今回は、久々にCPU黒歴史をお届けしよう。黒歴史シリーズそのものも、公式には連載211回のIntel G965が最後だったので8年ぶりである。
さて、久々の黒歴史であるが、ついにインテルのItaniumが最終製品の出荷を完了した。現時点でark.intel.comを参照すると、まだItanium 9750以外は出荷中に見えるが、実は2019年1月末の製品変更通知で、Itanium 9700シリーズとIntel C112/C114チップセットは2020年1月30日に受注を終了、2021年7月29日に出荷を完了することが明らかにされている。
その最終出荷日を先月末に迎えたわけで、現状すべてのItaniumが製造中止になっているわけだ。そこで、晴れて(?)黒歴史入りしたItaniumを改めて振り返りつつまとめてみたい。
最初の製品であるMercedから開発が難航
発売されることなく後継モデルへ
Itaniumの場合、もう最初のMercedがケチの付きまくりだったことが最初の要因である。Mercedは連載121回で説明したが、以下の問題があった。
- 当時のインテルとしては経験のないダイサイズ(正確なサイズは未公表ながら300mm2を超えていたとされる。ちなみに同じ0.18μmを使うWillametteは216mm2だった)で、歩留まりが極端に悪かったうえ、物理設計(配置配線)に猛烈に手間取った
- 266MHz/128bitのFSBに問題が出まくった。Mercedはサーバー向けということで、FSBの配線引き回し距離も長めであり、そうでなくても困難だった電気的な信号の収束がさらに困難になった
- コンパイラの最適化が全然進まず、ピーク性能はともかく実効性能が低いままだった
当初1999年中に出荷予定だったMercedは2001年6月まで出荷が遅延。この時点でMercedの性能は同じインテルのWillametteベースXeon(Foster)にも劣る有様で、結局Mercedは開発用機材として開発者にサンプル供与して終わりとし、続くMckinleyシリーズを正式に“Itanium 2”として製品出荷することになった。
Mckinleyが登場したのは2002年のことで、もうこの時点でItaniumを使ってハイエンドサーバー機を出荷しようと目論んでいたベンダーからすると3年遅れになる。結果から言えば、この3年の遅れがItanium全体に致命的なダメージを与えたと言わざるを得ないだろう。
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