スマートフォンと画面の分離がこれから進みそう
Appleは、特に米国において、iPhoneやiPad、Apple Watchなどで、米国の携帯電話会社に対して新しいサービスやその提供方法をともに開拓してきた経緯があります。
データ定額で利用できるスマートフォンをAT&Tに独占的に提供させたり、2年契約を前提に端末価格を割引かせる販売施策を作ったり、Apple Watchのペア回線やeSIM対応などを見ても、iPhoneなどの販売台数と影響力を背景にした影響力を発揮してきました。
5Gについては、2019年モデルでのiPhone対応が見送りとなる公算が高い一方で、やはり米国でも4割近いシェアを維持するiPhoneとユーザーが望む形でのプランの設定などが行なわれるのではないか、と想像できます。
確かに通信速度が速くなることも魅力ですが、多接続と低遅延を生かしたデバイス連携を5Gに持ち込むなら、Appleの強みが活かせるかもしれません。つまり、現在のiPhoneとApple Watchに加えて、AirPodsやiPadも、まとめて1つの契約で通信が利用できるようなプランを登場させるということも考えられそうです。
たとえば、AirPodsだけ耳に着けていれば、音声通話やSiriを通じたメッセージのやり取り、情報取得、音楽リスニングなどができるようになる。バッテリーがかなり大きなネックになりそうですが、Apple Watchとの組み合わせで実現する、というステップを踏むなら実現も早いかもしれません。
スマートフォンの機能がスマートウォッチとスマートワイヤレスイヤホンに分離すると、ディスプレイを介さない情報活用が進み、スマートフォンの音と映像の分離が起きるかもしれません。ならば映像側は、折りたたみ型も含め、現在のスマートフォンより大きな画面をテンポラリに活用するというスタイルが想像できます。
シンプルにスマートフォンで完結させたい、というニーズは残るでしょうし、スマートフォンはすぐに無くならないでしょう。しかし年間2億台規模で製造するメーカーがいくつもある現在のスマートフォンの「次」のデバイスはすぐには想像しにくく、その役割が解体され、それぞれの要素が徹底的に強化される、そんな過渡期を迎えるのではないかと思いました。
もちろん、音声アシスタントの進化や、現在はスマートフォンを根城にしているアプリのクラウド化など、現在のモデルが大きく変化することにもなると思いますが、少なくともスマートフォンが作り上げた現在の生態系から変化していくという道筋が続くことは間違い無いでしょう。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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