スマホでも採用されているAIが
自動運転の技術を加速させていく
自動運転に必須の技術がAI(人工知能)だ。クルマを運転するには「見る」「判断する」「操作する」という3つのタスクが必要となる。その3つのタスクの中で「見る」を担当するのがセンサーであり、「操作」を行なうのが電動パワステなどの車載デバイスであれば、「判断」を担当するのがAIだ。クルマの周りにあるものが人なのか建造物なのかを見分けたり、標識を認識するのにもAIの判断が必要となる。つまり自動運転には優れたAIが必要であり、近年の自動運転技術の急激な進化には、そうしたAIの進化がベースとしてあったのだ。
AIの研究は、実のところ非常に古くから始まっている。人工知能という言葉ができたのは1950年代のこと。1960年代や1980年代など、何度かのブームと呼ばれる時期があったものの2000年代になると研究は停滞し、冬の時代でなっていた。しかし、2010年代に入り、「ディープラーニング」(深層学習)という手法が広まったことで状況が一変。AIの研究は一気に加速することになった。
ディープラーニングとは、タスクをコンピューターに学ばせる機械学習の手法のひとつだ。特徴は、人間の神経細胞(ニューロン)の仕組みを模倣しているところにある。人間は目で見たモノを、1次視覚野、2次視覚野といったように、複数の“層”を経由させることで情報をまとめてゆき、そして最終的に認識する。そうした人間の仕組みを模した数式モデル「ニューラルネットワーク」を使うのがディープラーニングだ。
ディープラーニングは、そうしたニューラルネットワークを数多く用意して、そこにデータをくぐらせることで、データに含まれる特徴を段階的に学ぶ。また、データに含まれる特徴を自動で抽出することもできる。この構造と学習の方法が、ディープラーニングの特徴であり、これによりこれまで以上の優れた学習効果が期待できるようになっている。ちなみにディープラーニングは、名称に“ディープ(深い)”とあるように隠れ層の数が多く、従来は2~3層であったところ、100層以上あるのも特徴だ。
近年になって特にディープラーニングの採用が増えたのは、計算処理能力の高いGPU(Graphics Processing Unit)が登場したことと、学習に必要なラベル付けされたデータの利用が簡単になったことも理由となっている。GPUの登場により、従来は数週間かかった学習が、わずか数時間にまで短縮可能となっている。
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。
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