デバイスとモノづくりの観点でIoTの存在意義を考える

ソラコムの2人に聞いた IoT時代のモノづくりとは?

大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ソラコム

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IoT時代のモノづくりがメーカーの競争力に直結する

大谷:IoTってInternet of Thingsなので、モノの話は欠かせません。松下さんの目から見て、IoTによってモノづくりは変わったのでしょうか?

松下:大きく変わっていると思います。具体的には通信の活用で「モノづくりのルールが変わり始めている」という実感です。ソラコムのお客さまと接していると、特にそれを感じます。

スマートフォンもいわばデバイスは入れ物で、アプリをいれて使いますよね。そしてメール、スケジューラー、SNSやゲームも通信があるから使える。通信前提で、デバイスやアプリを作るようになり、考え方はすでに進化しています。

大谷:最近はローカルとクラウドの境目があいまいです。

松下:ローカルとクラウドを一体にして「製品」としているのがスマートフォンのゲームだと感じています。通信が不要なローカル処理と通信が必須なクラウドの処理を分散し、利用者からはシームレスなUXに見せています。こういう時代になって、モノづくりは大きく変化せざるをえない状況になっています。

これまでのモノづくりは小型化・高性能化・低価格化が競争力の源泉でしたし、今もそうです。CPUやマイコン、センサーをうまく配置し、性能を引き出せるようにパッケージ化することですね。

でも、IoTにおけるモノづくりは、通信を活用してクラウドのパワーを活用するところまで含むようになっています。先ほど話したゲームのように、端末やクラウドまで含めてサービスとして展開されるので、モノづくりや製品の定義がずいぶん変わってきたというのが、私が感じている事です。

モノづくりの定義が変わった

大谷:桶谷さんもそんな実感ありますか?

桶谷:僕の中のモノづくりって、各パーツを作ることなんです。センサーだったり、モニターだったり、CPUだったり、部品ですよね。

大谷:なるほど。モジュールというか、ハードウェアの形をしているものですね。

桶谷:でも、今は個別の製品を組み合わせてIoTソリューションを作るという感じです。これまでハコの中の部品の組み合わせで閉じていたモノづくりが、IoTで通信が入ることでどんどん拡大し、クラウドまで拡がった。「モノがソリューション化」してきた感じですかね。

大谷:いろいろな意味で境界線みたいなのが変わったんですね。

松下:境界線が変わると、これまで個別の製品として売っていたものが、桶谷さんみたいにパーツとしても見えてきます。通信を活かしたIoT時代のモノづくりにどう取り組むかは、これからのモノづくりに大きな影響を与えると考えています。

たとえば、歩数計は歩数のカウントが役割でした。そこで競争力の一つが精度です。改良によって高精度の歩数計は数多くありますが、歩数計を欲している消費者のニーズは健康促進であり、歩数のカウントは手段の一つなんです。精度も大切ですが、それよりも昨日の歩数や今週の歩数と比較したり、なんだったら歩いて健康になるサービスが欲しい。そのため、歩数計に対して「データを取りたい」となるわけです。

大谷:体重計とかもそうですね。従来は体重を正確に計測できればよかったのですが、最近は健康管理やダイエットのサービスで用いるパーツという位置づけかもしれません。いずれそうなると思っていたサービス化が思いのほか早く来た感じです。

プラットフォームがあるから、既存資産もよみがえる

大谷:境界があいまいだからこそ、あえて聞きたいのですが、デバイスで担うべき部分、クラウドで担う部分ってどうお考えですか?

松下:SORACOM IoTストアで取り扱っているパートナーのGPSトラッカーの話が一つの方向性になるかと思います。

そのGPSトラッカーは、もともとパートナー自体が販売する際には、特定のクラウド連携の設定が入った状態で販売してます。でも、SORACOM IoTストアで販売しているモデルは、データの送信先が最初からUnified Endpointになっています。送るデータフォーマット自体は同じですが、SORACOM Orbitでデータ形式を変換しています。

具体的にはUnified Endpointに送ってもらったバイナリデータを、SORACOM Orbit上で動作する変換プログラムを使ってJSON形式に変換しています。すでに販売済みのハードウェアにもかかわらず、Unified EndpointとSORACOM Orbitによって多くのクラウドへ対応できるデバイスとして利用できるようになっています。

大谷:なるほど。通常は既存のデバイスをクラウドネイティブ化させようとしたら、たとえばAWSのSDKを入れて、認証とって、個別の型番を用意してみたいな話になりますが、それがクラウド側で実現されるんですよね。

松下:だから、これからIoTのデバイスを作りたいと考えているメーカーはもちろんクラウドネイティブなデバイスを作ると思うんですけど、すでに完成されたハードウェアを持つお客様でも、「より多くのクラウドに対応できる可能性があります!」という話になるんです。これもソラコムを選ぶ理由になるのではないでしょうか?

大谷:それは素晴らしいですね。データ送信のみを行なう単機能なハードウェアであっても、とりあえずSORACOMでデータを送ってくれれば、データ変換なり、転送なり、セキュリティなり、ハードウェア機能の一部をSORACOMプラットフォームで実現しますよという意味ですよね。

松下:はい。前回テーマだったプラットフォームは、お客様がなにかを作りたいと考えたときに使っていただくツールでもあるのですが、今あるリソースでどのようにクラウドに乗り入れるかという選択肢でもあります。プラットフォーマーとしてそういった機能を提供しているので、既存資産を活かすことが可能です。

ハードウェアって文字通りハード(硬い)ので、変化に弱い面があります。でも、IoT時代のモノづくりはハード部分と、ビジネス要件に応じて変化し続けるソフトウェア部分をどのように分担するかというアーキテクトがすごく重要になります。

その点、ソラコムはいろいろな仕組みをクラウド側に寄せています。だから、本当にハードでコーディングしなければならない部分は最低限にして、柔軟な開発ができます。通信を使って進化しやすくして、サービスの実現に近づけていくのが正しい気がしますね。

大谷:クラウドを利用すれば、市場やテクノロジーの変化に柔軟に対応できますよね。

松下:スマホって多機能だけど、いろいろと操作を覚える必要があります。その点、スマホよりも単機能でありながら、つながることを前提としてクラウドのパワーをフル活用しているのがスマートスピーカーだと思っています。機能をあえて削ることで、使える人を増やすことができるわけです。

機能が多いと使いこなせる人が少なくなる

IoTボタンが例に挙げられます。デバイスの機能としては、ボタンを押すと通知するという機能だけです。じゃあ押したときのロジックはどうするのかというと、クラウドに任せるというアーキテクチャなんです。ハードコーディングは最小限にして、ソフトウェアを進化させるという開発ができれば、専用機なのに、ずっと使い続けてもらえるということができます。

デバイスは現実世界や人とクラウド間をつなげるインターフェイスとして、重要性がますます高まっていると感じます。

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