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知財で読み解くITビジネス by IPTech第5回

ゲーム業界でIBMが保有する特許の存在感アップ

カプコン・コーエーテクモの訴訟から考えるゲーム特許の未来

2019年11月06日 07時00分更新

文● IPTech特許業務法人

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スタートアップと知財の距離を近づける取り組みを特許庁とコラボしているASCIIと、Tech企業をIP(知的財産)で支援するIPTech特許業務法人による本連載では、Techビジネスプレーヤーが知るべき知財のポイントをお届けします。

 2019年9月11日、知的財産高等裁判所にて、カプコンとコーエーテクモゲームス(以下、コーエーテクモ)の間で行われていた特許侵害訴訟の判決が下されました。カプコンの特許2件に対するコーエーテクモの権利侵害を認め、約1億4000万円の支払いをコーエーテクモに命じる内容となります。

特許権侵害訴訟における当社勝訴判決のお知らせ(カプコン)

 ゲーム業界では、国内だけでもカプコン・コーエーテクモだけでなく「任天堂とコロプラ」「グリーとスーパーセル」「セガとレベルファイブ」などの特許侵害訴訟が相次いでおり、特許取得・他社特許の調査・他社とのライセンス契約といった、特許に関する対応の必要性が高まっています。

 本稿では、ゲーム業界における特許の概要を紹介しつつ、本訴訟で争われた内容と今後のゲーム業界の特許動向予想について解説したいと思います。

ゲームの特許にはどのようなものがあるのか

 はじめに、ゲームに関連する特許にはどのようなものがあるのかを見ていきます。

 国内最大級のゲーム開発者会議・CEDECでは、特許に関するセッションが毎年開催されています。その中から、バンダイナムコエンターテインメントの恩田明生氏が話題提供を行った2017年の講演「だれでも分かる。超簡単! 効果的なゲーム特許の取得方法」で使用されたスライドを紹介します。

https://jp.gamesindustry.biz/article/1709/17090503/より引用

 このスライドを見ると、ゲーム自体の仕様だけでなく、ゲームを遊ぶためのハードウェアに関する技術、CGなどの表現技術、オンラインゲームなどを実現するための通信技術など、ゲーム体験をより豊かにするための幅広い技術が含まれることが分かります。

 そのためゲーム企業間では、過去に著作権を対象とした訴訟も行われてきました(グリー・DeNAの釣りゲーム訴訟など)。

 釣りゲーム訴訟、グリー敗訴が確定 最高裁が上告退ける
  https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1304/17/news126.html

 しかし、著作権は画面レイアウト・キャラクターグラフィック・BGMといった作品の表現に関わる部分のみが保護対象となるため、様々なテクノロジーが組み合わされる近年のゲーム業界では特許がより重要な要素と考えられるようになっています。

カプコン・コーエーテクモの訴訟で争われた特許

 冒頭に述べたカプコンとコーエーテクモの訴訟では、カプコンが取得した2件の特許が対象となっていました。

 ・特許3350773号
 ゲームに実装されるキャラ・場面・音響などを、前作ディスクや拡張パックなどによって追加する技術。コーエーテクモのアクションゲーム「真・三國無双」「戦国無双」シリーズが対象。

 ・特許3295571号
 画像によって判断できない状況について、コントローラ等の振動によってプレイヤーに伝達する技術。コーエーテクモのホラーアドベンチャーゲーム・「零」シリーズが対象。

 前述の整理でいうといずれも「ゲームの仕様」に関する特許ですが、後者はコントローラの振動という「ハードの仕組み」も組み合わされた内容です。ハードウェアが進化することで新しいゲーム体験を生み出した1つの事例と言えます。

 ゲームに関するハードウェア1つとっても、コントローラ(振動・ジャイロセンサなど)、スマホ(タッチパネル・GPSなど)、VRやARなど、日々進化を遂げています。ゲームに関わる技術が日々アップデートされていく中、その技術がどのような体験を生み出すかを想像し、将来を見据えた特許を取得していくことが重要になっていくと考えられます。

ゲーム業界の近年の特許戦略動向

 次にゲーム企業各社の特許出願やライセンスの動向について紹介します。

 各社の出願件数など具体的な数字の掲載は省きますが、

 ・任天堂、コナミ、バンダイナムコ、セガといった老舗ゲーム企業は継続的に特許出願
 ・グリー、DeNAは釣りゲーム訴訟と前後した2012年頃から特許出願が増加(最高裁判決が2013年)。追ってコロプラも2015年頃から特許出願を加速

 という状況になります。

 各社が特許出願を進める中、ゲーム企業間の特許ライセンス契約が発表されるケースも増えてきました。例えば、2019年4月にはスマホゲーム市場を制してきた「モンスト(モンスターストライク)」を運営するミクシィが、セガとのライセンス締結を発表しています。

 セガグループと包括的特許ライセンス契約を締結(ミクシィ)
  https://mixi.co.jp/press/2019/0405/3791/index.html

 コーエーテクモと訴訟で争っていたカプコンも、2017年にはコロプラ・バンダイナムコとクロスライセンス契約の締結を発表しています。

 『モンスターハンター エクスプロア』を始めとする当社モバイルゲームおよびオンラインゲームのマルチプレイに関する特許クロスライセンス締結
   http://www.capcom.co.jp/ir/news/html/171128.html

 「ストリートファイター」シリーズなどのオンラインマッチングに関する特許クロスライセンス締結
   http://www.capcom.co.jp/ir/news/html/170619.html

 今後も、業界内でのライセンス契約の発表が続くのではないかと予想されます。

今後は海外も見据えた特許戦略が必要に

 カプコンとの知財高裁判決が下された直後の9月26日に、コーエーテクモがIBMと特許クロスライセンス契約の締結を発表しました。

 IBM との特許クロスライセンス契約締結のお知らせ(コーエーテクモ)※PDF
 https://www.koeitecmo.co.jp/news/docs/6befc639aadeb55a0c682088182ba
1e39bb03aba.pdf

 前述のクロスライセンス締結発表の中には、コーエーテクモ社によるプレスリリースの文言としては「IBMが保有するAIやe-sportsに関する特許」という趣旨の説明が出てきます。オンライン化・競技化・動画配信との連携など、ゲーム産業が広がりを見せると認識されている中で、ゲームを主力事業としていないIBMのような企業であっても、保有する特許のうち、ゲーム産業にも関連する特許をもとに他社と交渉を行う時代になってきているということになります。

 さらに今年に入って、Googleが「Stadia」、Appleが「Apple Arcade」とゲームプラットフォームを相次いで発表するなど、大手プラットフォーマーがゲーム分野に力を入れてきています。StadiaはYoutubeのゲームプレイ動画とのシームレスな連携機能を打ち出しており、ゲームと動画の関係もますます深まっていくと考えられます。

 今後のゲーム業界では、

●e-sportsやゲームプレイ動画配信など、ユーザがゲームを自分でプレイする以外の楽しみ方が増え、その領域に関する技術および特許が重要になる
●パブリッシャー同士だけでなく、海外の大手プラットフォーマーも交えてゲームに関わる特許の持ち合いが進む
●国内外で特許訴訟やライセンス締結が進むにつれて、特許の重要性がますます高まっていく

 筆者はそのように考えています。

特許庁の知財とスタートアップに関するコミュニティサイト「IP BASE」では、必ず知るべき各種基礎知識やお得な制度情報などの各種情報を発信している

■関連サイト

著者紹介:IPTech特許業務法人

著者近影 安高史朗

2018年設立。IT系/スタートアップに特化した新しい特許事務所。
(執筆:代表弁理士安高史朗)

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