SUVといえども走りにこだわる
それがポルシェ流
こうした機能面以外にも、運転していてよかったなと思うことは多い。ちょっとしたところなのだが、サイドミラー付近のドアフレーム部分の抜けがいいので視界がいいのがひとつ。ここは死角になりやすい場所なので、視界がいいのは安心する。「安心」という面では、とにかくトビラが厚いので守られている感覚が大きい。もちろん事故に遭わないことが一番だが、もし衝突したとしても頑丈なトビラはしっかりと保護してくれそうだ。
そして、ポルシェの魅力として教えてもらった「運転が楽しい」という部分は、何よりも素晴らしいなと思う。アクセルを踏み込んだぶんだけ加速してくれる。グッと踏み込めばスッと加速するし、アクセルペダルから足を離せばゆっくりと減速する。また、シフトチェンジがものすごくスムーズで驚いた。ガクッという変速ショックがまったくない。とにかく全体的な反応がなめらかで運転しやすいのだ。また、運転を楽しむためのものとして、モードの切り替えも用意されている。走行パフォーマンスを向上させる「スポーツ」モードがあり、ボタンで素早く切り替えられる。筆者は基本的には通常のモードで運転しているが、高速を走る際などは「スポーツ」モードにすると追い越しの際の加速がスムーズで走りやすくなる。
SUVということもあり、運転席の位置が高くて視界がいい、速度を出してカーブを曲がっても安定していてブレないなど、ほかにも運転しやすい点はとても多い。運転がしやすいから運転が楽しいのかもしれない。また、ポルシェのようなスポーツカーはエンジン音が大きいというイメージだったのだが、まったく逆。外の音もきちんと遮音されているので、運転中でも室内がとても静かなのだ。うちの愛犬はマカンにしてから専用のベッドの上ですぐに寝るようになった。走りが安定していてカーブを曲がっても揺れないし、室内が静かなので快適な環境なのだろう。
ボディーサイズが大きいゆえの不便もある
もちろん、これは……と思う部分もある。一番はやはりボディーサイズ。機械式駐車場が使えないのは、特に都内に出かけた際など止められる場所が限定されてしまうので厳しい。加えて、あまり小回りがきかないので、狭い駐車場で止めるのはひと苦労だ。「サラウンドビュー」があるとはいえ、何度も切り返すのは骨が折れる。試乗車はとてもハンドルが重くて「これがスポーツカーか、大変だ……」と思っていたが、購入したマカンにはオプションで「パワーステアリング プラス」が付いているのでそこまで重くはない。これは本当によかったと思っている。
最先端の機能がほとんど使えないのもマイナス。音声アシスト(ボイスコントロール)機能はあまり言葉を理解してくれない。同様の機能に関しては、A-Classのほうが高性能だった。使っていくうちに認識性能などもアップして使いやすくなるかもしれないので、根気よく利用してみようと思う。
PCM(ポルシェ・コミュニケーション・マネージメントシステム)でできることが少ないのもマイナス。スマホアプリ「My Porsche」と連動するのだが、マカンの場合は走行距離や車両情報などもいまのところは表示できない。活用できることは、アプリで調べた目的地情報を標準のナビに読み込めること。ナビから探すと目的地の入力がしにくかったりするので、スマホで目的地を探せるのは便利。また、PCMはマカンのWi-Fiとスマホをつなげて利用するのだが、急につながらなくなるという問題も発生した。これはiPhoneをiOS 15にバージョンアップした場合、「プライベートWi-Fiアドレス」をオンにしているとつながらないというトラブルのようだ。機能として未完成な部分が多く、こうしたトラブルが今後も発生するかもしれないという心配もある。
不満というわけではないが、燃費が悪いというのは伝えておいたほうがいいだろう。これまでの平均ではリッター約8km。A-Classがリッター14kmとなかなかの燃費で、ディーゼルだったので、マカンになってかなりガソリン代が高くなった印象。昨今の原油の高騰やハイオク専用なのも影響しているのだが、ガソリン代が倍以上になった感じがする。ただ、これはスポーツカーに乗っているのだから仕方がないのだと割り切っている。
【まとめ】乗ってみてわかるポルシェのスゴさ
PCやモバイルで言うところのアップルのような存在
いくつか改善してほしい点はあるのだが、得られる「運転する楽しさ」は何ものにも代え難い。「車」としての素晴らしさは、実際に運転してみればわかる。ポルシェに憧れる人が多いのも頷ける。まだまだ先の話になるだろうが、次の車もやっぱりポルシェがいいと思ってしまう。たとえば、半ドアの状態でカギを閉めるなど、車両に少し問題があるときは「プッ」とクラクションが鳴る。問題を車が知らせてくれるのだ。最初は「何?」とびっくりしたが、こうしたちょっとした機能がとても可愛らしく思えてくる。
冒頭でポルシェはアップルのようだと書いたが、Macの持つ可愛さというか機械への愛着のようなものをマカンにも感じる。使っていて楽しく、ワクワクする「もの」なのだ。こうした気持ちにさせてくれる「もの」には、なかなか出会うことがない。ポルシェは車を超えて、ひとりのパートナーとしてずっと一緒に生きていきたいと思える「モノ」だろう。
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