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スマホと車・バイクを連携させる新規格SDLのすべて第9回

全車SDL対応&コネクティッドの新型トヨタ・カローラ登場

スマホが当たり前になった時代のクルマはすべてこうなる!

2019年10月30日 09時00分更新

文● 正田拓也 編集● ASCII

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 クルマとスマホをつなぐ規格である「SDL」。賞金総額100万円の大規模なアプリコンテスト「SDLアプリコンテスト2019」が今年も開催されるが、実はSDL対応アプリを作るのは、それほど難しいことではない。
 極めて簡単で、1行もプログラムを書いたことがない人でも楽勝!
 ――とまでは言えないが、本連載ではこれから、SDLとはどういったものなのか、対応アプリはどうやって作ればいいのかを解説する。そのなかで、基本的な要素のサンプルコードは掲載していくので、それらを参考に(もっと言えばコピペ)しつつ、ぜひ自分の思い付いたアイデアを実現していただきたい。

 トヨタ・カローラが新型になって2019年9月に登場した。カローラはどちらかというと、長期に渡って愛用される、年齢層の高いユーザーのクルマという印象が強かった。だが、新型ではSDL対応のディスプレイオーディオを全車標準装備するなど、インフォテイメントシステムでは一気に最先端のクルマとなっているのだ。

新型カローラ ツーリング

新型カローラの運転席にはディスプレイがいちばんいい場所に搭載される。写真は標準装備の7インチタイプ

SDL対応のディスプレイオーディオを全車標準装備

 新型カローラには、セダンのほか、ワゴンのカローラ ツーリング、ハッチバックのカローラ スポーツの3つのタイプがある。これらについて一般に報じられているのは、従来に比べてサイズアップし、全車3ナンバーのクルマに成長したことなどが中心だ。そのため、クルマ関係のニュースを見ている限り、スタイルや走行性能が新しくはなっているが、中身にまったく新しい試みがあることはなかなか想像できない。

 けれども、ITの世界から最も注目すべき特徴は、ディスプレイオーディオの全車標準装備化だ。ラジオなどのオーディオが液晶ディスプレイを使ったものになり、SDL(Smart Device Link)に対応する。それも上位グレードだけでなく、193.6万円の最下位グレードのカローラをオプションなしで買っても、ディスプレイオーディオが付いてSDL対応となるのだ。

 そして、SDLに対応した「LINEカーナビ」をインストールしたスマートフォンを接続すると、クルマのディスプレイにカーナビが表示され、ステアリングの操作ボタンと音声操作でカーナビが使えるようになる。

 SDLはカーナビだけでなく、音楽アプリをはじめとするさまざまな対応アプリを、ディスプレイや操作ボタンを使って利用可能にする。カーナビにしても、LINEカーナビのほかにNAVITIMEが対応したほか、今後続々と登場する可能性があり、好きなアプリを選べるようになりそうだ。

 ディスプレイオーディオを搭載するクルマは少なくないが、カーナビが専用のものしか使えなかったり、Apple CarPlayやAndroid Autoに対応するものがあった程度。SDLのようなオープンな仕組みへの全車対応が、カローラの非常に新しい点だ。

新型カローラ

新型カローラ ツーリング

新型カローラ スポーツ

 カローラを買えば自動的にSDL。だがオーディオでCDは再生不可

 その反面、オーディオとしては古くからの流れをバッサリと切り捨てた。ディスプレイオーディオは外部入力として、USBメモリーに入った楽曲データの再生やBluetooth経由での音楽再生は可能だが、CDを挿入するスロットもなければ、販売店オプションとしてもCDの再生機器は用意されない。もちろんカセットテープにも対応しない。

 また、フロントパネルにはディスプレイオーディオを装備するスペースしかないので、従来からの「2DINサイズ」のナビやオーディオは装着できない。オーディオをまるごと従来のものに交換しようとしても、通常では装着不可能だ。もはやSDL専用といってもいいくらいなのだ。

 極めつけは、先行して2018年7月に登場していたハッチバックボディのカローラスポーツも、セダンのカローラとカローラツーリングの登場に合わせて、全車ディスプレイオーディオ化されたこと。カローラスポーツは登場時に2DINのスペースがあり、この位置に装着できるさまざまなカーナビ等と組み合わせることができたが、マイナーチェンジで新型カローラに合わせるように2DINを廃止。SDL対応を徹底させた。

 高齢者を含めて幅広いユーザーのいるカローラのようなクルマにディスプレイオーディオを搭載し、しかも他の選択肢を用意しないあたりには、トヨタのSDLをはじめとするディスプレイオーディオにかける、並々ならぬ意気込みが感じられるのだ。

オプションの9インチディスプレイを装着した状態

標準装備の7インチディスプレイ

オプションの9インチディスプレイ

全車がコネクティッドカー

 クルマ業界で最近良く聞かれる「CASE」という言葉がある。コネクティッド、自動運転、シェア、電動化という、これからの自動車業界に必要な4つを並べたものだが、その頭に来るのがコネクティッドだ。

