D1グランプリ 2020 TOYO TIRES密着レポート第3回

20周年を迎えたD1GPが開幕! TOYOの川畑真人が「夜間水中戦闘」を制す

文●栗原祥光(@yosh_kurihara) 撮影●栗原祥光

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セッション途中から降雨
路面は一転してヘビーウエットに

 3回の練習走行の後に、抽選により決定した4グループに分かれて単走がスタートした。単走は2回の走行のうち、得点の高い方で順位付け。ドライ路面の際はグループに関係なく上位16名、ウエット路面の場合、グループの上位4名が追走トーナメントへと駒を進むことができる。

Aグループ1本目の中村選手の走り。中村選手の魅力全快といったドリフトであった

Aグループ1本目の藤野選手。安定感のある走りで96.44と高い得点を出すもののゾーン減点されてしまう

 Aグループは昨シーズンのシリーズチャンピオンである横井選手のほか、実力者の中村選手、藤野選手、蕎麦切選手など7名が4つの椅子を争う。1本目で中村選手が96.92と高得点を獲得。さらに横井選手が97.15を出すもゾーン減点2で及ばず。藤野選手も96.44を出すものの減点2を受ける。これにより96点を出すのが一つの条件というムードに。

 だが、Aグループ2回目の走行中に空から雨粒が落ち始め状況は一転。路面はラバーが乗っているところに水の膜が張ったため、滑りやすく危険な状況へ変わった。D1GPの場合、降雨時は路面状況により「ウエット係数」が決められ点数加算されるため2回目の走行はすべてやり直し。さらに横井選手が走行中パワステオイルを路面に撒いてしまい、路面コンディションはさらに悪化。係数加算されても、滑りやすい路面ではドライ路面の点数を上回ることはできず、中村選手の96.82がグループトップのまま。期待の蕎麦切選手はエンジンにトラブルを抱えてしまいリタイア。残念なデビューとなった。

シリーズチャンピオン候補の1人、横井選手のチームメイトである末永(正)選手。路面の黄土色の部分は横井選手が撒いたパワステオイル処理時のおがくずだ

雨の中、Bグループ1本目を走行する川畑選手。雨がひどくなる前に、点数を稼ぎたいところ

松井選手とFD3S。ピーキーなマシンに苦労しながらも、見事予選通過をはたした

 Bグループは末永(正)選手、川畑選手、松井選手、畑中選手、内海選手、小橋選手と長年D1GPに参戦する強豪揃ったレッドオーシャン。グループトップは今年D-MAXに移籍した末永(正)選手の93.53。川畑選手が92.24と続く。午前中エンジンや駆動系のトラブルが多発した松井選手は調子が戻らず 90.97でギリギリ通過。小橋選手、内海選手が予選落ちとなった。

斎藤選手とGRスープラ3号機。路面はヘビーウェットでタイヤスモークの代わりに水しぶきが舞う

上野選手とレクサス。昨年登場したマシンで、改良を重ねてきたためか、見事予選通過をはたす

 更に雨脚が強まったCグループには、参戦20年目の上野選手、チャンピオン経験者の斎藤選手が名を連ねた。斎藤選手はタイヤとウェット路面の相性がよくないものの、89.63で通過。上野選手も苦戦しながら89.19で通過した。

復帰した松山選手はGRスープラで参戦。初のウエット路面でも高いポテンシャルを発揮した

日比野選手のS14(エアロはロケットバーニー)。水を得た魚のごとくの走りでドライ路面のAグループに匹敵する得点を出した

 最終組Dグループになると、路面には水たまりができる状態に。GRスープラで参戦するトヨタ社員の松山選手が登場。1本目に92.80と川畑選手に肉薄する得点をたたき出す。さらに驚きはタイヤと足回りを昨シーズンから一新させたベテランの日比野選手。Aグループの藤野選手を僅かに下回る93.34を出し総合4番手につけた。結果、単走優勝は中村選手となり、昨年最終戦のオートポリス戦から単走2連勝。「こういったコースは結構好きですね。楽しかったですし」と笑顔だった。

雨&夜のコースを制したのは川畑

 17時15分から始まった追走トーナメントは、雨脚がさらに強まり。1組目は単走1位の中村選手対16位の上野選手。中村選手が後追い2本目。終始中村選手優勢で進むも、ゴールライン手前でコースアウト。この減点が大きく響き1回戦敗退。続く松山選手対村山選手は、最新車両対D1ではもっとも古いS14の戦い。パワーでは大きく劣るS14だが、ベテランの上手さが光り村山選手が勝利。下馬評を雨が狂わせていく。

末永兄弟の対決の2本目。弟が兄に食らいつき、さらにマシンを数回ヒット。遺恨を残す結果となった

 注目は末永(正)対末永(直)の兄弟対決。昨シーズンのチャンピオンチームに移籍した弟の末永(正)は、昨年のチャンピオンマシンで兄に挑む。兄先行、弟後追いの2本目で、弟が兄のマシンに数回ヒットするほどの密っぷり。しかしヒットが減点対象となり兄の勝利となった。

