米国で、世界最大のエレクトロニクスショー「CES 2022」が開催されました。筆者も2020年のイベントまではラスベガスの会場に足を運んで取材を続けてきましたが、昨年と今年はパンデミックの影響により渡航を見合わせました。ただ、幸いなことに今年も主要出展社の多くがオンラインでCESに関連する情報を発信していたことから、大づかみにではあるもののイベントを俯瞰できました。筆者がこれまでに取材してきた最新の情報と合わせて、2022年に注目したい「オーディオ・ビジュアルの3つのトレンド」を占ってみたいと思います。
メタバースの没入感、深めるカギを握る「360度オーディオ」
今年のCESで最も脚光を浴びたキーワードは、やはり「メタバース」でした。オンラインのバーチャル空間で様々なサービスやエンターテインメントを提供する、近未来のライフスタイルに多くの関心が寄せられました。
国内では、特にパナソニックのグループ会社であるShiftall(シフトール)が展開することになった、スマートグラス「MeganeX(メガーヌエックス)」が脚光を浴びました。
筆者は2020年のCESと、2021年にパナソニックがCESの期間中に日本国内で開催したイベントで本機の試作機を体験しています。当時、5.2K/HDRの圧倒的な高画質と快適な装着性能を体験した筆者は、「映像がリアル」で「身に着けても疲れない」ことが、スマートグラスによるメタバース体験にはとても重要な要素であることを知りました。
いよいよ商品化を迎えるMeganeXは、ソース機器との間をケーブルでつなぐ必要があるみたいです。装着して体を動かした時に、ケーブルが首もとにヒタヒタと触れる感じが没入感を損なわないのか若干気がかりです。
メタバース空間のリアリティを高める大事な要素には、映像のほかにも「音」があります。昨年アップルがサービスを開始した「空間オーディオ」と、AirPodsを装着すると、ユーザーの頭の動きとコンテンツの音の聞こえ方がシンクロする「ダイナミックヘッドトラッキング」のような、バーチャルな世界の空間再現を高めるオーディオの技術も2022年には勢いよく台頭してくるでしょう。
筆者は今年のCESでも脚光を浴びた、ソニーによるリアルな「音による没入体験」を実現するふたつの技術に注目しました。

ソニーの次世代VRゲーミングコンソールの名称が「PlayStation VR2」になることが正式に発表されました。CESの会場では4K/HDR高画質、アイ(視線)トラッキングによる没入感向上などの特徴が紹介されています。視線でキャラクターを動かしながら、音も動きにシンクロするのか、今後の追加情報が気になります
ひとつは「PlayStation VR2」の名称発表とともに言及された、ゲームの立体音響体験を高める独自技術「Tempest 3D Audio」です。
これまでに商品化されたVRヘッドマウントディスプレイの中でもトップクラスの高画質を誇る、PlayStation VRの第2世代機の映像美も当然気になりますが、もしも将来Tempest 3D Audioの技術がヘッドトラッキングにも対応して映像と立体サウンドが高精度にシンクロすれば、ゲームの没入感はさらに高まる期待が持てます。
ライバルであるアップルの定額制モバイルゲームサービス「Apple Arcade」も、ソニーの優位に立つためにはいち早く空間オーディオとダイナミックヘッドトラッキングに対応する必要があります。

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