1月21日、リーガルテック活用と知財戦略がテーマのセミナーイベント「会社を守るためのリーガルテック活用と知財戦略セミナー~明日から使える法務テクニックから中長期的な知財戦略まで~」(主催AI-CON)が東京・渋谷のhoops link tokyoで開催された。
事業には、契約の締結、ガバナンスの設計、知財の取得、リスク管理など、さまざまな法律業務が発生する。法務部門をもたないスタートアップ経営者にとって、法務まわりは頭が痛い問題だ。スピード感を損なわず、事業を成長させていくには、創業時から、しっかりと知財や法務の戦略を立てていく必要がある。弁理士など専門家への費用を抑えるには、リーガルテックを活用するのもいい方法だ。
セミナーでは、特許庁総務部企画調査課法制専門官の網谷 拓氏、顧問弁護士として多くのスタートアップをサポートしているGVA TECH株式会社CEO・弁護士の山本 俊氏を講師として、知財・法務戦略とリーガルテックの活用について講義した。
後戻りできない法務の落とし穴をチェック
GVA TECH株式会社CEOの山本 俊氏は、「スタートアップの成長を加速させる押さえておきたい法務戦略と、リーガルテック活用」と題し、法務戦略のポイントを解説。また、リーガルテックの活用例として、同社のクラウド型AI契約書チェックサービス「AI-CON」を紹介した。
後戻りできない法務の落とし穴として、1)資本政策、2)新規ビジネスの立ち上げ、3)知的財産権の扱い方、4)外部事業者との関係について、それぞれ確認すべきポイントを挙げた。
まず、資本政策について。
スタートアップの出口は、IPOかバイアウト。そのためには、株式の放出と調達資金のバランスをとることが重要だ。調達資金の増加を狙いつつ、持ち株比率の希薄化を防ぐのがベストだが、これには経営株主のリーダーシップが重要であり、株式の半分以上を経営者が保有していない場合、VC側が投資をためらう要因になる。安定株主の構築は、事後になると極めて困難なので、あらかじめIPOやバイアウトの選択肢を確保しておくこと。資金調達時には、「ドラッグアロング(Drag Along)」など投資家主導で株を強制売却させる条項が入ることもあるので要注意。
また資金調達が進むにつれて、パイは大きくなるが、創業者のシェアは小さくなる。持ち株比率は重要だが、重視しすぎると資金調達が進まずスケールしづらくなくなるため、バランスが求められる。
新規ビジネス立ち上げの注意点としては、異業種に参入する場合、許認可、届出などの法律に意識が回らないことがある。すべてを自分で調べるのは難しいので、専門家に頼るほうが効率的だ。
知財関連では、競合他社の所有する特許情報や著作権などもしっかり調べておこう。ライセンス契約を結ぶ際は、技術を利用する範囲に注意すること。ライセンスの範囲がはっきりしていないと、知財を主張できなくなる可能性がある。また、フィーの計算方法などは専門家からアドバイスを受けると会社の成長速度が変わってくる。
外部事業者へ業務委託する場合のポイントは、業務委託契約を結び、成果物の所有権や知財県の貴族、納品物に不具合があった場合の責任など、きちんと決めておく。外注や第三者との取引の場合は、秘密保持契約(NDA)を締結することが重要になる。
契約書をスピード作成、契約リスク判定できる「AI-CON」
スタートアップは事業を前に進めることが最優先で、法務を後回しにしがちだ。しかし、後戻りできない落とし穴は少なくない。資本政策、適法性、知財関係はきちんと押さえておかないと、次のフェーズに行けなくなるので気を付けたい。
スピード感を損なわないように、リーガルチェックの効率を上げることも大事だ。既存のサービスをうまく活用していくといいだろう。
リーガルテックの事例として、山本氏はGVA TECHの提供するクラウドAI契約書チェックサービス「AI-CON」を紹介した。「AI-CON」は、契約におけるワークフローのうち「ドラフト作成」「レビュー」「交渉」を効率化するサービスだ。いくつかの質問に答えるだけでAIが契約書を自動作成する機能や、契約書をアップロードすると、5段階でリスク判定し、修正例や、交渉用コメントを弁護士が作成してくれるサービスを提供している。法務知識がなくても契約書の作成やリスク判定ができ、スタートアップから大企業への交渉に威力を発揮しそうだ。