メルマガはこちらから

PAGE
TOP

福岡市「スタートアップ都市宣言」から10年、新たな船出

「B Dash Camp 2022 Fall in Fukuoka」で福岡市がピッチセッション、ブースを展開

提供: 福岡市

1 2 3

 2022年10月19日~21日、福岡県福岡市でスタートアップ業界最大級のカンファレンスイベント「B Dash Camp 2022 Fall in Fukuoka」が開催された。B Dash Camp 2022 Fall in Fukuokaはスタートアップや有力ベンチャー企業への投資を行なっているB Dash Venturesが主催。業界の著名人によるトークセッションやスタートアップによるピッチなどが開催されるイベントだ。

 テーマは前回の「B Dash Camp 2022 Summer in Sapporo」と同様に「パラダイムシフト」。業界全体がWeb2からWeb3へシフトしている段階と捉え、Web3領域に特化したステージ「B Dash Crypt」を設置。20日、21日の2日間で、計12のWeb3に関するセッションが開催された。

 開催地となった福岡市は2012年に「スタートアップ都市ふくおか宣言」を表明し、都市の成長の柱としてスタートアップ支援に注力している。政府の国家戦略特区の一つ「グローバル創業・雇用創出特区」にも指定され、特区の規制改革を活用したスタートアップのチャレンジ支援を推進。2020年には内閣府の「スタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」において、グローバル拠点都市に選定された。

 B Dash Camp 2022 Fall in FukuokaではB Dash Campと福岡市がコラボして2つのピッチコンテスト「福岡市 国家戦略特区規制改革ピッチ」と「B Dash Camp × 福岡市 コラボレーションピッチ」が開催された。

「福岡市 国家戦略特区規制改革ピッチ」の優勝は
シェアサイクルサービス「チャリチャリ」のneuet株式会社

優勝したneuet株式会社 代表取締役 家本賢太郎氏

「福岡市 国家戦略特区規制改革ピッチ」はB Dash Camp 2022 Summer in Sapporoで高島宗一郎市長が発表した企画だ。福岡市は世界でいちばんビジネスしやすい環境をつくることを目的に、ピッチの登壇者をはじめ、提案のあった規制改革の実現に向け支援する。

 今回は、42件の応募から選ばれたスタートアップ3社が事業拡大の障壁となる規制改革を提案した。

 優勝したのはシェアサイクルサービス「チャリチャリ」を運営するneuet株式会社だ。neuetは2018年2月に福岡市内でサービスを開始し、名古屋、東京、熊本を含めた4都市で展開している。福岡市内に550か所以上のサイクルポートと2500台以上の自転車を擁し、2022年8月に政令市で過去最速となる累計1000万回の利用を達成した。「まちの移動の、つぎの習慣をつくる。」をミッションに、「ちょっとそこまで」の移動を自転車×テクノロジーで便利にすることを目指す。

 neuetが求める規制改革は建築基準法施行令第2条に「シェアサイクル用駐輪場」を追加することだ。建物にポートを設置する場合、駐輪場としての用途が発生するため、ポートのサイズによっては容積率に影響してしまう。容積率が余っている建物は少ないため、シェアサイクルの利用促進に欠かせないポート増加の障壁になっている。規制改革によりポートの設置を容積率に影響しないようにすることを目指す。近年では宅配ボックスや家庭用蓄電池が生活に欠かせない物として建築基準法施行令第2条に追加されている。

 neuetによればポートが密度濃く展開されるほどシェアサイクルの利用率は高まる。2018年から4年間の平均で1回あたりの利用が1.8km、約10〜12分間。福岡の中心地である博多、天神エリアでは自転車1台の利用回数が1日10〜20回と効率良く利用されている。しかし、ポートを増設できる建物が建築基準法の規制により限られてきている。

 neuetはシェアサイクルの普及を「20世紀型の移動から21世紀型の移動への変化」と定義する。20世紀型の移動は大量輸送に適した鉄道やバス、コンテナトラックなどを中心に発達した。21世紀型の移動は縦横斜めに自由に発展するという。木にたとえれば鉄道やバスが幹でシェアサイクルが葉脈の役割を果たす。

