10nmプロセスの動作周波数は
14nm++より低い
さて、このあたりまでは語られたことである。ではいよいよ語られなかったことに入りたい。そもそも動作周波数は? という話である。実は、Ice Lakeでは相当動作周波数が落ちている。
そもそも14nm++を使うWhiskey Lake世代の場合、ハイエンドのCore i7-8665UではTDP 15W枠で最大4.8GHzまで動作周波数が上がる。これに対し、記事冒頭の表でもわかるように、Ice Lake-Uでは4.1GHzどまりである。もうこの時点でなにかおかしい。
さて、インテルは動作周波数が直接わかるような結果をビタイチ出してくれないのだが、幸いにもIPCの改善率とシングルスレッド性能を出してくれている。
このシングルスレッド性能の画像でWhiskey Lakeとの性能比を求めると以下のようになり、Whiskey Lake→Ice Lakeではわずかに3.5%の性能改善に留まっている。
Broadwellとの性能比 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
Broadwell vs. Whiskey Lake | 141.9%の性能改善 | |||||
Broadwell vs. Ice Lake | 147.0%の性能改善 |
IPCが18%改善したにも関わらず3.5%しか性能が上がらない、というのは要するに動作周波数が12%ほど下がっているという計算になる。Core i7-8665Uの場合はBase 1.9GHzなので、これが1.7GHzほどに落ちている計算になるだろうか?
実際はベースクロックはもう少し高めで、ターボブーストがかかってもそれほど動作周波数が上がらない、という感じの実装になっているのではないかと思うが、とにかく動作周波数が14nm++におよばないのが現状の10nmプロセス、というのは間違いない。
この状況は、2014年の秋に投入された14nmの初めての製品であるBroadwellに近いものがある。やはり当初はY SKUのみの投入で、動作周波数も低めであった。
これが改善されるのは2015年に投入されたSkylakeであるが、プロセスを高速化するのではなく、遅いプロセスでも高速動作するようにマイクロアーキテクチャー側に手を入れて解決したわけだ。おそらく現行の10nmも似たような感じになっている。
幸いにこれに10nm+や10nm++が続くという発表はすでになされているので、これらのプロセスが出てくる頃には問題は多少緩和する可能性が高い。
この連載の記事
-
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第792回
PC
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第791回
PC
妙に性能のバランスが悪いマイクロソフトのAI特化型チップMaia 100 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第790回
PC
AI推論用アクセラレーターを搭載するIBMのTelum II Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第789回
PC
切り捨てられた部門が再始動して作り上げたAmpereOne Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第788回
PC
Meteor Lakeを凌駕する性能のQualcomm「Oryon」 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