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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第127回

ビットコイン急落 イーロン・マスク氏、次の関心は「環境に優しい仮想通貨」か

2021年05月17日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 誕生以来の高値が続いていていたビットコイン(BTC)の価格が急落した。

 ビットコインは5月1BTCあたり600万円を超える価格で取り引きされていたが、日本時間の13日朝から急落し、数時間で100万円ほど値下がりした。

 アメリカの大手暗号資産取引所コインベースが公開しているチャートを見ると、滝のような急落を描いている。

 きっかけは、テスラの創業者として知られるイーロン・マスク氏の発言だった。

「ビットコインで化石燃料の使用が増えた」

 テスラは米国時間の5月12日、電気自動車を購入する際のビットコインでの決済を停止すると発表した。

 理由は、ビットコインのマイニング(採掘)と呼ばれる作業だ。マスク氏はツイッターで公表した声明で、次のように述べている。

 「私たちは、ビットコインのマイニングと取引のため、化石燃料、特にあらゆる燃料の中でも(CO2の)排出量が最悪である、石炭の使用が急増していることを懸念している」

 ビットコインの場合、取引を記録する膨大な作業に世界中のコンピューターが計算能力を提供している。複雑な計算には、多くの電力が消費される。

 計算能力を提供した人たちに、報酬としてビットコインが支払われ、こうした一連の作業はマイニング(採掘)と呼ばれている。

 より計算能力の高いコンピューターで、より多くの電力を消費すれば、ビットコインの記録作業への貢献度が上がり、受け取る報酬の額も上がる。

 自宅でマイニングをする人もいるが、日本の一般の住宅では、かなりの電気代を支払うことを覚悟する必要がある。

 ビットコイン価格の高騰に伴い、電力消費も急増している。

 大量のコンピューターを用意して、マイニングを専門とする事業者もあるが、こうした業者は、電気代や物価が安いロシアや旧ソ連諸国、イランなどにマイニングの施設を置いている。

 マイニングが盛んな地域の発電所は、火力発電が多く、マイニングでの電力消費が増えれば、石炭など化石燃料の消費も増える。

「環境に優しい」仮想通貨?

 5月13日付の米ブルームバーグは、マスク氏の新しい方針に対する、仮想通貨関係者の反応を取り上げている。

 その中で、興味深い見解が紹介されていた。

 投資顧問会社の幹部は、マスク氏の狙いについて、環境に優しい仮想通貨への移行を促すものだとの見方を示している。

 マスク氏が設立したテスラは、ガソリンで走る自動車から、電気で走る自動車への移行を推進してきた。

 その会社が、ビットコインでの決済を受け入れれば、化石燃料の消費とCO2の排出を助長することになり、会社の根幹にある考え方と衝突することになる。

 このブルームバーグの記事は、マスク氏が環境への配慮を重視する人たちからのプレッシャーに耐えられなくなった、とする関係者の見方も取り上げている。

あらためて浮かぶビットコインの課題

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