 移動方法の変化は20世紀型の移動に限界があることを示す。町づくりの観点では駅から駅の移動によりターミナル周辺は栄えるが、少し駅を離れると極端に人が少なくなる現象が起きている。また、地方ではローカル鉄道やバス会社の経営悪化により既存の移動手段を維持することが困難になる事例も多い。

 ポートが密度濃く配置されているシェアサイクルが発展すれば、駅から駅まで一直線だった移動が縦横斜めに自由化され、駅周辺以外にある店や施設の利用が増加する。また既存路線が廃止になる地方においても、必要な距離に応じた柔軟な移動手段となり得る。

 家本賢太郎代表取締役は「neuetは町を感じ、風を感じられる福岡市をつくりたい。福岡市をマザーシティとして成長を目指す。2022年の10月には本店を東京から福岡へ移した。福岡市から世界にチャレンジしていきたい」と展望を述べた。

DAOの防災プラットフォーム「Ohisama DAO」を企画
株式会社Chaintope

ピッチをする株式会社chaintope 代表取締役 正田英樹氏

 株式会社chaintopeは福岡県飯塚市で創業以来パブリックブロックチェーンの研究を行い、法人向けパブリックブロックチェーン「Tapyrus(タピルス)」を開発。サステナビリティ、トレーサビリティなどの各分野で、ブロックチェーンの自治体・企業の導入実績を複数有する。現在、被災住民が思い出の写真をデジタル住民票付NFTとして販売することで、個人間の迅速な金銭支援や関係人口の創出、地域住民の防災意識の醸成を実現する防災プラットフォーム「Ohisama DAO」を企画している。

 今回の規制改革ピッチにおける提案は、合同会社の特例として「自律分散型組織(DAO)」の新しいカテゴリを作り、社員の氏名と住所を定款の絶対記載事項から除外することだ。前提として「Ohisama DAO」の普及には法人格を付与することで法的安全性を確保することが不可欠であることを挙げた。DAOを法人化するには現行法令上で最もDAOに近い合同会社が適しているが、DAOの社員(リアル、デジタル住民)が流動的な特徴と合わない問題点がある。規制改革をしてもブロックチェーン上で社員や持分が明確になるため、定款に社員情報を記載しない影響が軽微であることを挙げた。

「Ohisama DAO」を進める背景には正田英樹氏の東日本大震災時の実体験がある。災害時には迅速な資金援助と被災者同士や被災者と支援者のつながりが重要だ。しかし、震災時には義援金を平等分配するために膨大な時間を要する。「Ohisama DAO」のNFT販売で被災者へダイレクトに資金を届かせる。またDAOのコミュニティ機能でリアルとデジタルのつながりを構築する。

カーボンクレジットの促進に衛星画像を活用
株式会社Molick

ピッチをする株式会社Molick 代表取締役 渡邊匠海氏

 株式会社Molickは適切な森林管理による温室効果ガス吸収量を衛生データから算出するソフトウェアサービスを開発中だ。カーボンクレジットを発行する発行事業体の手間とコストを削減することで、カーボンニュートラル実現に向けてさらなるカーボンクレジットの創出を図るとともに適切に管理できる森林面積の拡大を目指す。

 今回の規制改革ピッチにおける提案は、カーボンクレジット制度「Jークレジット制度」における森林の二酸化炭素吸収量の算出規定に、人工衛星の画像を用いた二酸化炭素吸収量算定の手法を追記することだ。現状では人工衛星の画像データの精度が原因で人工衛星画像による算出が認められていない。しかし、人工衛星産業の発展と技術の向上により人工衛生画像がオープン化され、精度も向上している。アメリカでは人工衛星によるカーボンクレジットのモニタリングが承認されスタートアップが資金調達を実施している。

 現在認められている徒歩調査と衛星画像によるモニタリングでは時間やリスクが大幅に異なる。徒歩調査の場合、書類作成や調査人員の確保、調査時の労働災害リスクなど課題が多い。一方、衛星画像を用いた場合、調査する森林エリアの衛星画像を数分間で取得し、報告書の作成はパソコンで完結できる。Molickの技術はモニタリングの生産性を向上させることに加え、カーボンクレジットの取引量が増加し、森林価値の再定義や中山間地域の経済循環にも寄与する。

1 2 3

合わせて読みたい編集者オススメ記事