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ASCII STARTUP ACADEMY 第113回

「地方・中小企業が知っておくべきデジタルシフト・DXのあり方」レポート

顧客目線を持つ企業はDXに向いている 中小企業が知っておきたいデジタルシフト方法

2021年10月08日 11時30分更新

文● アイデアスケッチ 編集●ASCII STARTUP

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 2021年7月26日、角川アスキー総合研究所が主催するASCII STARTUP×BiNDの特別セミナー「地方・中小企業が知っておくべきデジタルシフト・DXのあり方」がオンラインで開催された。DXに対応したオンラインを活用したビジネスや活用できるプラットフォーム活用、また地方や中小事業者における既存事業のシフトチェンジ事例などについて、その要点を知る識者が登壇した。

 司会は、株式会社まぼろしの益子 貴寛氏が担当した。

地方・中小企業が知っておくべきデジタルシフト・DXのあり方

地方・中小企業が実践すべき「デジタルシフト・DXの在り方」

弁護士ドットコム株式会社 取締役 クラウドサイン事業本部長 橘 大地氏

 弁護士ドットコム株式会社 取締役 クラウドサイン事業本部長 橘 大地氏は、2016年10月にリリースしたクラウド上で契約締結ができる電子契約サービス「クラウドサイン」について紹介。弁護士としての経験から、さまざまな融資案件の契約書に携わる中で、紙による「印刷・ホッチキス止め・製本テープ・署名・押印・割印」という膨大な締結プロセスに一石を投じたと話す。現在、導入社数は30万社超、契約締結は500万件超という利用者数に上っている。導入企業は日本を代表する大手企業から地方の中小企業まで幅広い。

「(電子契約)クラウドサイン使えます」ということが店舗の売上を伸ばすことにもつながっている不動産会社

 法制度、安価にできるビジネスモデルなど、DXに関するインフラ整備が進んでおり、最近では政府が「契約書のハンコは不要」という声明を出し、クラウドサインにおいては法務省の商業登記のオンライン申請や地方自治体による利用も可能に。東京都による実証実験や、地方自治体がクラウドサインを使うようになっていることから、地方の中小企業もクラウドサインを使いやすい状況が整ってきたことを紹介。大企業では75%超が電子契約を利用しているが、特に地方の中小企業ではまだまだ進んでいないことをふまえ、「DX化は自社のためでなく、取引先のため」ということを提言した。

ウェブサイトを作ったあと、いかにお客様との接点を増やしていくかが鍵

株式会社ウェブライフジャパンの代表取締役 山岡 義正氏

2016年からshopifyエキスパートパートナーとなったウェブライフジャパン

 続いて、株式会社ウェブライフジャパンの代表取締役 山岡 義正氏が、2016年より「shopify(ショッピファイ)expert partner(エキスパートパートナー)」となり、ウェブサイトの企画・開発、サービス運用から、サーバー構築、コンサルティングまでワンストップで展開していること紹介した。

 ただ作って終わるだけでなく、作ったあとにどのように利用者との接点を増やし、売上を上げていくかを大切にしていることから「小さく作って大きく育てる」ニーズの人々の評価が高く、中小企業や個人からの問い合わせも多いという。また、海外ネットワークを活用し、企業の海外進出のサポートも行なっている。

shopify(ショッピファイ)を利用した店舗の成功事例

 コロナ禍で店頭での販売が芳しくなくなった「火消魂(HiKESHi SPiRiT)」では、インスタでのライブ配信を行い、ウェブへ誘導するなど、オンライン・オフラインの良さを両方交えて商品を紹介。ティーウェアやボトルの「KINTO」では、ご購入後の顧客との接点を増やすなど、顧客満足度を高める施策を講じている。愛媛県の「タオルミュージアム」は、実店舗が日本全国に80ヵ所ほどあるので、ネットで購入し、実店舗で受け取れるというサービスもDXの戦略の一部分であると紹介。

 今は、自分たちの商品に自信を持っている企業であれば、地方などエリアは関係なく、訴求していける時代。各企業の強みを生かす形で、さまざまな取り組みを行なっている。

追加の技術負債を負うことなく、すでにあるシステムを使ったビジネスのススメ

株式会社デジタルステージ 代表取締役 熊崎 隆人氏

デジタルトランスフォーメーションの本当の意味

 続いて、株式会社デジタルステージ 代表取締役 熊崎 隆人氏は、さまざまな会社のコンサルティングに携わる中で伝えているという「DXの本質」について紹介した。

 日本がIT後進国になってしまったのは、携帯電話をはじめとするさまざまな分野である程度大きな市場を持っていたことから、日本の企業が日本の内側のマーケットばかりを見てしまった、日本にローカライズした発展をしてしまったことが大きな理由だといわれている。

 完全オーダーメイドのシステムを多くの会社が使っていることから、社会的な変化に対応する場合も、カスタマイズしたものは自分たちでお金を払わないと作り替えることができない。ITの最先端をいっていた時代もあるが、その後のビジネスの進め方に問題があり、「個々のお客様の要望に応えすぎてしまった」ために、標準化が遅れたと考えられる。

 経済産業省も「旧来の日本的なフルカスタマイズのベンダー丸投げシステムをこれからも構築・運用するのは非生産的」とレポートしているという。この課題を克服できないと2025年以降最大12兆円(年間)の経済損失が生じる可能性も。今、古いシステムの考え方や導入の考え方から脱却しなければ、日本の経済発展はマイナスになる一方である。

 そうならないために、すでにあるシステムを上手く活用して、便利なサービスを使いこなしていく必要がある。「BiNDup(バインド・アップ)」は、何十万社が活用しており、作り上げている仕組み。追加コストをかけず、技術負債を負うことなくビジネスを進めていくことを提言した。

パネルディスカッションと質問

司会を務めた株式会社まぼろしの益子 貴寛氏

 パネルディスカッションでは3つのお題について話し合われた。

パネルディスカッションのテーマ

1.DXにとって、さまざまな面でシステム化が必要ですが、システムの導入の最適な判断という面でどのような点に気を付けたらよいですか?

