楽しくゲームを遊んで「稲作」についても学べる一石二鳥のタイトル

『天穂のサクナヒメ』はなぜブレイクしたのか?あらゆる面で完成度が高い「唯一無二」の「稲作ゲーム」をプレイ!

2020年12月17日 13時00分更新

文● Zenon/ASCII

魅力その参:適度なバランスに調整された「稲作」

 さて、いよいよ本作で最も注目されている「稲作」パートの魅力について紹介しよう。本作の稲作は、10近い工程で成り立っている。

1.種籾選別(たねもみせんべつ):より質の高い種籾(稲の種)を選びわける

2.田起こし:クワを振って土を耕し、邪魔な石を取り除く

3.育苗:安全な箱で種から芽を出して苗まで育てる

4.田植え:成長した苗を田んぼへ移す。植え方でも育ち方が変わってくるが、どうしてもまっすぐ植えたくなる

5.育成(苗→一次分けつ→二次分けつ→三次分けつ→出穂→登熟):水量や肥料を調整しながら成長を見守る

6.稲刈り(収穫):育った稲を刈り取って収穫する

7.稲架掛け(はさがけ):刈り取った稲を束ねて干し乾かす。乾いたら納屋へ取り込む

8.脱穀(だっこく):稲穂から籾を外す。手作業のうちはかなり時間がかかる

9.籾摺り(もみすり):籾を杵臼でこすり、殻を外す。
殻の外し度合いで「玄米」「分搗米(ぶづきまい)」「白米」にできる

10.新米完成!

 上記のとおり、非常に細かく行程分けされており、本格的な「稲作」が楽しめるのがポイント。各工程でどんな行動をするかによって、新米の出来が大きく変わっていくのが本作のだいご味となる。

新米が完成すると表示される成果画面。
稲の出来を示す量、味、硬、粘、美、香はサクナヒメのステータスに直結しており、
「稲作をがんばるほどサクナヒメが強くなる」というシステムになっている

 このように、「プレイヤーの行動」と「成果」が直結するのは、とても気持ちいいもの。「来年の稲作はこうしてみよう」と次へのモチベーションがわいてくるのだ。そして毎年少しずつお米(とサクナヒメ)が成長していくのを見て、また1年……あと1年……とやめ時を見失いながらプレイしてしまうのが本作の恐ろしいところ。

 そう、上記の工程だけ見ると「やること多くて疲れそう」と思うかもしれないが、多分これでも実際の稲作より大幅に簡略化されているし、1つの季節が3日(ターン)で過ぎてしまうのでテンポが非常にいい。後述のヒノエ島の開拓もあわせて、「ただ稲の世話をして待つ」というヒマな時間は皆無と言っていいだろう。

育成期間は雑草が生えるので、手で抜いていく必要がある(画面の「!」)。
そのほか、クモ、カエル、タニシを拾って害虫を食べてもらうなど、
細々とした「やったらイイこと」が用意されていてなかなかに忙しい

 本格的な「稲作」体験ができることと、それをテンポよくゲームに落とし込んでいること。そこのバランスが絶妙で、時間を忘れてプレイしてしまうのは、本作の大きな魅力だろう。

 ちなみに、設定から「稲作難易度」を「低」にして1年過ごしてみたところ、能力値の伸びが増えているように感じた。もしかしたら、雑草が生えにくくなったり、稲が病気にかかりにくくなったりもしているかもしれない。

1年目から6年目までのお米の成長過程。毎年「格」の数字が3~4ずつ上昇しており、順調に成長しているのがわかる。なお、4年目で収穫量が増えたのは田んぼの数がシナリオ上で増えたため。そして、6年目で収穫量が激減しているのは、「量より質」を重視した育て方をしたためだ

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