都市の3Dモデル化が、街づくりに与える影響とは?
「PLATEAU CONNECT Session 04」レポート
復興支援が発展してスマートシティ化
アクセンチュアの藤井 篤之氏は、会津若松市での震災の復興支援の取り組みが、発展してスマートシティの実現に結びついた事例を紹介。
当初、同社の持っている技術を活用して、会津若松市にどのような貢献ができるかという出発点から、「震災による長期的な影響がある福島でビジネスを創出すること」を目的に定め、プロジェクトはスタートした。
復興が進む中で同社は、ひとつのIDで自治体のさまざまなサービスを利用でき、IDで取得したデータを地域づくりに生かす仕組みの運営を開始。現在では200人規模の拠点を会津若松市に構え、「スマートシティ会津若松」として、デジタルの力を借りた街づくりの取り組みを進めているとした。
また藤井氏は、「現在はデジタルツインがインフラになっていくための過渡期」と話す。そのうえでデジタルツインにおける価値の源泉は、「データそのもの(都市の3Dデータの実体)」「視覚性(3Dだからこそ視認性が向上するという性質)」「リアルタイム性・同期性(現実の状態が即座にデジタル上に反映されること)」「双方向性(現実とデジタルが相互にやりとりできる)」にあるとコメントした。
DXを都市設計に実装するなら好奇心は不可欠
田中 敦典氏は東急不動産株式会社で都市事業本部スマートシティ推進室室長を務めながら、一般社団法人竹芝エリアマネジメントで事務局長を務めている。
実際にスマートシティ化が進んでいる事例として、焼肉店での配膳へのロボットの活用を紹介。ロボットを配膳に活用することで、スタッフは焼き方の指導や来店者との会話といった、人ならではの接客に専念でき、売り上げが増加するケースもあることに触れ、「人手不足をテクノロジーで補う」のではなく、「人がより価値の高い業務に注力する」というロボットと人との共生のアイディアを示した。
また、「ワクワク感やドキドキ感がないと、DXは日常生活に浸透しにくい」と述べ、PLATEAUの利活用に関して、「PLATEAUと何をかけ合わせるかが重要」だとコメント。デザイン、エンターテインメント、コンテンツの力を借りるなど、さまざまな模索を通じて「朝早く起きて清掃をしたり、地元の方々とのイベントに参加したりと、非常にアナログな街づくり」への、テクノロジーの実装の方法を模索したいと話した。
デジタルツインの利点は、
見えないものが見えるようになること
日本電気の佐々木 康弘氏は、現在の地球環境に触れ、「2050年には、地球2つぶんの資源が必要である」という試算を引用。自然災害の増加、インフラの老朽化、労働人口の減少といった課題を抱えている日本の現状に言及しつつ、この解決策としての、ICTを原動力とした社会インフラを提案した。
佐々木氏は、ITC活用のメリットのひとつは「見えなかったものが見えるようになること」であるとコメント。同社が手がけてきた事例として、マンホールの蓋に小さな孔を設け、電波の通り道を作ることで、電波干渉の様子をセンシングし、街全体の電波干渉の状況把握に役立てる仕組みや、観測衛星からの情報を地上で取得し、広範囲の現象を俯瞰的に捉える技術などを紹介した。
またデジタルツインというテーマについて、「デジタルツインで重要なことは、モデリング。実際のデータと、デジタル上でモデル化したデータを組み合わせてシミュレーションすることで、分析の精度が上がり、実用的なデジタルツインができあがる」とコメントした。