ゆったりとした走りから
目の覚めるような加速まで自由自在
「ゴルフ GTI」に乗り込んで印象的だったのは、赤を大胆に使ったメーターのグラフィックと、可愛らしいチェック柄のシートです。素の「ゴルフ」は、モダンだけどスッキリとしており、質実剛健という印象でした。それに対して「ゴルフ GTI」は、モダンなままより外連味があって、座っているだけで少し楽しい気分になってきます。
ゆっくりとアクセルを踏んでスタートさせれば、2リッター・ターボと7速DSGのパワートレインは非常にスムーズで、とてもジェントルな印象。ステアリングの手ごたえも軽く、誰もが“扱いやすい”と感じることでしょう。そのまま、街中を流れにあわせて走っていれば、普通の「ゴルフ」そのものです。ただし、試乗車は19インチの大きなホイール&薄いタイヤということで、低速では路面の凹凸をストレートに拾います。
しかし、「ゴルフ GTI」が本領を発揮するのは、もう少し速度域の高いところ。たとえば高速道路や、箱根ターンパイクのような大きなRの続くワインディングでしょう。
高速道路の合流などで、アクセルをぐっと大きく踏み込めば、「ゴルフ GTI」ならではの、最高出力245馬力/最大トルク370Nmを感じることができます。これはNAエンジンでいえば、3リッタークラスのスペック。1サイズも2サイズも大きなクルマに積まれるようなエンジンです。そして、褒めるべきは、その格上のパワーを「ゴルフ GTI」は軽々と受け止め、路面に伝えてくれます。ドライバーにはなんの不安もなく、パワーを使えるというのが素晴らしいところ。また、速度域の低い街中では軽くて「ちょっと頼りないかな」と思ったハンドリングも、速度を上げるほどにしっかり感が増してゆきます。
速度無制限のアウトバーンがあるドイツで生まれたクルマですから、ターゲットとなる速度域が日本より、もっと上に設定されているのです。ですから、日本での100~120km/hくらいの速度域では、一切不安を感じさせません。これが歴代「ゴルフGTI」が誇ってきた魅力であり、最新モデルも、そうした魅力をさらに磨き上げてきているというわけです。
振り返ってみれば、「ゴルフ GTI」は、ゆったりと走ればお行儀よく、速度を上げればいくらでもそれに応じた走りを見せてくれるというわけです。いわゆる「小さく叩けば小さく、大きく叩けば大きく響く」というクルマ。それが「ゴルフ GTI」だと言えます。
フォルクスワーゲンといえば、近年はEVにまつわる話題ばかりが目立ちますが、内燃機関だけでも、まだまだ世界トップクラスのクルマを作る実力を備えています。そんなことを実感できるクルマであり、試乗となりました。
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


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