発熱面ではRX 5700は極めて優秀
気になる発熱面やクロックの出方もチェックしてみよう。エアコン26℃設定の室内においてバラック組みした検証環境を設置し、「THE DIVISION 2」を30分間プレイ状態で放置(勝手にログアウトされないように時々微妙に操作をしているが)した場合の温度やクロック等を「HWiNFO」で追跡したのが下のグラフだ。
RX 5700シリーズの温度情報はGPU温度とメモリー温度(HWiNFO上ではHBM Temperature)、さらにジャンクション温度(同様にHot spot Temperature)の3つが利用できる。ジャンクション温度はGPU内で局所的に一番高い部分の温度なので、100℃を越えていてもGPU温度が低ければ大丈夫だ。
まず温度に関しては、RX 5700はGPUが80℃でほぼ安定するのに対し、RX 5700XTはクロックがRX 5700よりも100MHz程度高いラインで安定するせいか、ジャンクション温度は110℃近く、GPU自体の温度もRX 5700よりも約10℃高いところで安定するなど、RX 5700XTは高クロック化の代償として少々熱的に厳しい印象がある。ただし外排気式のシングルファンクーラーなのだから、この程度は想定の範囲ともいえる。RX 5700XTのリファレンスクーラーも良いが、温度が気になるなら後日発売されるであろうクーラーを強化したAICベンダーモデルを待ちたくなるかもしれない。
またクロックに関してはRX 5700では1610MHz前後、RX 5700XTでは1730MHz前後が安定値となった。RX 5700シリーズのブーストクロックはあくまで瞬間最大風速であり、実使用時のクロックはゲームクロック(RX 5700:最大1625MHZ、RX 5700XT:最大1755MHz)よりやや下にあることが確認できた。
Naviのゲーミングパフォーマンスは本物。オリジナルクーラー搭載モデルが待ち遠しい
以上でRX 5700シリーズの検証は終了だ。AMDがE3で語っていた「WQHDでRTX 2070を上回る」という言葉には嘘はなく、下手をするとフルHDでも上回るどころか、自社の最上位GPUであるRadeon VIIをも過去のものにしそうな強烈なパフォーマンスを実感できた。
これまでAMDのミドルレンジより上のGPUはどこか足りない(特にワットパフォーマンス)部分があったのだが、今回のRX 5700シリーズでそれらの欠点をほぼ解消した形だ。特に土壇場の価格改定でRTX 2060と同価格帯、RTX 2070に対して100ドル安いという位置につけて費用対効果をさらに強化した。DXRに対応しないぶん価格を下げて割安感を強調した製品となった。
下のグラフはRX 5700およびRX 5700XTを基準にした場合、各GPUに対しどの程度性能が上/下かを示したものだ(グラブが100%以上ならRX 5700や5700XTの方が“速い”)。各ゲーム系ベンチにおける平均fpsを基準に各GPUがどれだけ速い/遅いかの比率を求め、それの平均値を算出したものである。
これを見るとRX 5700であってもVega 56どころか64からの乗り換えでもパフォーマンスの向上が期待できる(1割向上が体感できるかは不明だが)。もしPolaris世代なら文句なしに買いだ。Radeon VIIユーザーの場合は総じて買い換えなくても良い性能にとどまってくれたが、消費電力的観点ではRX 5700XTに軍配が上がる。もちろんRadeon VIIのメリットである16GBのVRAMは最上位モデルに許されたスペックであるため、特に動画編集やゲームのMod山盛りプレイをしたい人は、RX 5700シリーズよりもRadeon VIIの方が満足度が高くなるだろう。
純粋にゲームを楽しみたい人なら、RX 5700/5700XTは間違いなく買いだ。土壇場の価格改定で価格競争力も十分高い。ライバルはスペックを上方修正したRTX 20 SUPERシリーズで反撃してきたが、AMDはその一撃を掻い潜り価格という強烈なクロスカウンターを放ってきた。
RDNAアーキテクチャーのおかげで、Radeon RX 5000シリーズのGPUはここ数年来見られなかったアツさを感じる製品となった。今後RX 5000シリーズがどういうラインナップ展開をするのか不明だが、よりアグレッシブな展開をし、激しいGPU性能競争が起こることを期待したい。

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