企業、地域と大学が融合 東北仙台で進む共創プラットフォーム
TOHOKU STARTUP NIGHT 2022~未来につながる、奥羽の種火~
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仙台市と東北地域大学発ベンチャー共創プラットフォームは2022年3月3日、スタートアップ向けイベント「TOHOKU STARTUP NIGHT 2022~未来につながる、奥羽の種火~」を東京・虎ノ門のCIC Tokyoとオンラインのハイブリッドで開催した。同イベントでは、東北発スタートアップのピッチ、仙台市のスーパーシティ構想、知財戦略、スタートアップ・エコシステム構築などをテーマにした7本のセッションを実施。ここでは、特許庁によるセッション「地方発スタートアップが知財戦略をうまく進めるコツ」についてレポートする。
未来都市ショーケースの実現と仙台・東北発のイノベーション創出へ
仙台市は震災復興の10年間で地域社会と大学の科学技術の交点が急速に拡大。数多くの大学発スタートアップが生まれている。この流れを未来へつなげるため、行政と大学、企業と連携しながらエコシステムの構築に取り組んでいる。その軸となるのが「クロス・センダイ・ラボ」と「仙台市×東北大学スーパーシティ構想」の2つの事業だ。
クロス・センダイ・ラボは、多様化する行政課題や地域課題の解決に向けて革新的なアイデアを持つスタートアップと連携を促進するための窓口として2019年に開設。AI、IoT、ドローンの実証実験をサポートする「近未来技術実証ワンストップセンター事業」と、地域課題の解決に向けた提案を幅広く受け付けてその実現をサポートする「パートナーシップ推進事業」の2つの事業で構成される。いずれも行政と企業が協力しながら解決に取り組むことで、行政にとっては地域課題の解決、企業は仙台を実証フィールドとすることで製品の品質向上や仙台発のサービスとしてPR効果が得られる。
スーパーシティ構想は、東北大学青葉山キャンパスを中心としたエリアをひとつの街に見立てた実証実験の場として活用し、先端的なサービスを提供する「丸ごと未来都市」を実現する取り組みだ。健康や医療、ロボット、エネルギーなど5領域でデータ連携基盤を構築した都市DXを東北全域へと広げていくことを目指しており、東北だけでなく、全国の企業や大学と連携しながらさまざまな取り組みが進められている。
本イベントは、こうした仙台市やスタートアップの取り組みを広く全国に発信し、東北へのつながりのきっかけとなることを目的に開催されたものだ。
地方発スタートアップが知財戦略をうまく進めるコツ
特許庁によるセッション「地方発スタートアップが知財戦略をうまく進めるコツ」では、2019年度の知財アクセラレーションプログラムIPASに参加した東北のスタートアップである株式会社メタジェンと知財メンターを担当した弁理士の内山 務氏が登壇し、IPASでの取り組みを紹介しながら、大学発スタートアップの知財戦略のポイントや専門家の活用についてパネルディスカッションを実施した。
冒頭では、特許庁の比留川浩介氏より特許庁のスタートアップ支援施策について紹介。
スタートアップにとって革新的技術やアイデアといった知財が企業価値そのもの。ところがスタートアップコミュニティにおいて知財意識が低く、海外VCからの出資調達やM&Aなどの機会を逃している。スタートアップの課題として、「1 知財を企業価値として意識・評価できていない」、「2 事業モデルに合わせた知財戦略を構築できておらず、中長期的な起業価値向上につながっていない」、「3 スタートアップの課題に精通した知財専門家の不足」の3つが挙げられた。
特許庁では、事業戦略に連携した知財戦略の構築を支援する知財アクセラレーションプログラムIPASを実施している。創業期のスタートアップに対し、複数の専門家から成る知財メンタリングチームが適切なビジネスモデルの構築とビジネス戦略に連動した知財戦略の構築を支援する内容で、2021年度は3月3日現在20社を採択しメンタリングを実施中だ。過去3年間で40社を支援し、IPAS支援開始以降に出願された特許件数は224件、EXITした企業は1社といった成果が出ている。
そのほか、スタートアップ向けコミュニティサイト「IP BASE」で知財に関する知識やセミナー・イベント情報などを発信。スタートアップのスピード感に対応した「スーパー早期審査」、特許手数料が3分の1になる減免制度、無料で知財相談ができる知財総合窓口INPITなど、さまざまな支援施策があるのでうまく活用しよう。
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