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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第90回

スマホで「陽性鍵」がやりとりされる時代:

アップルとグーグルの新型コロナ対策が可視化する過酷な現実

2020年04月14日 09時00分更新

文● 松村太郎 @taromatsumura 編集● ASCII

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●第2弾はOS実装

 現状、Bluetoothでの匿名化された鍵を用いた接触検出は、個人が特定されない仕組みとみられていますが、デバイスのIPアドレスと紐付いたり、衛生当局のサーバのセキュリティによっては感染者が特定される危険性も払拭できません。

 そしてそもそもアプリをインストールする形での実現は非常に膨大な数のユーザーがこのアプリをインストールしなければならず、ユーザーによる情報提供にも好意的に「許可」を与えることが前提となります。

 そこで第2弾として、2社はもっと踏み込んだ対処をしようとしています。この機能をアプリとして提供すると追跡や陽性鍵の通知にはユーザーの同意が必要になります。しかし両社は6月、OSに実装する形で、アプリなしでの接触検出・追跡を実現できるようにしようとしています。

 ただ、OSレベルでの恒久的な仕組み化は、「新型コロナウイルスとの戦いが1年で終わらない」という前提を、カリフォルニアの2大テクノロジー企業が持っていることの裏返しでもあり、これは悲しいながら現実として受け止めなければなりません。

 無症状でも陽性患者が存在する、目に見えない新型コロナウイルスの感染拡大を抑止することに寄与するでしょう。日本では最低7割、できれば8割の人との接触を低減することを目標としていますが、なぜそれが重要なのか、このアプリの仕組みが分かれば、理解が深まります。

 その一方で、外出せざるをえない人、接客をしている人は、このシステムにより膨大な「陽性鍵」の通知が届き、ショックを受けてしまうかもしれません。そうした問題も含めて、新型コロナウイルスを乗り越えていくため、我々人類が進化していかなければならない局面にあります。

 

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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