AMDは7月7日、第3世代RyzenおよびRadeon RX 5000シリーズを販売開始した。発表時には競合メーカーであるIntelのCPUに対する優位性を強くアピールし、「ついにメインストリーム市場での覇権奪還か」と期待を煽ったわけだが、それだけに実際の性能が非常に気になるところだ。
この特集では、第3世代Ryzenの特徴やラインアップを改めて振り返りつつ、自作する際のポイント、ベンチマーク結果などを紹介していこう。
初の“7nm”CPUであるRyzen、コアあたりの性能も大幅に向上
第3世代Ryzenは、TSMCの7nmプロセスで製造されたCPUコア「Zen 2」を採用した世界初のデスクトップ向けCPUだ。一般的に、プロセスの微細化には消費電力を同等の性能比で半減させつつパフォーマンスを向上させられるメリットがあるわけだが、この世代のRyzenもその恩恵にあずかっている。さらに、SIMD演算ユニットを128bitから256bitに拡張したことで浮動小数点演算性能を2倍とし、IPC(クロックあたりの命令実行数)がZen/Zen+アーキテクチャ比で15%向上するなど、これまで競合に対し不利とされてきた部分も改善を図っているのが特徴と言えるだろう。
加えてこの世代からは、AMDのサーバー向けCPU「EPYC」でも使用していた、CPUダイを分割して基板上に複数配置する「チップレット・アーキテクチャ」と呼ばれるデザインを採用。チップレットの大きな利点は、コストを抑えつつ、10コアを超えるメニーコア構成が可能となることだ。第3世代Ryzenの場合、基板上に1つまたは2つのCPUダイと、1つのI/Oダイを配置し、それを第2世代のInfinity Fabricで相互に接続している。最上位の「Ryzen 9 3950X」や「Ryzen 9 3900X」ではL3キャッシュが64MBと膨大な容量になっているのは、単純に6コアまたは8コアのCPUダイを2つ配置しているためだ。
そしてこうしたハードウェアの進化を後押しするように、「Windows 10 May 2019 Update」(1903)では、Ryzenのパフォーマンスを最適化するためにいくつかの変更が加えられている。具体的には、Topology Awarenessによるスケジューリングの最適化、CPPC2サポートによるClock Selectionの短縮化といったところで、実際に「Rocket League」や「PCMark 10」といったアプリでのパフォーマンスアップが確認されているとのこと。第3世代Ryzenに限ったことではなく、第1世代、第2世代Ryzenでも性能が向上するため、AMDはOSをアップデートすることを強く推奨している。
肝心の性能面に関しては、“ゲーミング性能で競合と張り合い、クリエイティブ性能で勝つ”というのがAMD側のアピールポイントだ。先にも述べた通り、1コアあたりの性能でIntelに後れを取っていたAMDの泣き所がゲーミング性能で、これまでは同じGPUを使った場合でもやや性能が発揮しにくいといった場面が多かった。逆にここさえ改善してしまえば、チップレット構造によるメニーコア化の影響がもっとも強く出るレンダリングやエンコードでは競合に明確な優位が取れるため、同価格帯CPUの比較ではほとんど死角がなくなると言っていい。実際にどの程度の性能が出ているかは、後半のベンチマークセッションで見ていこう。
7モデルが販売、最上位の「Ryzen 9 3950X」は9月登場予定
現時点で発表されている新CPUは全8モデルで、このうち9月発売が予定されている「Ryzen 9 3950X」と国内入荷が遅れた「Ryzen 7 3800X」以外は7月7日に発売済み。全体的な傾向としては、前世代から動作クロックを若干増やしつつL3キャッシュを倍増。サポートするメモリーはDDR4-2933からDDR4-3200へ引き上げ、PCI Express 4.0に対応したのが主なトピックだ。
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