で、信頼性の高い上下限波形から全数検査が可能となる。
この技術を心臓の動きや体の運動の測定に応用すれば、医療やヘルスケア領域にも活用できそうだ。
波形判定・波形解析技術の活用を広げるため、「日本のGDPを毎年30兆円底上げする活動」を開始し、波形解析・波形判定士の国家資格の認定、公益社団法人化を目指している。
「シェア冷蔵庫」で食事難民やフードロス問題を解消
どんぐりピット合同会社は、人とまちをつなぐシェア冷蔵庫サービスを普及し、フードロスゼロを目指す2020年創業の食農スタートアップ。
日本では年間約600万トンの食糧廃棄がある一方で、食事難民の数は2000万人と先進国の中では上位だ。シェア冷蔵庫は、地域に設置した冷蔵庫に入れるだけで食品の売買が気軽にできるおすそわけサービス。会員登録すると、二次元コードが発行され、冷蔵庫の商品を選ぶとキャッシュレスで決済できる仕組み。出品者も売り上げの管理が不要で自分の好きなタイミングで1品から販売可能だ。実店舗を持たない事業者の商品や地元の野菜の販売、あるいは人の集まる駅前などに設置すれば商品のPRとしても活用できる。
実際に設置されているシェア冷蔵庫は、棚ごとにお惣菜やお弁当、お土産やデザート、福祉事業施設の商品、地元の野菜に分かれており、1台の冷蔵庫で地域のいろいろな業者の食材が買えるようになっている。
現在、愛知県や企業の協力のもと、設置場所を増やしており、2023年度には50台の冷蔵庫を設置する予定だ。
MaaS技術者の人材不足を仕組みによって解決
4th.aiは、自動車制御技術を開発するスマートインプリメント株式会社の社内カンパニーとして2021年に設立したエンジニアチーム。AIやロボティクスなど先端技術をもつプロフェッショナル人材で構成されているのが同社の強みだ。
自動車制御開発で培った技術をもとにMaaS事業に参入し、自動運転や自律走行ロボット開発などモビリティの技術を中心に提供。さらに自律走行ロボットを遠隔監視するためのクラウド開発も手掛けている。
今後は、国内を中心に、陸・海・空のモビリティを制覇し、将来は宇宙モビリティ事業への挑戦を目指していきたいとのこと。4th.aiでは、高度なプロフェッショナル技術を持つチームメンバーを募集している。また、モビリティやロボティクス、AIなどの技術を求めている企業はぜひ相談してほしい、とアピールした。