S660ユーザーなら、一度はModuloホイールの話を耳にしたことはあるのでは? そして「本当にイイの?」と気になったことでしょう。筆者も同じです。で、悶々とし続けること数年。その悶々に決着をつけるべく、お借りして体験してみました。
S660 Modulo Xにも採用されている
専用設計ホイール
悶々ホイールの正式名称は「MR-R01」。価格は、フロント用15インチが3万6300円/1本、リア用16インチが3万8500円/1本(いずれもブラックスパッタリング仕上げ)と、アフターマーケットで人気のアルミ鍛造ホイールと比べると安価に設定されています。ちなみに、ほかの仕上げだともっとお手頃価格に。このホイールはS660のローンチ時から用意されており、究極のS660として開発されたS660 Modulo Xにも採用されています。
「MR-R01」は、SUPER GTで2014年からModuloがサポートするチームへ供給したレーシングホイールをモチーフに、ホンダアクセス社内で設計され、世界のエンケイが製造を担当。もっとも、実はレーシングカーよりもS660向けのほうがデザイン誕生は先だったという噂も。モタスポ好きでなくとも、レーシングカー直系という言葉に、心が揺さぶられる方も多いのではないでしょうか?
8本のスポークは、見方によっては細身の4本ツインスポークのような印象。それゆえ開口部が広くブレーキローターがよく見えます。よって取り付けると、Moduloのディスクローター ドリルドタイプやエンドレスの青いキャリパーなどが欲しくなること間違いナシという罪作りな商品でもあったりします。
さて、「純正アクセサリーメーカーのホイールなんて見た目重視。やっぱりホイールは専業メーカーで!」と考える方は多いかと思います。私もそうでした。というのも、一般的にホイールは「軽くて高剛性」であることが望ましいとされ、ゆえにアルミ鍛造品が人気を集めています。一方、MR-R01はアルミ鋳造品。重さも純正採用品に比べると軽量ですが、他社のアルミ鍛造品に比べると重量があり、カタログスペックだけを見ると見劣りしてしまいます。
なお、鍛造品と鋳造品の違いは製法です。鍛造は金属をたたいて圧力をかけて成型する加工法、鋳造は金属を溶かして型に流し込む加工法で、それぞれのメリットとしては、鍛造は強度が出せる、鋳造はコストが安いので大量生産に向いてるということです。
「MR-R01」は、「アルミホイール自体が持つ金属の“しなり”も、サスペンション性能の一部だとは考えられないか」という従来とは真逆の発想で開発されています。これは他社ではあまり見かけない(というより聞いたことがない)考え。というのも、汎用品はどんなクルマに取り付けられるかワカラナイから、硬くした方が望ましいわけです。一方、専用品なら必要以上に剛性を求める必要がないのです。
開発陣まずは作ってみようとばかりに、リム厚やスポーク厚といった剛性の異なる仕様のホイールを試作。純正アクセサリーメーカーゆえ、テストコースが使い放題(と言ったら怒られるかな)ゆえに、徹底的に実走を重ねたとのこと。そしてS660に最適な剛性のホイールを見つけ出したというではありませんか。この“しなり”をコントロールすることで、タイヤの接地面圧が高まるそうで、公開されているスペックによると、結果的に純正比において、縦方向で約16%、横方向で約30%の剛性低減がよかったとのこと。
これらの試作ホイールは、Modulo開発アドバイザーを務める土屋圭市さんも実走テストを行ない、これはすごい! と感動されたというからオドロキ。この「柔らかいホイールを土屋さんが褒めた」というのが、S660オーナーなら一度は聞いたことがあるModuloホイールの話なのです。
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