テレワークに「10万円未満のPC」を使わせるのはいかがなものか
★税金について面白く読ませる高橋創税理士によるコラム。税制上の都合で業務用のパソコンを「10万円未満」におさえている会社がありますが、これは合理的な判断なのでしょうか?★
新型コロナウイルスの感染拡大への対策としてテレワークなどが推進されていますが、それを支援するものとして、東京都は都内の中小企業を対象にテレワーク導入の経費を助成する取り組みを始めました。
それ自体はとても素晴らしいことですし、うちでも使えるものならば使いたいような制度なわけですが(税理士事務所でのテレワークには色々問題があるようなので踏み切れないのです)、気になったのはパソコンなどの機器の購入費が「税込単価1,000円以上10万円未満」までとされている点。ちょっと上限が低すぎやしませんかね。
「仕事上使い勝手がいいものにすべき」が本音
税金の世界でも、資産購入時の金額や新品中古の違いによる取扱いの差が存在します。たとえば新品のパソコンを買った場合、10万円未満のものであれば一括で経費になりますが、10万円以上20万円未満のものは3年間で均等に経費化、20万円以上の場合には4年間で経費化されることになります(青色申告をしている中小事業者の場合には、30万円未満であれば一括で経費になる特例が存在しています)。自動車を買った場合、新車であれば6年間で経費化ですが、4年落ちの中古車であれば最短で12ヶ月で全額を経費にすることができます。
この違いをうまく使えば「節税」の役には立つのですが、そのメリットだけが一人歩きしてしまっている結果、私たち税理士のもとには経営者や自営業の方から「ちょっと機能は落ちますが10万円未満のパソコンにした方が良いですかね?」ですとか、「税金的に一番有利な車種年式はどれですか?」などという質問が寄せられます。
税理士たるもの一応は税金面での損得をお伝えするわけですが、本音としては「パソコンは仕事上使い勝手が良いものにすべきだし、車選びなんかは半分趣味みたいなものなんだから好みのものにすりゃいいんですよ!」という心の声をおさえるのが大変です(だいたいおさえきれず伝えちゃってますが)。
実際問題「税の問題」というのは経営サイドの話でしかなく、一番大変なのは税金的に有利な選択をした結果、低スペックのパソコンを与えられる現場サイドです。
ちょっと前ですがツイッターでこんなツイートもありました。
「10万円までのPCは消耗品扱いで即時費用化。20万までなら3年、サーバ5年それ以外4年で減価償却」っていう税制が「メモリ4G+Celeron」的な社畜PCを産み、日本の生産性を低下させている説。
— 高橋優亮 たかはしゆうすけ (@v_takahashi) January 28, 2020
「30万円以下のPCは消耗品。即時費用化」としたら、だいぶ変わるんじゃないのかな。
“10万円までのPCは消耗品扱いで即時費用化。20万までなら3年、サーバ5年それ以外4年で減価償却」っていう税制が「メモリ4G+Celeron」的な社畜PCを産み、日本の生産性を低下させている説。「30万円以下のPCは消耗品。即時費用化」としたら、だいぶ変わるんじゃないのかな。”
これはもうもっともな話で、パソコンの性能はそのまま効率に直結しますから、国も企業も目先の税金(実はたいした額じゃなかったりもします)にこだわらずもっと現場の使い勝手を優先すれば、利益が上がったり残業代が減ったりする可能性は高いはず。
それを税制面からも後押しできるよう、現在中小事業者だけの30万円未満まで一括で経費にできる特例を大企業まで広げたり、期間を区切って(できれば定期的に)パソコンの買い換えを促進できるような制度をつくるなどの対処ができると良いんですけどね。景気対策にもなるでしょうし。
次回からはもう少し助成の枠を広げていただけると
さて、東京都の助成金。まあ今回は10万円未満という制限がついてしまっていますが、本気でテレワークの普及と効率向上を考えるのであれば次回からはもう少し枠を広げていただけますとありがたいところですね。
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