クルマ好きアラサー女子の矢田部明子です。今回は、Honda初めての量産電気自動車「Honda e」の長期レビュー後編です。「Honda e開発責任者に聞いた、電気自動車についての疑問!」を中心に紹介していきます。ちなみに、前編では「「Honda e」に1ヵ月乗ってわかった電気自動車の長所と短所」をレポートしていますので、前編&後編ともに読んでもらえるとうれしいです。
電気自動車についての疑問あれこれ
現在、電気自動車に乗っている人はガソリン車に比べて少ないでしょう。それゆえ、電気自動車について知らない人は多いのではないでしょうか? 電気自動車についてSNSで検索をかけると、それって本当なの? というような内容もアップされています。そこで今回、電気自動車に関する「SNSでよく見かける質問」「私が疑問に思ったこと」を、Honda e開発責任者 一瀬智史さんにお聞きしました。
Honda eとは、「街中なかベスト」をコンセプトに電気自動車の得意とする「街中の加減速」を活かした車。私の試乗した「Honda e Advance」は走りに特化しているグレードで、力強い加速力が魅力のスポーツモードも搭載されています。大パノラマディスプレーが設置されており、スマホと「Honda e Advance」を連携させると、インターネットに繋がり様々なオンラインサービスが利用できます。
今回試乗した「Honda e Advance」のスペックは以下。
Honda「Honda e Advance」の主なスペック | |
---|---|
サイズ | 全長3895×全幅1750×全高1510mm |
ホイールベース | 2530mm |
車重 | 1540kg |
最高出力 | 154PS/3497~10000rpm |
最大トルク | 315N・m/0~2000rpm |
カラー | プラチナホワイト・パール |
価格(税込) | 495万円 |
バッテリー(リチウムイオン電池)について
ほとんどの自動車メーカーが、四角い形をしたリチウムイオン電池を使用しています。これは、エネルギー密度が高い&丈夫&コンパクトという理由から。車内に人が座るスペースを確保する、高速道路などを走るという電気自動車の使用方法に適しているからです。総合的に見て、バランスがとれていることからHonda eには四角い形をしたリチウムイオン電池を搭載したとのことです。
一方で、円筒のリチウムイオン電池を搭載している電気自動車もあります。円筒だとコストが抑えられるという利点もありますが、沢山のバッテリーを積まなくてはいけないのでかさばる&床への接地面積が少ないので、走行などによって発生した熱などを逃がしにくいという欠点があります。熱がこもってしまうとバッテリーの劣化を早めてしまうので、円筒リチウムイオン電池を搭載している「テスラ」では「オクトバルブ」という熱を逃がすデバイスを積んでいます。
ちなみに、Honda eはバッテリーを冷えピタのようなジェル状の液体で冷やしているそうです!
バッテリー(リチウムイオン電池)の熱暴走について
熱暴走とは、充放電する際に発生する熱が制御不能の状態になってしまうことです。熱暴走を引き起こすと、発熱で温度が上昇していき、最悪の場合は発火や火災といった事故を引き起こします。
熱暴走を起こす原因として考えられるのは、物理的なダメージ、過充電や過放電など電気的なメカニズムによるものです。物理的なダメージは、バッテリーに穴をあけるなど、余程の衝撃を与えないと起こりません。過充電や過放電は、制御不能になる前にシャットダウンされるので、日常使いでは考えにくいとのことでした。ガソリン車も爆発事故が起こらないともいえないので、電気自動車もガソリン車もリスクがあることには変わりありません。
バッテリーの充電について
充電方法は、急速充電と普通充電に分けられます。Honda eの場合、急速充電だと30分で80%くらい、普通充電だと30分で5%くらい充電されます。あくまで目安で、○分間で○%充電されるという明確な数値はありません。外気温やバッテリーが何%残っているかによって変わります。
外気温に関しては、バッテリーには好みの温度があり(約16~27度)、寒すぎる&暑すぎるとパフォーマンスが落ちてしまう性質があるからです。真夏や真冬に私が活動的じゃなくなるのと同じと言うわけです(だから太る)。
バッテリー残量によって充電速度が違うのは、お腹がすいた時をイメージするとわかりやすいです。お腹がペコペコだとガツガツ食べるし、それほどでもない時はゆっくり食べるという人が多いと思います。バッテリーも一緒で、空腹度(充電残量)によって電気を食べる速度が変わります。
急速充電は80%までしか行なわれず、その後は普通充電に切り替わります。これは、急速充電で100%まで充電してしまうとバッテリー劣化や熱暴走の原因にもなるからです。腹八分目まで食べたら、満腹になるまで、ゆっくり調整しながら食べてね! と言う感じです。
ちなみに、充電が0%になるまで使いきって100%充電しないと劣化が早いということをSNSで見かけますが、リチウムイオン電池は特に心配しなくでもOKです。
充電が切れてしまったときはどうすればいいのか
注意点として、充電が切れて停まってしまっても牽引してはダメです。牽引すると、モーターが発電してしまい故障してしまうからです。運転ミラー付近のSOSボタンを押して、助けを呼ぶのが正解です!
