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NEDO AIアクションプラン 第4回

第5回策定委員会レポート

自然言語理解・ものづくり・シミュレーション 各領域でのAIによる問題解決の現在とは

2021年06月24日 08時00分更新

文● AINOW 編集●ASCII STARTUP

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第5回AIアクションプラン策定委員会

――「AIアクションプラン策定委員会」詳細については、こちらの記事を参照。

 AIアクションプラン策定委員会では、2020年2月に公益財団法人未来工学研究所が公表した「国・機関が実施している科学技術による将来予測に関する調査」をベースに、20項目の将来的な社会事象をリストアップし、それをもとに議論を進めている。

 第5回AIアクションプランでは、第4回までに議論された「実装すべきAI要素技術」「技術的な目標」「実装される社会事象」をもとに、具体的なアクションプランについて深堀りし、案を出し合った。本記事では、議論された中でも特にポイントとなった話題を3つ紹介する。

期待される社会像に向けて抽出した12の「取り組むべきAI技術開発」(水色の部分)

 なお、本委員会での議論の結果は、「人工知能(AI)技術分野における大局的な研究開発のアクションプラン」として6月14日に公表されている。

自然言語理解について

 まずウェルビーイング、ものづくり、生活、安心・安全など、さまざまなテーマに関わる自然言語理解の重要性について、委員から「Googleの日本語翻訳やAmazonのアレクサが出てくる前から日本の戦略として、自然言語理解の分野は重要だと思っていた。しかし、日本は日本語理解の技術を積極的に広めていないため、現在日本語の自然言語データが取れていない。少なくとも今からでもそういうことをやっていかなければ、今後日本語が日本のものでなくなるというひどい状況になる。そのため、『手遅れでもなんでもいいからとにかくやる』という姿勢が必要だと思う」という意見が出た。

 また、自然言語理解に関する議論では、身体性と言語での「二階建て脳」についても話が及んだ。

 二階建て脳とは、脳の機能を運動や知覚をつかさどる1階と、言語や論理をつかさどる2階に分けて考えるもので、直感的で速い思考モードのシステム1と論理的で遅い思考モードのシステム2など、その分け方もいくつか提唱されている。「言語を聞いて理解するところまでは、実はシステム1。そのあといろいろ考えるのがシステム2。つまり、身体と言語という分け方でもない」という意見もあり、厳密な定義は難しい。だが、意味を理解するAIの実現を考えたとき、これらをどうつなぐかがポイントとなるという点では、各委員一致した意見だった。

 そもそもこの点について、AIで現状どこまで実現できているのか。

 1階、あるいはシステム1については、ディープラーニングで大半が実現できているかというと、必ずしもそうではないという意見があった。「できているものは多いが、(直感的な)小脳的な動きの部分も」あって容易ではなく、すべて実現できているわけではない。

 また2階部分についても、AIにおける記号処理が近いと言われるが、ディープラーニングで2階部分を目指す研究もあり、こちらもまださまざまな手法を模索している段階と言える。

ものづくり(AI×サイエンス)について

 ものづくりにおいて、議論のポイントとなったのは「今あるものづくりの部分を、有機・無機・創薬といったそれぞれの研究領域を分けるべきか」ということだ。

 これについて、委員からは「対象分野によって具体的なプロセスが随分違うと思うが、基本的に大きな空間を自動で探索することにAIを使うという部分においては共通している。ただし、NEDOのプロジェクトに落とし込むならそれぞれ領域を分けるべきだ」という意見が出た。

 ものづくりという範囲の広い領域において、「それぞれのプロセスのパラメーターを最適化しよう」といった場合、現在はほかのドメインのものづくりとして同じようなことをやっている。

 先の委員はその点に対して、「例えば、その他のところだと農業や製造業の中でプロセスを最適化するという話をしている先生たちがいる。そこら辺をどうするのか、どう深堀りするのかということが重要だ。また、以前話したシミュレーションの話の中でも、例えば設計といった別の『ものづくり』の切り口がある。この切り口が本当に適切か、個人的には何か選択と集中をここでされたいのかな、というメッセージに感じる。また、これからのことで言うと、有機化学のところはかなり進んできているため、今これからの部分であえてそこを切り出して、だからこそNEDOのプロジェクトにしてもいいのかもしれない。さまざまなところに汎用的な機械学習技術としてやる場合はそのまま取り組み、有機化学に絞ってやる場合は、NEDOが先導しなくてもいろいろなところで進んでいくのではと思う」と述べた。

シミュレーションについて

 シミュレーションでは、まず「具体的な技術に落ちている話なのかどうか」ということが議論のポイントになった。

 それに関して、委員から「素材探索の場合にシミュレーターで訓練データを作り、それを高速化するという話や、Preferred Networksの事例であったと思うが、工場での画像認識の訓練データを作るためにシミュレーターを作るなど、その手の話は多くある。シミュレーターは今後の機械学習の発展に欠かせないと思う」という話が出た。

 また「シミュレーターを作れるのであれば、そこにあるルールを学習できているのではないか?」という質問があり、同委員は「シミュレーターは、前向き計算はできるが後ろ向き計算ができないときに機械学習でやらないといけないパターンが1つ。もう1つは前向きに計算できるが時間がかかって『どうしようもない』というパターンだ。また、計算ができても想定するパラメーターがわかっていないなどという場合がある。そういった、大きめのストラテジーはわかっているが、それを確度メインでどう組み合わせたらいいのかという部分においてシミュレーターが役立つ。NEDOや経産省的には絶対やるべきだと思う」と回答した。

 また別の委員は、シミュレーションについて「ものづくり研究領域では、横串としてAIとシミュレーションの絡みが出てくる優先度は高いと思う。個別に見れば進んでいる分野とそうでない分野があるが、AIとしてみると横串としてしっかりやらないといけないと思う。アクションプランとしてのシミュレーションが、AIとシミュレーションの最適化なのかプランニングなのかわからないが、なるべく少ない回数で予測しつつ、それをもとに設計して、それをもとに少ない空間でやってみて、演繹と帰納と最適化がぐるぐる回るみたいな感じだと思う」という意見を述べた。

 シミュレーションは、データセット面での課題はあるものの、アクションプランとしては「シミュレーターと機械学習」もしくは「演繹+帰納」というような形でまとまりそうだ。

まとめ

 今回は、第5回AIアクションプラン策定委員会の中で、特に議論のポイントとなった5つの話題から、自然言語理解・ものづくり・シミュレーションについて紹介した。

 今回の議論は、今まで出てきた社会実装ビジョンの優先順位を決め、深堀りするという内容だったため、アクションプラン策定がかなり形として見えてきた印象を受けた。次回の第6回AIアクションプラン策定委員会では、ここまで出たすべての議論をまとめ、アクションプランを承認する段階に入り、議論で出た施策や研究に関する具体的な実現方法も含め、明確なアクションプランへ落とし込んでいく予定だ。

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