車とスマホがつながるSDLの世界 第3回
真のパーソナライズサービスは車・バイクがカギになる!?
トヨタ・スズキ・LINEのキーマンが語る、SDLとスマホが作る車・バイクの未来
2018年11月08日 11時00分更新
SDLが作り出す世界、そして未来は?
―― SDLを使ってどのようなことが実現されていくのでしょう?
神門 普段使いの車の中で利用用途を広げていければと思っています。具体的には、買い物に行く途中、車内から家族に連絡するとClovaを通じて希望リストが届くなど、日常に即したものですね。ユーザーの生活をもっと便利にしていきたいと思っています。
さらに、ユーザーの行動をきっかけに、もっと賢く家とスマートフォンと車内をシームレスにつなげるようなことに取り組みたいです。例えば車内のコントロールを音声で動かしたい。エアコンの温度を変える際に音声で簡単に修正できるといったことに挑戦していきたいですね。
あと、家から車の中に移動したら、それをClovaが理解して、「エアコンを入れて」と言ったら家のエアコンではなく車のエアコンだということをちゃんと理解する、といったことをシームレスにできるよう取り組んでいかなければと思っています。
松岡 車の中からClovaで検索してもらって、いまここにいるという位置情報からナビゲートできるとか、あるいは車があるエリアが近づいたら自宅のエアコンが自動的にオンになるといったサービスの広がりをどんどん作っていきたいですね。
SDLは誰もが参加できるプラットフォームであり、マーケットであり、エコシステムです。お客様にとって、あるいは参加される事業者にとって価値のあるものにすることが大切で、これからが踏ん張りどころだなと思っています。
―― SDLが作る未来は自動車メーカーもアプリベンダーも、そしてユーザーにとっても価値があるものになるということですね。
松岡 SDLというプラットフォームそのものがペイメントの仕組みを持っているわけではありませんが、仮にお客様が車の情報を使ってサービスを受けたいときもSDLを介すことで安全な取引が可能です。元々SDLはエコシステムですということを申し上げていましたが、(SDLを介した課金システムが広がれば)経済圏としても発展すると思います。
SDLはみんなで育てていくという性質のものですから、それぞれが貢献しつつ、マーケットとしての価値もしっかり育てていければと。
髙柴 二輪というカテゴリーでみると、ディスプレーがないということで要件は違いますが、二輪ユーザーが減っているというなかでも、もう一度楽しいものだと発信したいですね。
多様なインターフェイスを使ってアプリ経由のサービスを表示できれば、安全かつ楽しくバイクを走らせることができるでしょう。将来的には、どのバイクに乗っても同じ使い方ができる、あるいは四輪に乗り換えてもシームレスにつながるとか。
―― 何に乗っても同じ環境で使えるというのはうれしいですね。
髙柴 本当は「SDLとはなんぞや」と説明する必要はなくて、影の存在でいいと思うのです。ユーザーには「このSDLマークが付いていれば、スマホが便利に使える」とクチコミで伝わっていくような。そうなって初めて定着した・普及したと言えるでしょう。便利なサービスを裏でテクノロジーが支えているという世界にしたいですね。
―― SDLそのものを感じさせず利便性だけをユーザーが享受できる未来ですね。
髙柴 最終的には、「まずこのボタンを押して喋ってみて。あとは何とかなるから」というレベルになることで、普及するのではないかと。
神門 すでに取り組んでいる分野としては翻訳サービスがあります。例えばタクシーに外国人の方が乗ったら、運転手がSDL経由でClovaを使えば同時通訳で目的地を確認できたりするといいかなと。
“生のインタラクション”と“AIを通じたインタラクション”が組み合わさったものができると単純に面白いですし、ニーズもあるだろうと思っています。Clovaを使うことによって、タクシーやシェアリングがもっと便利になるシーンがあるのでは。
松岡 現時点でも、LINEのサービスと連携することで、車に頼むと目的地を検索・登録してくれる、ということを始めています。将来的にはクラウドを経由して車と車が会話をする、情報を交換するというのも面白いですし、可能性があると思っています。
現在、シェアリングを使うにしても、複数の交通機関を経た移動にしても、あるいはお客様同士でコミュニケーションするにしても、スマートフォンは移動するシーンで不可欠なものなので、親和性はますます高めていきたいです。
スマートフォンは個人の判別に大変適したデバイスですので、お客様を理解しつつ最適なユーザー体験を提供する上で非常に大きなキーだと思います。今まではパーソナライズサービスといっても結局、車を特定していただけで、厳密には“個の車”でした。一方でスマートフォンは一人ひとりがお持ちのものですから、きちんとお客様個人を理解して、価値ある体験をお届けできるという意味で、最も有効なデバイスであると考えています。
髙柴 理想型としては“スマートフォンを持ち歩く必要はない”というところまでいくといいですね。例えばスマートフォンがバッグに入ってたり、家に置いたままでも、車に乗ったら勝手につながって、車の電源を付けると 自分のスマートフォンと同じことがカーナビ画面でできるというのが、ひとつの理想型だろうと思っています。
現在はスマートフォンを常時携帯いただくことが前提ですが、クルマが個人を特定できるようになれば、クラウド上にあるスマートフォンの情報等にクルマが直接接続して、お客様専用の環境を車内に再現する、という未来も考えられますね。
神門 事業者としては、スマートフォン向けの資産を流用できることが大きいのですが、将来的にはおっしゃる通りで、“すべての車にSDLが搭載されていて自動的につながる状況”があると考えれば、たしかにスマートフォンをハブにしなくていいような気はしますね。
松岡 いわゆる生体認証が車内でスムーズかつ低コストにできるようになってくると、今おっしゃっているようなことができてくるのかもしれません。
現在はスマートフォンを持ち続けることが1つのテーマだと思いますが、ユーザー体験も含めてスムーズなものが出てくるか、あるいは車側が個人を特定できれば、クラウド上のスマートフォンの情報に接続して環境を再現するという未来も考えられますね。
―― 現在、SDLは諸々仕様を詰めている段階ですが、四輪車/二輪車とスマートフォンを軸に真にパーソナルな情報のやり取りが可能になる未来を垣間見ることができたように思います。夢が膨らみますね! お忙しいところ、ありがとうございました。
(提供:トヨタ自動車株式会社)
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