デバイスとモノづくりの観点でIoTの存在意義を考える

ソラコムの2人に聞いた IoT時代のモノづくりとは?

大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ソラコム

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デバイス寄りの人、クラウド寄りの人にファストパスを

大谷:今までのモノづくりをしてきた人からすれば、チャンスでもあるのですが、チャレンジでもあります。

桶谷:これまでデバイスだけ開発してきたから、クラウドなんてわからないよという人も増えたし、逆もしかり。クラウドだけやってきたから、デバイスがわからないよという人も増えたと思っています。これはIoTにおける最大の課題ですかね。

松下:デバイス寄りの人たちが現時点でクラウドの知見を持っていないというのはしようがない。ただ、クラウドの知見がないと、せっかくクラウドを使っているのにレンタルサーバーの延長線上として、イチからサーバー立ててしまったり、RDBMSをイチからインストールしたりするんです。

これって逆もしかりで、デバイスの知見を持っていないクラウド寄りの人たちも、もっといいデバイスがあるのに、ラズパイでがんばってしまうんです。

大谷:前回のカレーの話だと、スパイスからカレー作り始めちゃうんですね(笑)。

松下:そうなんです。目的に対して手間がかからず、安価で安定的な手段があったりするので、ここはもっと私たちが情報発信すべきなんですよね。「あなたはもっと簡単になれる」みたいな(笑)。

その意味で、(ワンストップで使える)SORACOM HarvestやLagoonはデバイス側の人たちから見たときに、「クラウド側は考えなくていいんだ」という1つの解になっています。

大谷:逆にデバイス側の知見を持っていないクラウド寄りの人たち向けのサービスがありますか?

松下:サービスと言うよりは、デバイス自体を提供しているというのが正解かもしれません。私たちがリファレンスデバイスとして、IoTボタンやGPSトラッカーを提供しているのはそういう背景だったりします。

リファレンスデバイスを購入される方は、やはり今までデバイス開発をやったことない人が多いんです。いきなり基板にハンダ付けしてみろと言われても困ってしまいますからね。

大谷:その点、リファレンスデバイスを買ってくれば、すぐに使えると。

松下:ソラコムは通信だけではなく、クラウドもデバイスもやっているのは、さまざまな方が最近乗り入れてもらっているから。ある人には不要かもしれないけれど、別の人には必要という品揃えになってるんですよね。

大谷:総合格闘技のIoTに立ち向かえるエンジニアのスキルセットって、ソラコム創業当時から話題になっているトピックですね。スキルだけではなく、アイデアや閃きも必要でしょうし。

松下:確かに自分の欲しいデータを得るためにはアイデアが必要なんです。でも、アイデアを得るには、デバイスに触れてみて、どんなデータを得られるのか、どんな変化を見つけられるのかを理解しなければなりません。その上で、自分が欲しかった情報がなにかを改めて考え、両者を照らし合わせることで、使い道につながります。

桶谷:最近、MaxがGPSマルチユニットをドアの開閉センサーとして使うというネタをやっているのですが、それもアイデアが面白いです。

大谷:どういう内容なんですか?

松下:GPSマルチユニットって、4種のセンサーとLTE-Mの通信機能、バッテリーが搭載されたセンサー入りIoTデバイスです。センサーとしては、GPSの位置情報、温度、湿度、加速度の4種類なんですが、加速度を使うことで実は「傾き」がわかります。

大谷:それは目に鱗ですね。

松下:傾きがわかるとなにがわかるか? これは閃きが必要なのですが、例としてはドアの開閉がわかります。「傾きセンサー」というだけでは、ドアの開閉には結びつけられない。得たい情報とセンサーの仕様を結びつけられると、実は欲しい情報をわりと簡単に入手できます。

傾きでドアの開閉という情報を知る

大谷:ただ、確かになかなか至らないですね。

松下:そうなんです。先ほどのGPSマルチユニットも、加速度センサーとして売っているので、ドアの開閉がわかるデバイスという形では提供していません。みなさんが知りたいと思っていることがソリューションであり、そこで使える通信入りデバイスという位置づけなんです。

デバイスに関しても「すぐに試せる」という価値を大事にしたい

大谷:ソラコムって、通信はもちろん、デバイスも手軽に試せるというのが大きいですよね。今までこの手のデバイスを購入しようとしたら、100個オーダーですとか、専門の商社を通してくれという話でした。「Makerムーブメント」で電気工作やハードウェアがコモディティ化してきたとはいえ、やはりSORACOM IoTストアでお手軽に買えるってけっこう革新的だと思います。

桶谷:実際にSIM100枚、納期はいつですか?といった問い合わせもいただきます。保証をするものではないですが、「翌日にはお手元に」くらいのスピード感ではあるんですよね。

僕はデバイスの経歴はあまりなくて、ソフトウェアやクラウド寄りの経歴なので、使いたいときにすぐに使えるのがけっこう当たり前なんですよね。だから、このスピードに違和感はないし、価値だとは意識していませんでしたが、お客さまと話していると納期早いのは助かりますと言われることが多いです。

松下:僕はもともとハードウェア出身だし、EC事業もやっていた経験があります。もう15年以上前ですが、受注したら出荷が翌日になるのは当たり前だった時代に、当日中に出荷をして翌日届くAmazon.comみたいなところは驚きでした(笑)。Webブラウザから数クリックすればサーバーにログインできるというAWSとあわせて、すごいとしか言いようがなかったです。

出荷が早いとなにがうれしいかというと、在庫を持たなくてもいいんですよ。注文が入った段階で、SIMやデバイスをSORACOMへオーダーすればいいので、資金繰り的にも助かると、パートナーに言われたこともあります。

大谷:事例で話を聞くと、SORACOMのメリットで最初に出てくるのって、とにかくモノが来るのが早いという評価ですよ(笑)。

松下:最初に評価されるのが物流なんだ……と(笑)。

桶谷:社内にいると、出荷の仕組み自体は理解しています。でも、出荷が早いのって、昔から目指していたのかなあって思います。僕が聞くのも変ですけど(笑)。

松下:出荷が早いという話って、先ほどお話しした「使える人を増やす」という目的にも合致すると思っています。Webから注文してから、商品到着に半年かかったら、正直やる気が萎えるじゃないですか(笑)。ソフト、サービス、デバイスまで含めて、すぐに使えるというのもソラコムが提供する価値になるんじゃないかなと思います。

そして解約も簡単であることも重要だと思っています。やめやすいということは、ひるがえって「始めやすい」ことにつながります。

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