「法務業務でもソフトウェアが当たり前に」LegalForceが137億円の資金調達
リーガルテックベンチャー、角田社長は「来年には米国進出を実現したい」と語る
リーガルテックベンチャーのLegalForceが137億円という大型の資金調達に成功した。最新のシリーズD投資ラウンドには、SoftBank Vision Fund 2がリード投資家となり、Sequoia ChinaとGoldman Sachsが新たに参加。2022年6月23日に発表を行った同社 代表取締役社長の角田望氏は、今後の事業戦略として「2023年3月までに米国進出を実現したい」と話した。
LegalForceは2017年創業のベンチャー企業。AIを用いた契約書チェック(契約審査)クラウドサービス「LegalForce」を代表製品とし、2021年1月には2つ目の製品となる「LegalForceキャビネ」を発表した。LegalForceキャビネは、契約締結後の契約書管理を担うクラウドサービスとなる。
LegalForceはすでに2000社以上、LegalForceキャビネも450社以上の導入実績を持つ。導入顧客の中には、サントリーホールディングス、ENEOSホールディングス、日本たばこ産業(JT)などがある。
大学卒業後、弁護士として勤務した経験を持つ角田氏は、LegalForceのミッションを「すべての契約リスクを制御可能にする」ことだと説明する。「契約はビジネスにおいて不可欠なもの。事業上のリスクを守るために結ぶのが契約だが、その契約自体にもリスクが潜んでいる。テクノロジーの力を使うことで、契約書を扱う企業の法務部門、法律事務所の先生を支援したい」(角田氏)。
これまで2018年3月のシード投資以来、シリーズA、B、Cと資金調達を重ねてきた。これまでの投資家には、WiL, LLC、みずほキャピタル、三菱UFJキャピタルなどが名を連ねている。
そして、今回のシリーズDでは約137億円を調達。AIプレイヤーを中心にグローバルで投資をしているSoftBank Vision Fund 2がリード投資家となり、シリコンバレーの有力VCであるSequoiaのアジア部門Sequoia China、Goldman Sachsと、名だたる投資家が揃った。角田氏は「2021年の世界のユニコーンに投資しているベンチャーキャピタルインデックスにおいて上位5社のうち、3社に参加をいただいた」と胸を張った。
シリーズDには既存の投資家も継続して参加をしており、累計の調達総額は179億円となった。
調達した資金の使途としては、「人材」「開発」「営業体制」「マーケティング」「新事業」と大きく5つを考えているという。
中でも「新事業」として紹介されたのが、海外進出だ。最初に狙うのは米国市場という。「英語圏は1000社を超えるリーガルテックのスタートアップが存在しているが、まだまだ黎明期。可能性があると考えている」と述べる。
同社で調査したところ「LegalForceと同様の(AI契約審査)サービスはまだ市場にはない」とのこと。「日本の製品をそのまま英語にするのではなく、アメリカの市場や契約実務にフィットしたプロダクトをきちんと作りたい」とした。
具体的には、来年(2023年)3月までに市場調査を完了し、初期プロダクトを投入する計画だという。
すでにグローバル戦略部も立ち上げており、責任者として、BNPパリバなど財務領域でキャリアを積んだJP Biard氏が部長に着任している。
角田氏はLegalForceの強みとして、(1)機械知性研究部門を設置し、AI、自然言語処理の研究を行っている、(2)京都大学とAI分野での共同研究を実施、(3)開発専任の弁護士が多数在籍、(4)法律事務所とプロダクト開発において連携している、の4つを挙げた。
さらに企業としての強みとして、(1)実績、(2)高い参入障壁、(3)未開拓の市場、の3つがあると分析した。「契約書は言語で作られるが、言語を扱う技術は開発難易度が高い。さらに、AIを活用する上で一定の法律知識がなければ正しいプロダクトを開発することは難しい」(角田氏)。
契約業務はこれまでアナログ、手作業だったが、「ソフトウェアを使って法務業務の品質や生産性を上げるという流れが今後出てくる」と予想した。