エンコード系では条件次第
では動画エンコード系の結果もチェックしよう。まずは「Premiere Pro CC」を利用して作成した4K動画のシーケンス(約3分半)を「Media Encoder 2020」で1本の4K H.264動画にエンコードする。
しかし、このテストは、1本だけエンコードさせてもCPUはほとんど使ってくれない。そこで同じシーケンスに対し微妙にビットレートを変えて並列エンコードさせてみた。エンコード設定はグラフにある通り、75/80/85/90Mbpsである。
まず注目したいのは並列度1、つまり動画を1回だけエンコードする時だ。Threadripper 3990Xがコア数半分のThreadripper 3970Xに負けているが、これは前掲のスクリーンショットにある通りCPUを使っていないから。コア数が少なくてもクロックが高いThreadripper 3970Xの方が高速になるのは当然の話だ。
しかし、並列度2になるとその差は縮まり、並列度4になるとついに逆転する。 ただ並列度4でもCPUの半分程度は遊んでいる状態なので、プロセッサーグループの壁を越えるようなエンコーダーを使う、もしくはプロセッサーグループの壁のないOSを使わない限り、動画エンコード時間は劇的には改善しないのだ。
まとめ:Windowsが最大の壁
今回の検証はここまでだ。CGレンダリング系ベンチではすさまじいパワーを発揮できたThreadripper 3990Xだが、プロセッサーグループの壁を越えられないエンコード系では3970Xに負けるという弱点が存在する。Threadripper 2990WXの時はCPUの設計も今ひとつ熟れてなかったためエンコードが遅かったが、3990Xでは純粋にOSが壁になっているのだ。Threadripper 3990Xはかなり使い手を選ぶCPUであることは間違いない。
今回の検証で触れられなかったその他のアプリ(RAW現像など)の結果や、プロセッサーグループの壁のないLinux環境によるパフォーマンス比較は、追って稿を改めて解説するとしよう。乞うご期待だ。
この連載の記事
-
第456回
デジタル
「Ryzen 7 9800X3D」は高画質設定でも最強ゲーミングCPUであることに間違いはなかった -
第455回
デジタル
「Ryzen 7 9800X3D」が最強ゲーミングCPUであることを証明する -
第454回
デジタル
性能が最大50%引き上げられたSamsung製SSD「990 EVO Plus」は良コスパSSDの新星だ -
第453回
デジタル
性能も上がったが消費電力も増えた「Ryzen 7 9800X3D」最速レビュー、AI推論の処理速度は7800X3Dの約2倍! -
第452回
自作PC
Core Ultra 200Sシリーズのゲーム性能は?Core Ultra 5/7/9を10タイトルで徹底検証 -
第451回
自作PC
Core Ultra 9 285K/Core Ultra 7 265K/Core Ultra 5 245K速報レビュー!第14世代&Ryzen 9000との比較で実力を見る -
第450回
デジタル
AGESA 1.2.0.2でRyzen 9 9950Xのパフォーマンスは改善するか? -
第449回
デジタル
Ryzen 9000シリーズの性能にWindows 11の分岐予測改善コードはどう影響するか? -
第448回
デジタル
TDP 105W動作にするとRyzen 7 9700X/Ryzen 5 9600Xはどの程度化ける? レッドゾーン寸前を攻める絶妙な設定だが、ゲームでの効果は期待薄 -
第447回
デジタル
Zen 5とTDP増でゲーム性能は向上したか?「Ryzen 9 9950X」「Ryzen 9 9900X」の実力チェック -
第446回
デジタル
「Ryzen 9 9950X」「Ryzen 9 9900X」は“約束された”最強のCPUになれたのか? ベンチマークで見えた利点と欠点 - この連載の一覧へ