 山岡氏は「売りたいものをスピーディーに売り始めるためには、システムの構築期間が重要。インターネットのスピード感とアクセスや売上状況を見ながら改善していける点は強み」と回答。

 熊崎氏からは「いいツールを探し出す目利きが重要。最初は無料でも売上が10万円を超えると手数料が跳ね上がるようなものでは、途中で乗り換えを検討することになる。また、カスタマイズには費用がかかるので、まずは業務をシステムに合わせていくべき」という提案があった。

 橘氏からは「さまざまな業務で忙しいなかで、DXに関してどれくらいの投資をしていくのかという判断も重要。自社の業務効率化ではなく、お客様にメリットのある部分に投資していくべき。クラウドのサービスであれば、悩んでいるものを両方試してみて、不要なほうを翌月に解約することもできる。今日から始めるのがクラウドサービスの基本」というコメントがあった。

2.DXに向く企業、向かない企業の特徴はありますか?

 「お客様のためにどうやって価値を作るかを考えるとDXは必要。顧客目線を持つ企業はDXに向いている」と橘氏。

 熊崎氏からは「地方では、ITに苦手意識を持っている企業は少なくない。社内にIT分野に精通している社員が少ないと、つい地方のITベンダーに丸投げする。そのシステムが会社にとって最適化どうかを議論が不十分でITが導入されているというケースが多い。クラウドサービスはトライアルが簡単なので、経営者がデジタル化に会社の未来をかけて取り組むという姿勢が重要」と地方企業に対してコメントがあった。

 山岡氏からは「どんな業種の企業でもDXに向くと思っている。自社・自社製品の強みを3つ質問しても答えられないケースは多く、ウェブサイトを作ったら売れるという考えは大きな間違い。まずは商品力、そして誰にどういう形で届けたいのかという明確なビジョン、SNSを使ってコツコツ運用していけるかを考えることのできる企業がDXに向いている」という話があった。

3.DXが企業や人を幸せにする、という観点から、何か具体的な事例やアイデアはありますか?

 「地方の企業は、流通の恩恵をDX以前から受けていたはず。どこからでも購入できる時代になっているからこそ、企業の存続意義が問われている。社員が企業価値について考えられるようになれば、そういった企業は今後も高い提供価値を発揮し続けられるはず」と橘氏。

 熊崎氏からは「DXの導入が進むと、このままでは無くなってしまう可能性のある伝統工芸や地方の文化が、クラウドファンディングでお金を集めたり、新しいビジネスモデルを導入したりしやすくなるはず。全国各地から文化を守ろうとする人の力を借りることのできる時代。日本人として大切にしたい文化を守るためにDXは役に立つはず」というこれまでとは違う視点でのコメントがあった。

 山岡氏からは「メールだけではテキストだけでぶっきらぼうになってしまうところが、オンラインで対面することで互いの気持ちがプラスに働くようになる」という意見が。中国でもコロナ禍でライブコマースが普及し、何十兆という売上を達成している。ECサイトの売り方だけでなく、営業の仕方もインサイドセールスになるなど、変化が著しいことから、ある意味でコロナ禍がDXの下地を作ったといえる。無駄な投資は必要ないが、従業員や顧客を幸せにするDX化は導入する意味があるという意見もあった。

 社内のDX化への意識が低い企業へのアプローチは何から始めたら良いかという視聴者から質問には、「まずは勉強会を行って、ライバル企業がどうして成功しているのかを理解してもらうことから始める」と熊崎氏が回答。

 山岡氏からは「何のためのDXを導入するのかという目標と会社や社員の目標をオーバーラップしてもらう必要がある。そうでなければ、導入しても長続きしない。使い勝手が簡単だから、まずは使ってみようというものからコツコツ理解を進めてもらう必要がある」という指摘も。橘氏からは「クラウドサインは担当者が導入しても現場が使ってくれないというケースも多々ある。担当者がいかにコミットするかが問われる」と社内で浸透させることの重要性についての話しがあった。

 「やってはいけないDXはあるのか」という質問には、「変化を嫌がる傾向があり、なかなか使いこなせないシステムを使い続けている企業は案外多い。クラウドサービスは月額利用料なので、自分たちに合っていないと思ったら別のツールを探して選んでいくべき」とシステム根性論をばっさり否定する意見も。

 「DXとシステム導入の決定的な違いは」という質問には「大きな社会変革のために自分たちが何をしなければならないのかを考え、今までの常識を疑って、今の世の中で勝つために何をするのかを社内でも議論し、ビジネスを見直すことがDX」という説明があった。

 今後ますます加速していくビジネスにおけるDXの流れ。「世の中に最適化していくための継続的な取り組みなので、『DXって何?』と思った人には今回の話をきっかけにできるところから始めてもらいたい、またDXとは単なるシステム化ではない」という司会のコメントで、特別セミナーは終了した。

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