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資生堂、横浜みなとみらいで「fibona」共創パートナーを発表

オープンイノベーションプログラム「fibona」ピッチイベント開催

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 資生堂は、横浜みなとみらいの地に、今年4月グローバルイノベーションセンター(GIC=通称S/Park)を開設。1階にあるビューティーバーの来訪者はすでに1万人を超え、2階のミュージアムも2万人に達し、来訪者と研究員がコミュニケーションを取る機会も増えてきたという。

 7月1日にオープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」のキックオフイベントを行ない、Beauty Wellness領域での研究や事業の企画を募集開始。7月26日の締め切りまでに、約50件のスタートアップ企業からの応募があったという。その中からR&D部門に限らず、さまざまな資生堂のメンバーと議論を行ない、5社を決定し8月29日にピッチが行なわれ、3社に絞られた。

資生堂グローバルイノベーションセンターのS/Park。天井から吊り下がっている照明のデザインは付箋紙

2階にあるミュージアムは、誰でも見学・体験が可能だ

資生堂が取り組むfibonaとは

 まずはfibonaについて簡単に紹介しよう。fibonaのオーナーを務めているR&B戦略部長 荒木氏は、「資生堂と言うと、日本の化粧品会社という印象が強いですが、グローバルなビューティー活動に生まれ変わろうと、変革のさなかにあります。ただ化粧品以外では、自分たちの持っているアセットだけではまだまだ足りない。もっと外の人たちとイノベーションを起こしたい思いでfibonaを立ち上げました」と語る。

 fibonaには4つのコンテンツがある。

1.スタートアップ企業とのコラボレーション

 ビューティーテック業界を中心とするスタートアップ企業との共創を目指したアクセラレーションプログラムで、今回は「Beauty Wellness」をテーマとして募集。今後、共同研究やビジネス化など具体化に向けた検討を進めていく。

2.生活者とのコラボレーション

 「S/PARK Studio」などGICの施設やコンテンツを活用し、商品体験や使用後のフィードバックなどを研究員と生活者が直接コミュニケーションすることで、生活者視点の商品・ソリューション開発を行なう。

S/PARK Studioは、エクササイズやランニングのためのスタジオだけでなく、研究員とのつながりの場でもある

3.スピード感のあるβ版の市場投入

 研究によって生まれたテクノロジーのβ版をよりスピード感を持って市場に導入するため、クラウドファンディングサービスの活用やβ版ローンチプラットフォームなどへの積極的な出展を行なう。

4.新たな研究風土醸成

 ビューティー分野に関連する異業種の方々と資生堂研究員とのミートアップ(交流会)など、美に関する多様な知と人を融合し、イノベーションを生み出す研究員の熱意やアイディアを刺激する風土づくりをしていく。

 「他社もイノベーションプログラムはいろいろあると思うが、入口から研究過程、そして出口までトータルでプログラムを組んでいるのが、我々のイノベーションプログラムの特徴です」と荒木氏は語った。

fibona Pitch Stageの結果3社とコラボが決定

 今回のテーマ「Beauty Wellness」領域でのコラボレーションすることが決まったのは以下の3社だ。

株式会社デジタルアルティザン

 研究者・技術者・アーティストが持つ知見からビジネスのプロトタイプを生み出し、3Dデジタル技術を活用したさまざまなサービスを提供している株式会社デジタルアルティザン。3Dデジタル技術は、既存の化粧品事業や基礎研究などかなり広い領域でコラボできるのではと期待している。

 代表取締役 原雄司氏は「人体の3Dスキャニングで200分の1秒で3Dデータ化できるという技術を開発。これを使い、たとえはネイルチップを作るためのスキャニングなどに活用できればと思っています。これまで出口として、どのパートナーと組むか苦労していました。今後、人体のデータをベースにビューティーテックはヘルスケアに活用できるのではと、さまざまな人達と研究会していきたい」と語った。

株式会社no new folk studio

 足元の動きを精緻に計測・解析する独自のセンシング技術と靴を組み合わせたスマートフットウェア「ORPHE(オルフェ)」の開発・販売をしているno new folk studio(ノーニューフォーク スタジオ)。ORPHEを活用して、S/Park Studioでさらにさまざまなビューティーに関する新知見を得ることができるのではと期待している。

 代表取締役 菊川裕也氏は「ORPHE TRACKでは、履くだけでランニングやウォーキングのデータが取得できるウェアラブルデバイスです。今回は、歩き方と美容の相関を解明していくというテーマでコラボすることになりました。たとえば、あなたはどれだけ美しい歩き方をしているがスコアリングしたり、美容のために最適な走り方を解明できればと思っています。資生堂とのコラボで今までにないサービスを提供できればと思います」と述べた。

株式会社ユカシカド

 1人ひとりの体質や栄養バランスに合わせた栄養改善サービスを提供している、株式会社ユカシカド。栄養素をパーソナライズするセンシング技術、アルゴリズム、それに資生堂のもつ美に関するサイエンスの知見の融合を期待している。

 代表取締役兼CEO 美濃部慎也氏は「朝一番の尿を取って郵送すると、結果がスマホやパソコンで閲覧でき、その結果に基づいて、食事やサプリメントを提供するサービスを行なっています。大手企業だけでも200社と提携しており、いろいろとオープンイノベーションをやってきた中で、かなり積極的にやりたいという話をいただいており、グローバルへ攻めていく姿勢に熱く感じ、今後一緒にやっていければと思います」と語った。

 今回決まった3社について、荒木氏は「コアとなる技術がしっかりしていて、我々のアセットと掛け合わせたときになにか生まれるだろうというイメージできました。具体的なものはまだありませんが、これから3ヵ月じっくり描いていきますが、化粧品ではないところを狙っていくことだけは決まっています。ビューティーの文脈で語られるイノベーションを目指しています」。

 また、fibonaのプロジェクトリーダー中西さんは「情熱があり、夢あるプレゼンが行なわれ、改めてビューティーの領域は広いということを実感しました。Beauty Wellnessという募集領域の中にも、それぞれの企業がそれぞれの思いを持って、さまざまなことができるのでは、資生堂のメンバーもインスピレーションを受けました」と語った。


 GICのS/PARK内を見て回ったが、すでにIoTを活用したものや1人ひとりにあった化粧品の提供、さらなる美への探求などが伺え、fabonaの取り組みと合わせてここから新たなイノベーションが誕生する予感のする施設だった。第2回、第3回と引き続き共創パートナーの募集も行なわれるはずなので、資生堂とのコラボで魅力ある製品、ソリューションをつくってほしい。

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