横井選手に対し斎藤選手が思いっきり詰め寄り、勢い余ってヒットしてしまう

 横井選手対斎藤選手のチャンピオン経験者の対戦は、横井選手先行の1本目、斎藤選手が大胆な突っ込みをみせるも接触。これで大きく減点されて横井選手が勝利した。マシントラブルを抱えながらも、横井選手の運、しぶとさが出た形だ。

横井選手に対し斎藤選手が思いっきり詰め寄り、勢い余ってヒットしてしまう

 藤野選手対松井選手のTOYO TIRES対決は、本調子ではないマシンに松井選手は苦戦。コントロールできず危うく藤野選手に接触しそうになる場面も。そして最後は失速。次戦は松井選手が得意とするエビスサーキット。4ローターFDの本領を発揮するのを期待したい。

横井選手に対し川畑選手が詰め寄る。昨年の1号機ではできなかった動きだ

 ベスト8戦が始まる頃、周囲はすでに暗闇に包まれ、路面はまるで鏡のよう。ヘッドライトが綺麗に反射する。その中で川畑選手対横井選手の対戦が実現。横井選手先行の1本目、川畑選手が大胆な飛び込みで会場を沸かす。いっぽう横井選手はスピンをして大きく減点。さらにステアリングにトラブルが出て横井選手はドリフトできず。川畑選手久々のベスト4進出に。

先行の末永(直)選手にピッタリとつける日比野選手。ほとんど前が見えない状況でこれは凄い!

 雨が降り「水を得た魚」という形容がピッタリなのが日比野選手だ。今年初参戦のSAILUN TIREは、ドライもウエットも関係なく調子がよさそうに見える。「SAILUN TIREは2年前から中国ラウンドで使っていて信頼はあった。末永(直)選手に勝てば決勝が見えてくると思った」という日比野選手。末永(直)選手先行時に大胆な接触を敢行! ポイントを稼いで、こちらも久々のベスト4進出を達成。

堅実な走りで勝利を稼ぐ藤野選手(写真手前)

 ベスト4常連組である藤野選手。昨シーズンは優勝こそないものの、気づけばシリーズラインキング3位を獲得する実力者だ。マシンは昨年までと同様。堅実な体制、穴げない走りで確実に勝利を積み重ねていく。

ヘッドライト前のフィルムを外した日比野選手(写真手前)

 ベスト4の1本目は日比野選手対村山選手。日比野選手はそれまでの黄色いヘッドライトフィルムを剥がして対戦に挑む。「あまりに暗すぎてコースの白線がまるで見えない状態。だからヘッドライトを白にしたのだけれど、あまり変わらなかった」というほど、周囲は漆黒の闇に包まれていた。村山後追いの2本目で村山選手は大きく失速。日比野選手は久々の決勝進出を決める。

Team TOYO TIRES Drift同士が一騎打ち!

 ベスト4の2本目は、川畑選手対藤野選手というTeam TOYO TIRES Drift同士の対戦。1本目は藤野選手は川畑選手につけることができない。「自分としては同じチームメイト同士ということもあり、楽しく走ろうという想いがあった。その中で正直、川畑くんが乗れているのか乗れていないのかわからなかったけれど、意外とついていけた。だけれど自分がテンパってミスをしてしまった。先行の時に俺だから大丈夫、という感じで川畑くんが走った時に、今日は負けたな、と思った。でも凄く楽しんで走ることができた」と藤野選手はレース後の会見で話をしたが、そう思わせるほどこの日の川畑選手は違っていた。

ベスト4の川畑対藤野の2本目。果敢に攻める川畑選手

実際の明るさはこの程度。この状態でよく競技ができると感心するほどの暗さだ

 川畑選手後追いの2本目。藤野選手の後ろに川畑選手はピタリとつける。ここまで詰められるのも、互いを知り尽くしているからであろう。この後追いでポイントを稼いだ川畑選手が決勝にコマを進めた。

決勝戦1本目。先行する日比野選手に幅を詰めていく川畑選手

 川畑選手対日比野選手という対決。日比野選手が勝てばSAILUN TIRE初優勝。川畑選手が勝てばGRスープラ初優勝がかかった1戦だ。川畑選手はTOYO TIRESのエースとして新興メーカーに負けるわけにはいかない。日比野選手先行の1本目、ギリギリまでの寄せを魅せ、後追いポイントを積み重ねていく。いっぽう日比野選手も綺麗な走りで走行点数を稼ぐ。

決勝2本目。スタートダッシュで勝る川畑選手に対し日比野選手はついていくことができない

決勝2本目。後半川畑選手につめていく日比野選手

 日比野選手後追いの2本目。川畑選手のスピードについていけない日比野選手。最後のコーナーで寄せをみせるものの姿勢を崩して失速。川畑選手が雨降る暗闇の中、GRスープラに初優勝をもたらした。

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