KDDIが6月30日に、東京の山手線駅と、大阪環状線の全駅のホームの5Gエリア化を実現しました。また同日、2021年度末までにJR・私鉄を含む関東21路線、関西5路線の主要区間のホーム、駅構内および駅間を走行中の車内での5Gエリア化をめざすことを発表しました。
7月2日に、KDDIの「鉄道路線 5G化」について、メディア向けの説明会が開催されました。まず、パーソナル事業本部 次世代ビジネス企画部の部長・長谷川渡氏から「鉄道路線 5G化」の主な取り組みについて説明を受けました。
長谷川氏によると、駅のホームや構内だけでなく、駅間の5Gエリア化も進め、乗車中でも5Gを利用できる環境を整えているとのこと。エリアは目には見えないので、5Gエリアにいることを実感できるアプリケーションも用意。3DのスヌーピーがARで表示されるものですが、「3Dオブジェクトのクオリティーが格段に上がっているので、高速・大容量の5Gのメリットを実感できる」とのこと。
続いて、5Gネットワークを構築する技術部門の担当者から、5Gの特性とエリア設計についての説明がありました。
KDDIエンジニアリング エリア設計部の加藤純人氏によると、5Gに使われる周波数帯には28GHz帯の「ミリ波」、3.7GHz帯と4GHzを用いる「Sub6」があり、さらに既存の4G LTEの周波数帯もNR(New Radio)規格を適用させて、5Gエリアの拡張を進めているとのこと。つまり、新しい周波数帯によって高速・大容量化を実現し、4G LTEからの転用によって、エリアを拡大しているわけです。
モバイル通信に使われる周波数は、高いほど直進性が高く、障害物などによって減衰しやすい傾向を持ち、逆に低い周波数は電波が回り込みやすい性質を持ちます。その特性について、加藤氏は「低周波数帯は音のイメージ、高周波数帯は光のイメージ」と説明していました。
今回の「鉄道路線 5G化」は、5Gエリアを広げる取り組みの一つですが、ほかに商業施設の5Gエリア化も進めていて、人が多く集まる場所の街灯や地上用変圧器など、今までアンテナを設置していなかった場所にも、5G用のアンテナの設置を進めているそうです。
なお、5G向けの新周波数帯は携帯電話だけに使われるわけではありません。他の事業者との共用のため、他の事業に影響を与える干渉にも配慮する必要があるそう。その干渉を回避する方法などについて、エンジニアリング推進本部 エリア品質管理部の小野田倫之氏から説明を受けました。
他事業者への干渉は基地局のすぐ近くで発生するわけではなく、数十kmくらい離れた場所でも起きるとのこと。ということもあり、5Gエリアの構築は従来のエリア構築以上に遥かに難しいと言います。
説明会の後、JR東京駅の山手線ホームに設置された5G用のアンテナを見学させてもらいました。山手線では、3.7GHzと4GをNR化した3.4GHzのアンテナを設置して、5Gエリア化を実現しているとのこと。駅にアンテナを設置する際も、既存の免許人への干渉抑制を考慮しているそうです。
筆者が自身のau 5Gスマホ(OPPO Find X2 Pro)で通信速度を計測してみたところ、アンテナの近くでは1Gbpsを超える実行速度を記録した。山手線の駅のホームは、すでに絶好のダウンロードスポットになっていると言っていいでしょう。
なお、駅間の5Gエリア化は、JRの敷地内にアンテナを設置しているわけでなく、沿線の建物に設置した基地局によってエリア化を実現しているそうです。「鉄道路線 5G化」の今後の展開にも期待しましょう。