そして節電について。走行以外にも、エアコンなど電力を使うことが多い電気自動車。そのため、徹底した車重の軽量化、省エネなどが行なわれています。走行以外ではエアコンが電力を使う割合が多いのですが、Honda eではステアリングヒーター&シートヒーターを搭載し極力エアコンを回さなくてもいいように対策しています。
フロントウィンドウに導線がはめ込まれているのは、凍結により窓が氷ってしまった時、エアコンを回し暖かい空気で溶かすのではなく、電熱線で暖めるという方法をとっています。このように、極力電力を使わないように対策がなされています。
電気自動車とガソリン車は「開発のプロセスが違うだけで本質的には同じ」と語ってくれた一瀬さん。ガソリンエンジンとバッテリーの特性が違うほか、部品が特殊だと感じることはあったそうです。Honda eの開発を終えて、車両の重量配分など、電気自動車だからこそできる車造りを実感したそうです。
取材していく中で印象的だったのは、「航続距離を伸ばすことがすべてではない」と話していたことです。Honda e は航続距離ではなく、人が乗りやすく街中の楽しさを表現できるということに重きをおいて作ったそうです。たとえば、走行音について。静かなことも魅力の1つですが、走行音が出ることによって速度感を理解できるなど「運転しやすい=人が乗りやすい」と考えているそうです。
一方で、走行音を限りなく小さくしようとしている自動車メーカーもあります。
モーターという原動力は同じといえども、メーカーによって電気自動車への考え方は変わってきそうだなと思いました。もちろん、ガソリン車もメーカーによってカラーはありましたが、制御によっていかようにでもなる電気自動車の方が、その差は大きそうです。
自動車メーカーだけでは解決できない問題
電気自動車が増えていくと、色々な問題も出てきます。エアコンを使うことが多くなる時期は、全国的に電力が大幅に消費され電力不足による停電が起こる可能性があります。また、現段階では充電器の数も少なく、ガソリン車と違って充電に最低でも30分はかかってしまうので、充電スポットが足らないということも。行楽シーズンなどは充電スポットに渋滞ができるかもしれません。
ほかには、充電器の規格策定もあげられます。現在、チャデモ、ccs2など国やメーカーによって充電プラグ&アダプターのケーブルなどが違います。この規格を統一すると、輸入車や国産車を問わず同じ充電器でどこでも充電できるようになるので便利になります。どの規格にするかは、世界規模で話し合う必要があります。
このように、自動車メーカーだけでは解決できない問題もあるのです。
一瀬氏が思う電気自動車の良さとは
最後に、Honda e開発責任者の一瀬さんに、EVの魅力について伺いました。
「すべてが制御下におけるので、人の意のままに動かせるというのが魅力だと思います。内燃機関というのは、アクセルを踏み、ガソリンを噴射という沢山のプロセスを経て車が動き出します。電気自動車は、モーターの出力がタイヤにそのまま直結しているので、ゼロ回転からトルクマックスというガソリン車ではできなかったことが可能になる楽しい車です」
電気自動車は、モーターをどのように制御するかで出力を変えることができるので、千差万別の乗り味が再現できるとのこと。Honda eは、徐々に加速していくガソリン車に近い乗り味にしてありましたが、まったく逆も可能になるというわけです。
「今の技術では物足りないと感じることもあるかもしれませんが、電気自動車はどんどん進化していきます。技術革新とチューンナップをすることで、すべての人が楽しく車に乗ることができ、発電所側のインフラを良くすることで地球が綺麗になっていく。その2つを目指すことが、EVを作っている人の思い描いている未来ではないかと思います」
今回の試乗&一瀬さんへのインタビューで、電気自動車の時代はもうすぐそこまできていると実感しました。
今後も、電気自動車のレビューをしていきますので、ぜひ参考にしてください!
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