柳谷智宣がAdobe Acrobatを使い倒してみた 第103回
ビジネスパーソン向けカンファレンス「BEYOND」基調講演レポート
デジタル化、モバイルファースト、自動化、AI活用でビジネスを変えよ
2019年11月19日 09時30分更新
本連載は、Adobe Acrobat DCを使いこなすための使い方やTIPSを紹介する。第103回は特別編として、ビジネスカンファレンス「BEYOND」の基調講演の模様をお届けする。
ワークフローを提供する会社になるアドビ
10月2日、アドビのDocument CloudをコアとするAdobe Document Cloud Business Conference「BEYOND」が寺田倉庫 B&C HALLにて開催された。働き方改革をテーマとしており、経営者やマネジメント層を中心に約300名のビジネスパーソンが参加した。ここではアドビの二人が登壇した基調講演の様子を紹介しよう。
アドビ マーケティング本部デジタルメディアビジネスマーケティング 北川和彦氏から開会の挨拶が行なわれた。
「みなさん、アドビに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。たとえば、PhotoshopやAcrobatという製品を提供している会社であるというイメージが多いのではないでしょうか。実は、われわれは素材の収集から加工、デザイン、実装、公開、管理、分析をするというワークフローを提供する会社に進化してきています。特に今日は、アドビが「Document Cloud」でどのように皆様のデジタルトランスフォーメーションのお役に立てるのかをお話しします」(北川氏)
「BEYOND(~を超えて)」というタイトルは、PDFへの固定概念を超えて、アドビがドキュメントワークフローを提供しているのだと再認識してもらうために名付けたという。
Document Cloudで企業のデジタルトランスフォーメーションを推進せよ
基調講演、最初のセッションは「業務効率化におけるアドビ製品の強みと今後の製品戦略について」というテーマについて。スピーカーは、Adobe Inc. Document Cloudプロダクトマーケティング担当バイスプレジデント マーク・グリリ氏。グリリ氏は、ワールドワイドマーケティングで「Document Cloud」ビジネスを統括しているマーケティング担当の副社長を務めている。
「世界は変わってきています。新しいテクノロジーや新しい働き方が出てきています。より優れたツールやプロセスなども生まれ、職場環境も変わっています。社風も変わってきています。これは、グローバルの兆候です。社員に対しての信頼関係や業務効率を重視するのですが、変えるというのは難しいことです。皆さんにとってもこれはチャレンジになると思います。これからはリーダーシップを持って変化を管理していかなければなりません」(グリリ氏)
グリリ氏によると、ドキュメントの処理業務により、ビジネスがスローダウンしているという。今でも、ドキュメント処理の8割で紙が使用されているそうだ。この業務効率の悪さは、顧客満足度に対してもマイナスの影響を及ぼしてくる。社内を見ても、社員の3分の1の時間が日々の雑務や手作業に費やされてしまい、ドキュメントの処理がビジネスに価値をもたらすことができていない状態だという。
どう変化すればいいのだろうか。たとえば、銀行なら顧客ニーズを理解する必要がある。文化を変えながら、すべてをデジタル化し、データドリブンにしていかなければならない。医療分野においては、デジタル・フォーメーションにより、患者の体験を向上させる必要がある。より簡単にやりとりをできるようにして医者の仕事を効率化し、人的エラーを減らさなければならない。セキュリティやコンプライアンスも課題の1つになっているという。
変化する際には、会社のビジネスに価値をもたらすような視点が必要になる。アドビには2つの柱があり、1つ目は人々に創造性を発揮する力を与えるということ。2つ目が企業の競合原理を変革させることだ。
「いろいろな視点を持ってビジネスを変革させていきますが、その際我々は4つの領域に注目しています。1つ目は、素晴らしいカスタマーエクスペリエンスを届けるということです。2つ目がプロセスの合理化です。日常的な業務をできるだけ自動化します。3つ目が、システムをビジネスに提供しながら、そのビジネスが今どこで上手くいっているのか、もしくは上手くいっていないのかを特定すること。そして、4つ目はAIを活用して組織や個人が自分たちの仕事の仕方を変革できるようにするということです」(グリリ氏)
変化は難しいが、いまこそ行動するとき
現在は承認や署名に紙を使っている企業が多いものの、今後は完全にデジタル化され、デジタル書面が普及することになるとグリリ氏は予測している。デジタル書面に署名するだけなら、どこにいてもネットを介して処理できるようになる。
さらに、モバイルファーストの体験も重要視しているそう。数年前、Webトラフィックの95%はデスクトップPCだったが、今では半分がモバイルデバイスから来ているという。そのため、どうやったら、情報を使いやすい形でモバイルデバイスに対して届けられるのかを考える必要があるという。
どこでも仕事をできるようにするために、クラウドも重視している。Office 365を使って仕事をしている人がいるのであれば、PDFを含めたドキュメントも使えるようにすべきと考え、マイクロソフトと連携し、ツールを提供することにした。現在では、Office 365からPDFを作成したり、Adobe Signで署名を行ったりできるようになっている。
ビジネスプロセスの自動化もいいビジネスチャンスだという。メールを送って顧客に署名してもらうということをやめて、自動的にトラッキングしてシステムレコードに統合すれば、カスタマーエクスペリエンスの改善にもつながる。組織の中の重複した作業は、業務時間の3分の1を占めるが、これを削減できるということでもある。
AI活用することで、ウェブのインサイトから顧客とのやりとりを分析して、今何が起きているのかということを把握できるようになっている。問題に対して、人を適用する必要がなくなってきているというわけだ。このようなデジタルトランスフォーメーションは、とても高いROIを出せるという。紙からデジタルへ移行すると、それまでは何日もかかる業務が数時間でできるようになる。自身の組織のことを考え、どんな費用対効果が出てくるのかというのを意識してみるように、とグリリ氏は語る。
「みなさんの組織がAPIを使い、われわれが得意な分野を活かせるようになります。ドキュメントを社内はもちろん外部にも向けて活用する際、アドビのテクノロジーを使っていただきたいと思っています。そのためにSDKも提供します。ぜひわれわれとパートナーシップを組んでください。みなさんの組織にあったソリューションを見つけていきたいと思います。より優れたエクスペリエンスがあればお客さまのロイヤリティも上がり、獲得の数字も高くなるでしょう。
変化は難しいですが、今こそ行動する時です。ぜひアクションを起こしていただきたいと思います。組織にとって、どこにビジネスチャンスがあるのかというのを特定して、差別化を図っていくということです。小さく始めてもいいので、とにかく始めていただきたいと思います」(グリリ氏)
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