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映画祭や路上ライブに加えてロボット自動搬送実験を商店街で実施!

盛り沢山の狸小路商店街No Mapsレポート

特集
北海道を最先端Techで開拓する「No Maps 2018」レポート

 北海道観光の見所のひとつでもある商店街、狸小路。札幌でこの10月に開催されたインタラクティブ・カンファレンスNo Maps 2018では、狸小路5丁目全体を会場に取り入れ、搬送ロボットを使った自動搬送実験や、ストリートライブにアートパフォーマンスなどが繰り広げられた。札幌国際短編映画祭の様子とともに、その様子をお届けしよう。

追従ロボットによる自動搬送実験を実施

 狸小路では、観光客が手ぶらで買物や観光をするというシチュエーションを想定した自走実験が公開された。人を追従して勝手に着いてくる、ペットのように従順なロボットは、ヨーロッパですでに実証実験の実績を持っているものだ。

実験に使われた自動追従ロボット

 想定シナリオは、観光客がホテルから出発して商店街で買物をし、そのまま観光に出かけるというもの。ホテルを出発した観光客役の担当者のうしろを、自動搬送ロボットが自動追従する。

観光客役の担当者のうしろを、荷物を抱えてついてくる姿に健気さを感じる。人感センサーを備えているので、歩行者にぶつかったりすることはないようだ

 途中で店舗に立ち寄り買物をしている間、ロボットは店舗前に停まって待機。ご主人を待つ犬のように従順な姿に愛らしさを感じる。出てきた主人の荷物を背中に抱え、次の店へ。すべての店での買い物が終わったら、観光に向かう主人を見送り、自動的に荷物をホテルまで持ち帰ってくれる。買物をしたあとの観光は手ぶらで大丈夫というわけだ。

 荷物を持ち去られる恐れがありそう、など治安上の問題や実装への課題は感じたものの、利便性もわかりやすい公開実験となっていた。

音楽、絵画、お笑いにインタラクティブアートなど通り全体が舞台に

 メディアの特性上、アスキーではIT寄りの展示について記事の多くを割いているが、No Mapsは日本版サウス・バイ・サウスウェストを標榜して開催されるイベント。ITだけではなくアート、ミュージック、ムービーとさまざまなジャンルを横断的に楽しめるよう構成されている。今年はそれらエンタメ要素が狸小路に凝縮され、より楽しみやすくなった印象だ。

 狸小路商店街自体は、札幌市の中心街を東西に貫くように伸びているが、No Maps 2018の会場となったのはその中の一角、札幌国際短編映画祭の会場を含む狸小路5丁目だ。チ・カ・ホもそうだが、No Mapsを知らなかった市民の方が、普段通りに歩く場所を展示会場にしてしまうことで、偶発的な出会いを演出しているのがいいところ。夕方17時には照明を一部消灯し、狸小路の中にちょっとした異空間を演出していた。

照明を調整し、隣接するブロックとは違った雰囲気をたたえる狸小路5丁目

 この会場を歩いていると、そこかしこに小さなひとだかりを見つけることができた。そのひとつをのぞいてみると、ライブペインティングの真っ最中。パフォーマンスを披露していたのは、画家の原田留美さん。筆やヘラなど当たり前の道具だけではなく、指に直接絵の具を載せてダイナミックな動きで絵を仕上げていく美しい姿に、筆者もしばし見入ってしまった。

 また別の場所では、お笑いライブが展開されていた。場所は居酒屋のど真ん前。通行人はもちろんだが、店頭の席に陣取ればビール片手に目の前で楽しめるという趣向。ちょうど一休みしたいところだったので、座席をお借りして36号線のおふたりと畑中しんじろうさんの掛け合いを楽しませてもらった。

写真左から畑中しんじろうさん、大田黒ヒロタカ さん(36号線)、ササキサキさん(36号線)

 No Mapsらしく、ITとアートをからめたインタラクティブな展示も行なわれていた。商店街の各店舗に擬音を当てはめ、それを缶バッジ化。好きな擬音をハッシュタグ付きでツイートすると、オブジェが光る楽しみもあった。展示していたのはアートとまちづくりの学校「Think School」の在校生と卒業生で、アーティストの高橋喜代史氏の指導のもとで制作したとのこと。

アートとまちづくりの学校「Think School」のみなさん

100ヵ国以上から3000以上の応募作品が寄せられた札幌国際短編映画祭

 現在はNo Mapsとともに開催されている札幌国際短編映画祭の会場にも、足を運んでみた。こちらは今年で13回目を数える歴史を持っている。独立したイベントとしてすでに成り立っていた札幌国際短編映画祭がNo Mapsと共同開催について、メディア・プロデューサーの久保俊哉さんに話を聞いてみた。

 「映画は、常に将来のビジョンを示してきました。技術としてもCGやメカトロニクスなど最新テクノロジーを取り入れ続けています。映画で描かれるビジョンがあり、それを実現するためのNo Mapsの実証実験があり、その先に技術の実用化があります。見据えている方向性は同じなんですよ」(久保さん)

 先進的なビジョンを示す映画の世界でも、特に先鋭的なのが短編映画の世界だと久保さんは教えてくれた。世界の映画関係者が、次のヒットメーカーの原石を探しに来るのだという。次世代に向けた歩みという意味でも、目指す方向はNo Mapsと同じだ。

 高品質で安価な撮影機材、編集機材が市場に充実し、動画制作のハードルが低くなったことから、クリエイターが生まれやすい土壌ができていると久保さんは言う。札幌で先鋭的な映像に触れる機会を作ることで、札幌から新しい映像クリエイターを次々と生み出していきたいと語っていた。そうした取り組みにつながるのか、一部無料で映画を楽しめるスペースも設けられていた。

著作権の関係でスクリーンはお見せできないが、駐輪場スペースに設けられた無料上映スペースにはマットが敷かれゆったりした姿勢で映画を楽しみつつ休憩できるようになっていた(一般客のいない時間帯に特別に許可をいただき撮影)

 映画祭本編については、5日間にわたる上映の結果、ジャスティン・ストーンハム監督の「REWIND FORWARD(思い出の先へ)」が作品部門グランプリを受賞。自身の生い立ちや母との関係を描いたドキュメンタリーフィルムだ。

作品部門グランプリを受賞したジャスティン・ストーンハム監督

盛りだくさんの狸小路で、人々はどのように楽しんだのかを追う

 ここに紹介したのは、筆者が垣間見ることができたほんの一部のイベントにすぎない。会期中、アーティストやパフォーマーが入れ替わり立ち替わり、数多くのショーを展開していた。そんな狸小路を、人々はどのように歩き、どこで足を止めたのか。それをトラッキングする取り組みも進んでいた。

狸小路5丁目会場のあちこちに設置された赤外線センサー

 この取り組みでは、株式会社iDの「まちなか人流可視化システム」が使われた。焦電型赤外線センサーによって人の動きを検知するため、カメラを使うシステムのように個人を特定できる情報を持つことなく人の動きを追うことができる。No Maps 2018の会期を含む2018年10月9日から22日まで狸小路5丁目の人の動きをトラッキングしたとのことなので、イベント会期中と普段の人の動きの違いなどもわかるのではないだろうか。ここで得られた結果が、来年のイベント構成に活かされれば、狸小路会場はより楽しくなるだろうと期待している。

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