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巨大市場を目指す量子コンピュータ開発競争に乗り遅れるな

「量子コンピュータ最新動向」セッションレポート

連載
IoT H/W BIZ DAY 2021

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開発が進むハードウェア

 現在商用化が進んでいる量子コンピュータには、大きく分けて5つの種類がある。「超電導」方式は日本で取り上げられることの最も多いタイプのもので、GoogleやIBM、Rigettiなどの企業が開発を進めており、量子コンピュータの中では最も開発の先行しているタイプと言える。

 これに対して世界で最先端と考えられているのは「イオントラップ」方式と呼ばれるもので、米国のIonQ、製造大手のHoneywell、オーストリアのAQTなどが開発を行っている。常温動作ができてエラーが少ないという特徴を持つ。

 米国のPsiQ、カナダのXanadu、英国のORCA、中国のTuringなどは「光量子」方式の量子コンピュータの開発を行っている。光量子コンピュータには4つの特徴があり、現在世界的に注目を集めている。1)常温常圧設置型なので設置における課題が少ない。2)光を用いた量子通信や量子暗号との相性が良い。3)中国が実現した量子超越で用いていた「ガウシアンボソンサンプリング」と呼ばれるアルゴリズムの実用化が近い。4)他の方式と異なり光量子コンピュータは独自の理論で開発ツールを作る必要があり、ソフトウェア開発が難しい。

 現時点では光量子コンピュータ向けのソフトウェア開発キットはカナダのXanaduのStrawberry Fieldsと日本のBosoniQのPhotonqatの2つがある。

 さらに次世代型の量子コンピュータとして注目を集めているのが、既存のシリコン半導体をそのまま使ったシリコン量子ビットと呼ばれる方式で、大規模集積化に向いた方式であり、(超電導に比べれば)高温で動作ができる点に特徴がある。米国のIntel、オーストラリアのSilicon Quantum Computing、アイルランドのequal1などが開発を進めている。

 また「冷却原子」方式と呼ばれる量子コンピュータはイオントラップ方式に近い方式で、米国のColdQuanta、フランスのPasqal、米国のAtom Computingなどがこれに取り組んでいる。

 従来開発が進んでいた超電導方式の量子コンピュータは小型化が難しく、サーバーセンターなどに導入するために小型化が求められていたが、2021年にはオーストリアのAlpine Quantum Technologiesがサーバーラックに収まる小型量子コンピュータの常温動作に成功した。また2023年にサーバーマウント型の量子コンピュータを提供するとしている米国のIonQは、2021年に1メートル四方に収まる小型の量子コンピュータの開発に成功している。

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