前回の記事を書いていて思い出したのがQuarkである。これに振り回された人はご愁傷様としか言いようがない考えなしのプロセッサーであり、しかもずるずると引きずった挙句に突然消えるという、猛烈にはた迷惑な製品であった。ということで、若干ながら振り回された側という恨みも込めて、久々のCPU黒歴史シリーズである。
超小型・低消費電力を武器に
IoT市場に対してインテルが売り込む
2013年9月にサンフランシスコで開催されたIDF Fall 2013の初日基調講演において、当時のCEOだったBrian Krzanich氏が突然発表したのがQuarkとEdisonである。ジサトライッペイ氏の当時のIDFレポートにも少し出ている。
もっともEdisonに関しては、正式に発表されたのは翌2014年1月のCES、その詳細が公開されたのは2014年のIDFのことである。
順序が逆になるが、Edisonから説明しよう。Edisonは超小型のコンピュート・モジュールである。先のイッペイ氏の記事にもあるが、Silvermontベースの2コア Atom(500MHz駆動)に1GB LPDDR3と4GB eMMCフラッシュ、Wi-FiとBluetoothを搭載するモジュールで、寸法は35.5×25×3.9mmと非常に小さい。

裏面(写真右側)に70ピンの拡張コネクターがあり、ここ経由でSDカードやUART、I2/SPI、USB 2.0、GPIOなどの配線を引っ張り出せる(電源供給もこの端子から)。表面(写真左側)は、Wi-Fi/Bluetoothのアンテナ端子があるだけだ
内部構造は下の画像のとおりで、余分なものが一切搭載されていない。そのため、この状態で使うのはかなり困難である。それもあってインテルからはEdison用の開発キットも提供されていた。
上側は本当に最小限のボードで、USBコネクターとリセットスイッチ以外はなにもないのだが、70ピンのコネクターからの信号をピンヘッダに変換できるようになっており、機器に実際に組み込むことを前提にしたものだ。
一方下側はArduino互換のI/Oピンなどを搭載し、製品への組み込みと言うよりもその前段階の評価や試作などを目的としたものである。
ところで搭載されているのは500MHzながらAtomであり、メモリーも1GB搭載していることもあり、ここでは普通にLinuxが稼働する。それもあって、比較的組み込み用途に利用しやすいと考えたようだ。実際に利用されたか? というのはまた別の話であるが。

この連載の記事
- 第711回 Teslaの自動運転に欠かせない車載AI「FSD」 AIプロセッサーの昨今
- 第710回 Rialto BridgeとLancaster Soundが開発中止へ インテル CPUロードマップ
- 第709回 電気自動車のTeslaが手掛ける自動運転用システムDojo AIプロセッサーの昨今
- 第708回 Doomの自動プレイが可能になったNDP200 AIプロセッサーの昨今
- 第707回 Xeon W-3400/W-2400シリーズはワークステーション市場を奪い返せるか? インテル CPUロードマップ
- 第706回 なぜかRISC-Vに傾倒するTenstorrent AIプロセッサーの昨今
- 第705回 メモリーに演算ユニットを内蔵した新興企業のEnCharge AI AIプロセッサーの昨今
- 第704回 自動運転に必要な車載チップを開発するフランスのVSORA AIプロセッサーの昨今
- 第703回 音声にターゲットを絞ったSyntiant AIプロセッサーの昨今
- 第702回 計52製品を発表したSapphire Rapidsの内部構造に新情報 インテル CPUロードマップ
- 第701回 性能が8倍に向上したデータセンター向けAPU「Instinct MI300」 AMD CPUロードマップ
- この連載の一覧へ