都市の3Dモデル化が、街づくりに与える影響とは?
「PLATEAU CONNECT Session 04」レポート
都市の3Dモデルが社会インフラに実装されるまでのシナリオ
ここからは、会の後半に実施されたトークセッションの内容を抜粋して紹介する。モデレーターは、国土交通省の内山 裕弥氏が務めた。
Q1.実際に、3Dデータに関するソリューションやサービスが台頭してきたことに対する所感は。
中村氏:これまで、3Dデータを何に活用するのかが見えない期間が多かった。街の3Dデータが役に立ったり、面白い方向に結びつくことが見え始めたのが3年ほど前だったと思う。PLATEAUのように、国がインフラとして取り組んだこともあり、皆が真剣に取り組むようになった。この広まり方は、日本型だと思う。官公庁がリードしすぎることもなく、民間から生まれたとも言い切れない。“官民連携”という言葉が生きていて、実現されている。
一方現時点では、あちこちでメタバースが乱立するような状況にもなっており、「これからどうなるんでしょうね」という、バブル的な様相も見えてきている。政策としてもどうなっていくのかに注目したい。PLATEAUでひとつの実態ができたので、次の段階に進みつつはある。
Q2.PLATEAUがさまざまなユースケースとともに社会実装されるまでには、どのようなシナリオが考えられるか。
藤井氏:2018年に、ブロックチェーンが大きく話題になった。その後、幻滅期が訪れたが、いま、幻滅期の谷を超え、リアルなビジネスの中で、システムの中で取り入れられ、一般的に使われる仕組みになってきている。ブロックチェーンの場合、幻滅期から社会実装まで4年かかっていると仮定すれば、3D都市モデルも、ここから4年〜5年がひとつの目安になる。
これから、有用性の不確かなメタバースや3D都市空間がたくさん出てくる。その中で、どのように“本物であること”を立証できるかがひとつの鍵になる。また、“おもろいもの”であることも重要。“おもろいもの”なら人は買う。実装段階においては、現場の最前線で活躍している人たちが、ビジネスと3Dデータの効率的な組み合わせ方を発想していくことも求められる。(机上の空論でなく)リアルな足場をわかっている人によるビジネスへの組み合わせが積み重なっていくことで、社会実装は進んでいく。
Q3.PLATEAUを促進させるために、国土交通省に期待することは。
田中氏:3D都市データの開発は全国各地で広がっているが、まだ、“開発者におけるユースケース”を超えておらず、ユーザーにまで届いていない。ユーザーに届かせるためには、簡単にアクセスできたり、データ量が軽い入り口を作ったりすることが必要。関係人口が増えていくことによって、データ量も増えていく。
(スマホを例にすれば)地方都市には、スマホが使えない高齢者がまだいる。キャッシュレス決済が進んでいないケースも多い。「孫と会話するためにLINEを入れてみた」というような“きっかけ”があると、タッチポイントが増えて浸透しやすくなる。
Q4.オンラインを使った“新しい密”を実現するためには、どのようなハード的な取り組みが要求されるか。
中村氏:インターネットの黎明期には、“地方にいながらなんでもできる”というフレーズがたくさん聞かれた。でもそれは幻想だった。実際にはコミュニケーションのツールとしてITが進化すればするほど、都市集積が進んだ。離れていても何かができるようになればなるほど、人は集まりたがった。
同じように、オンライン上に“新しい密”を作り、分散をうながそうとしても、そうはならないかもしれない。「どのような変化がきても対応できるようにしよう」という考え方を持つ必要がある。大きく広げるための取り組みとして思いつくのは、エストニアでは、過去に占領された歴史から、国家を存続させる手段として、電子政府を作る試みを実施した。それくらいのスケール感を持った施策は、ひとつのきっかけになるかもしれない。