効率化・省人化だけじゃない、デジタル活用による宿泊業の新しい価値を提案
HCJ2022の注目企画「宿泊業のスマート化研究会」
提供: 日本能率協会
企業内では議論しにくい斬新的なテーマを話し合える場として
次に、ファシリテーターの徳江氏から見た、宿泊業の現状と課題について伺った。
徳江 宿泊業・飲食業は、非常にスマート化が進んでいる企業もあれば、超アナログな企業もありますが、全体的には遅れを取っていると感じています。2019年まではインバウンドで宿泊需要が伸びていたため、業務効率化や付加価値化について考えずに済んでいた部分もあるでしょう。そんななか、コロナ禍で急にやらざるを得なくなった、というのがこの2年間の状況です。
研究会で最初に「スマート化」というキーワードを投げかけたとき、企業からの反応のほとんどはコスト削減でした。”スマート化による価値向上”にはまだ目が向けられておらず、だからこそ研究会をやる意義があると感じました。研究会の場であれば、企業の中ではなかなか議論しにくいテーマも前向きに話ができます。
先端技術をいち早く取り入れているのは、やはりベンチャー的な志向の企業です。ホテル業界に限らず、伝統的な企業は「人がやらないとダメ」という根性論が根強く、これを突破するのは難しい。研究会では、みなさん前向きに議論してくださいますが、すぐに会社に持ち帰って導入できるわけではありません。
ただし、例えばタブレットの非接触注文など、昔は特定のお店でしかやっていなかったシステムが今ではどこにでもあるように、受け入れられると浸透するのは早い。新しい技術が出たとき、この研究会に参加している各社であればすぐに対応できると思います。
プロダクトアウト型から顧客体験価値の向上へ
続いて、研究会から生まれた事例について東急の石橋氏に伺った。
石橋 宿泊業は人を介したサービスが中心なので、コロナ禍ではいかに非接触で快適なサービスを提供できるかが昨年のテーマとなりました。加えて、省人化や省力化によるコスト削減も見込めます。
我々ホスピタリティ産業は、顧客体験価値を上げていかないと事業を継続できません。研究会では、ホテル側とメーカー側がお互いの課題を持ち寄り、有識者を交えて議論するなかで、企業側の課題解決を優先した以前のプロダクトアウト的な視点から、顧客体験をどのように向上させていくか、という視点に意識共有ができたことがひとつの成果です。
今後は、小規模のホテルや旅館でも取り入れやすいサブスクリプション型のシステムなども増えてくるでしょう。ホテル側のメンバーは現在3社ですが、今後は規模や客数を問わずいろいろな宿泊事業者の方に参画していただき、顧客の求める価値を広く共有して業界全体のマインドを高めていければと考えています。