あらゆる移動にマイルがつく無料アプリ「Miles」が日本上陸
徒歩、自転車、電車などすべての移動に対してマイルを貯めることができるスマートフォンアプリ「Miles」が2021年10月20日にスタートした。スマートフォンのアプリを利用してユーザーの移動手段と距離を測定し、貯まったマイルを特典に換えることができる米国発のサービスで、日本では108の特典をそろえた。消費者の行動変容に期待がかかる。
「Miles」は米国シリコンバレーで立ち上がったサービスで、創業は2016年。サービスは2019年にスタートし、登録者は140万人に達している。これまで累積50億マイルの仕様があり、特典に交換した回数は1100万を超えるという。今回、日本でのローンチにあたり、スクラムベンチャーズが手掛ける新規事業創出を目的として活動するスクラムスタジオの全面支援で展開している。
Milesにとって日本は初の国外進出となる。2021月にMiles Japanを立ち上げ、準備を進めてきた。ビデオメッセージを寄せたMilesの共同創業者兼CEOのJigar Shah氏は、「日本の人はウェルビーイングへの意識が高く、ポイントプログラムへの関心も高い」と述べ、米国外市場として日本を選ぶことは「自然なこと」と述べた。なお、Shah氏は前職はCisco Systemsでコネクテッドカー分野を担当、移動に対して価値あるサービスを提供することに可能性を感じて起業したとのことだ。
ビジネスモデルは、ユーザーが特典を使ったことで発生した売り上げから得る手数料、送客に対する手数料の2つの成果報酬型ビジネスモデルをとる。
Miles Japanで代表取締役兼CEOに就任した高橋正巳氏は、市場の変化として、ひとつは人流の変化、2つ目は健康への意識の高まり、3つ目は環境への配慮、と3つのポイントを挙げた。コロナ禍で移動は激変しているものの、これら3つの変化は徒歩、自転車、ランニングなどの移動を促進させている。合わせて、「移動時間が長く、移動に多様性がある人は、移動が単調で短い人よりも幸福を感じている」というデータも紹介した。
Milesアプリはどのようなものか。
まず「移動」は、徒歩、ランニング、自動車などありとあらゆる移動を対象とする。「スキーでもボートでも」(氏)とのこと。アプリはiOSとAndroidに対応し、バックグラウンドでの更新をオン(位置情報の取得を常に許可するように設定)にしておくことで、独自開発のAIが移動手段を判別し、アプリを開かずとも自動でマイルが貯まる。
マイルは、環境への影響に応じて倍率が異なり、飛行機は0.1倍、自動車は1倍、バスや電車などの公共移動期間は3倍、自転車は5倍、徒歩とランニングは10倍となる。なお、別のMilesユーザーと相乗りしている場合は、それも自動判別し、倍率が2倍に変わるという。GPSの位置情報をベースとするため、地域も選ばず、世界中どこにいても移動に対してマイルが貯まる。
なお、GPS使用がバッテリーに与える影響については、「1日で1%程度」と予想。「なるべく消費量をおさえる形で対応している。ハードウェア側の改善とソフトウェア側の工夫により軽減している」と述べた。もちろん、ユーザーはオフにすることもできる。
貯まったマイルは特典に換えることができる、ローンチ時には83社から108種類の特典を揃えた。
特典は、ギフトカードや割引、抽選、寄付の3つの種類がある。もっとも多いのがギフトカードや割引だ。そこで、ジャルパックの割引(JAL国内ダイナミックパッケージを1グループにつき2000円割引)、JAL ABCの空港宅配サービス割引、JALマイレージバンクでのマイルプレゼントなどを提供するのがJALだ。
発表会に参加したJALの常務執行役員 デジタルイノベーション 西畑智博氏は、「MaaSの観点で、旅の前、旅の中、旅の後でより良いサービスを提供したいという思いがある」と説明し、ジャルパックを旅の前、JAL ABCを旅の中、JALマイレージバンクを旅の後、と特典を位置付けた。
Milesとは、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)事業であるJal Innovation Fundを通じて出資している関係でもある。また、MilesのSDKを使って開発した「HAWAIICO」も展開済み。「Milesのテクノロジー、後ろ側の仕掛け、AIなど素晴らしいと思っている」と西畑氏は述べた。
ファミリーマートは、500マイルでブレンドコーヒーがもらえる特典を用意する。同社のエグゼクティブ・ディレクター、CMO兼マーケティング本部長の足立光氏は、「これまでコストでしかなかった移動に、新しい付加価値を与える素晴らしいサービス」と述べ、「新しい価値」と「ファミリーマートの買い物体験」の2つの相乗効果を期待しているとコメントを寄せた。「これまで日常の習慣にファミリーマートが入っていなかった人にも、”マイルが貯まるからファミリーマートに行こう”とファミリーマートを入れてもらえることを期待している」という。
抽選は、ためたマイルを使って抽選に参加する権利を得ること。DAZNの6ヶ月間無料視聴、Huluの5ヶ月分プリペイドコード、サンリオのキャラクターと1対1でのオンライングリーティングなどの商品が用意されている。
寄付では、貯まったマイルを、Miles Japanとして、あるいはスポンサーの2種類の形で寄付することもできる。Miles Japanとして寄付できるのはアニマル・ドネーション、日本赤十字社、セーブ・ザ・チルドレン、スポンサーば寄付するタイプとしてはあいおいニッセイ同和損害保険とブラザー工業がそれぞれ環境関連の活動に寄付する。
ユニークなものとしては、特定の期間に「挑戦」として、特定の回数や距離を移動するという挑戦をクリアした人に特典が得られる仕組みもある。レッドブル、アンダーアーマーなどが近々チャレンジを展開する予定だ。
これらに加えて、同日、渋谷区と協定締結したことも発表した。渋谷区内の移動を健康的なものにすることをテーマに、施策を展開する予定で、第一弾としてゴミ拾いの移動に対してボーナスマイルを付与することを考えているという。
発表会の終わりには、日本代表プロサッカー選手(FC東京所属)の長友佑都氏がビデオでコメントを寄せ、「Milesを通じてより多くの人が健康的な移動を、より多くしてくれることに期待している。その結果として心と体が健康になり、より生き生きとした生活を送ることができる人が一人でも増えるといいなと思っている」と思いを語った。長友氏はウェルビーイングの会社Cuoreを設立している。