消費者の価値観が変化するEV+自動運転の時代に
ソニーがもたらすものとは
すでに5Gを通じたリモート運転の実証実験もドイツで開始しているソニーだが、aiboで培った個人を識別し、相手ごとに異なる振る舞いをするよう学習していくAI技術を基礎に、ドライバーやパッセンジャーの好みに合わせて車内のディスプレー、ドライブフィール、設定、音楽などのエンターテインメント機能が切り替わる。
単に高音質、高画質などに特化したノウハウを持つだけではなく、ユーザーに心地よさや楽しさを感じさせるエンターテインメントを意識したAIは、ナビゲーションなどにも応用される。例えば天候や渋滞に加え、人の感情や好みを考慮した上で、移動時の景観やシーンに合わせた音楽再生などをするという。
VISION-Sに関しては、今後、現在の開発状況や試乗会などが行われると推察されるが、こうした“ソニーならでは”を訴求できる背景には、EV+自動運転の時代に消費者の価値観が変化すると考えられる。
すでに乗り味を電子的に制御、カスタマイズする技術もあるが、EV時代にはさらに加速するとともに、エンジンという差別化要素もなくなる。自動運転のレベルが上がるにつれてドライバーの運転負荷が軽減され、操舵感などへの興味も薄れると考えられるからだ。
EV+自動運転時代の新しい評価基準が、どのように落ち着くかは未知数だが、T型フォードが登場して100年余りの間でも、最も大きな変革期にあることは間違いない。ソニーがこの2年間で見つけたのは、変革期にメジャープレーヤーになれるという自信と言えるだろう。言い換えれば、この大きな変革期には、これまで自動車産業に関わってこなかった企業にも参入のチャンスがある。例えばたびたび噂にのぼっているアップルの自動車はどうだろうか?
噂では、完全自律運転型の自動車を目指しているという。完全自律型となれば、参入は少し先になるかもしれない。しかし、アップルの強みが半導体、OS、ユーザーインターフェイス、ネットワークサービスなどを密に統合したハードウェアの設計技術とノウハウにあることを考えれば、それ以前にもアップルカーの登場はあるかもしれない。
彼らが参入できるだけ独自性が引き出せると判断したならば、クラウドとの統合やセキュリティ、ユーザーインターフェイス、エンターテインメント性など、ソニーとも重なる価値観の部分で、自動車メーカーを凌駕することができるのではないだろうか。
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