夢の技術! 自動運転の世界第37回

ソニーのEVはほかの自動車メーカーにはない「エンタメ」というアドバンテージがある

文●鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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VISION-S 02

ソニーがクルマを作る!
衝撃の発表から読み解くソニー製EV

 年始早々にラスベガスで開催された世界最大級のエレクトロニクスの国際展示会「CES 2022」で、ソニーが“また”、驚きのニュースを発信したのはご存じだろう。それは「(ソニー製の)EVの市場導入を本格的に検討する」というもの。“また”というのは、ソニーは2年前の「CES 2020」においても、オリジナルのEV「VISION-S」を発表して世界をあっと驚かせているのだ。

 しかし、2年前のソニーは「ソニー製のADAS用センサーや室内エンターテイメントの開発のためにEVを作った」という姿勢を前面に出しており、「EVメーカーになる」になることは否定していた(未来への一歩! ソニーのコンセプトカー「VISION-S」の狙いを開発者に聞く)。だが、その後もソニーはEVの開発を継続しており、2021年4月には5G走行試験を実施するなど、ソニーのEVは着実な進化を遂げていたようだ。その結果としてCES 2022で、ソニーは新しいEVコンセプトとなる「VISION-S 02」を発表したのである。

 この「VISION-S 02」は、先に発表されている「VISION-S」と同じプラットフォームを使った7人乗りのSUVだ。驚くのは「CES 2022」のプレスカンファレンスのステージに自走して登場したこと。つまり、プロトタイプとはいえ張りぼてではなく、リアルに走行できる実物なのだ。

 このソニー製EVで、重点的に開発されているのは、以下の3領域だという。

 ひとつは「Safety」だ。ソニーのCMOSセンサーをはじめ、LiDARなどの各種センサーを数多く搭載し、自動運転レベル2+の機能検証を欧州でしているという。レベル2+というのは、一般的に言えば渋滞時などの限られたシーンで、ステアリングから手を離してのACC(先行車を追従する)走行だ。現時点の量産車としてはトップレベルの運転支援機能となる。

VISION-S

 次に「Adaptability」。日本語にすれば「適応性」や「順応性」などとなる。ToF方式距離画像センサーを使い乗員のモニタリング機能を強化。ToF方式距離画像センサーとは、カメラで3D画像を得られるもので、ドライバー認証やジャスチャーでの操作を可能とするという。また、5G通信によってクルマとクラウドを連携。外部からクルマをリモート操作するための技術開発も進めている。

 そして最後が「Entertainment」。言ってみれば、この「エンターテインメント」こそが、ソニーが最も得意とする分野だ。立体的な音場を実現する「360リアル・オーディオ」を備えるだけでなく、映像配信サービスの提供。さらには自宅にあるゲーム機「プレイステーション」とのリモート接続なども開発されているとのこと。

 そしてソニーは、このEVにおいて「モビリティーを再定義する」と言う。何が変わるのかといえば、モビリティーを「エンターテイメント空間」として提案するというのだ。進化した運転支援システム(ADAS)によって、乗員の心や認知機能に余裕が生まれれば、車内でエンターテインメントをより楽しむことができる。そこにソニーの得意とする通信・音響技術、エンターテインメント・コンテンツを利用しようというのだ。

 ただの移動体としてのEVではなく、エンターテインメント空間としてのEVを提供する。これが、ソニーがEVをリリースする狙いであり、ほかの自動車メーカーにない強みと言える。

 強まる、世界のEVシフトの潮流を好機と見たのかもしれない。また、2年前の発表に対する世のリアクションがポジティブだったと判断したのかもしれない。

 どちらにせよ、EVの市場導入はソニーにとって非常に大きなチャレンジになる。なんといっても、家電メーカーがEVをリリースすることは、これまで誰も成功させたことのない困難なミッションだからだ。これまでもダイソンがEVに挑戦しようとしたが撤退したし、アップルEVの噂は何度も流れるものの、現実の発表はなにもない。それだけ、自動車産業への新規参入はハードルが高いのだ。

 しかし、ソニーには力強いパートナーがいる。2年前の発表では、ソニーはオーストリアのマグナ・シュタイヤー社と協力してEV開発を進めていると説明していた。マグナ・シュタイヤー社は、自動車の開発だけでなく生産までも請け負うことができる企業だ。メルセデス・ベンツのGクラスをはじめ、BMW Z4とトヨタ・スープラなどを生産している。つまり、ソニーはマグナ・シュタイヤーと組むことで、EVを開発し、生産する手段を手に入れているのだ。

 そうとなれば、残るのは販売&メンテナンスを実施するディーラー網の整備のみ。ソニーにとっては、これが一番の難問となるはず。そこをソニーが、どうクリアするのか。これからじっくりと検討していくということだ。

 ただのEVではなく、新しいエンターテインメント空間を手に入れるとなれば、ソニー製EVを欲しいという人も多いはず。ソニーの果敢な姿勢を期待したい。

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筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 

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