 カローラはディスプレイオーディオのほかに、コネクティッドの機能も全車標準装備している。「DCM」と呼ばれる通信モジュールを装備し、位置情報付きの緊急通報をクルマのボタン操作でできるほか、駐車時に位置を知らせるサービス、異常時に連絡するサービス、警告灯が点灯した場合にオペレーターに相談できるだけでなく車両状態を販売店に送り、今後のメンテナンススケジュールに役立てるなどの機能がある。

 各メーカーともにコネクティッドカー化を進めているが、トヨタでは最も大衆車と呼ばれていた「カローラ」全車に、コネクティッドカーとしての機能を搭載してきたのだ。

コネクティッドは全車標準装備

SDLに対応したLINEカーナビはどんな使い心地か?

 では、実際に今回のカローラ×LINEカーナビを使ってみたい。スマ-トフォンとUSBで接続し、LINEカーナビを起動して画面を切り替えると、クルマのいちばん見やすい場所にある画面にLINEカーナビが立ち上がる。

 操作は画面でできるが、音声操作も可能。「Clova、××して」などと指示できる。このため、スマートフォンを使っていながら、まったくスマートフォンに触ることなく操作が可能だ。スマホのアプリではあるけれども、完全にクルマの操作インターフェースだけで利用できるということだ。

 LINEカーナビのトヨタ側の担当、トヨタ自動車 ITS・コネクティッド統括部 主幹の玉根靖之氏は、国内に8,000万人のユーザーを持つLINEがユーザーエクスペリエンスを担当したほうが、よりよいものができるとした上で、「LINEカーナビを使った理由は音声認識。目線を阻害せずに、すべて発話と会話だけでやるコンセプトは新しい価値になる」と説明する。

 ただし、まだ発展途上なところもある。SDLでクルマからの情報をより多く得て、その情報でカーナビアプリを動かせば、もっと便利になると考えられる。だが、クルマ側から出している情報は現状「ない」という。

 例えばGPSや車速パルス、加速度センサーなど、クルマに付いているであろうデータを使えば、スマートフォンの置き場所に気を使わなくても、自車位置を取りやすい。車速パルスはクルマのタイヤにつながっていないと取得できない情報だが、これがあればトンネルの中でも自車位置を正確に把握できる。特に長いトンネルの途中に分岐があるような場所では、車速パルスなしには正確に分岐を案内できない。

 現状では、残念ながらそういった情報はSDLで得られていない。もし、新型カローラにおいて、トンネルの中でもしっかり案内されるカーナビが必要なら、オプションの「ナビキット」を装着することで、ディスプレイを通常のカーナビとして利用できるようにするしかない。

スマートフォンを接続した状態の車内

LINEカーナビを接続

LINEカーナビの画面

こちらはオプションのナビキットを装着して実現する内蔵カーナビ

SDLの活用の今後

 今回、はじめて大々的にSDL対応を進めたのが新型カローラ。しかし、車両から走行データが取得できないことや、対応アプリがまだまだ少ないという点で、SDL対応だからと活用の期待値を上げすぎてしまうと、少々肩透かしを食らってしまうかもしれない。

 この点については、玉根氏は「もう少し待ってほしい」と語る。走行データ開放の要望は承知しており、必要性は理解していて、トヨタ側にもデータを出す意欲はあるという。

 だが、今回はあくまでナビとしての利用であり、不正にデータを取得される危険性や個人情報の保護といった点。そして何と言ってもクルマは人命を預かるものであり、「慎重にやっていったほうがいい」ことを強調した。

トヨタ自動車 ITS・コネクティッド統括部 主幹の玉根靖之氏

トヨタ自動車 ITS・コネクティッド統括部 コネクティッド戦略グループ 主幹の齋藤英志氏

カローラの視線が動かない乗り心地は、インフォテイメントのため?

 新型カローラは横幅を少し広げて3ナンバー化されたが、車体が少し大きくなっても、従来と変わらない使い勝手の良さを実現する工夫が随所になされている。

 トヨタの新型車の特徴である「目線の移動が少ない」という点は、新型カローラにも備わっている。これは、走行中の乗り心地を改善するポイントとして、ドライバーの目線の動く範囲を少なくするというもの。カローラの開発を担当したトヨタ自動車 MS製品企画 チーフエンジニアの上田泰史氏によると「クルマの動きと人の目線がリンクするということを追求してきたのが、新しいカローラ」であり、長時間乗っていても疲れない性能を実現しているという。

 そしてこの「目線の移動が少ない」というのは、ディスプレイオーディオとLINEカーナビにもつながってくる。LINEカーナビの操作を音声認識で行なえば、ドライバーはセンターコンソールの大型ディスプレイに目をやる必要がなくなり、より目線の移動を少なく運転を続けられるのだ。

ドライバーの目線での運転席

走行中「目線の移動が少ない」という新型カローラの乗り心地

カローラ開発担当のトヨタ自動車 MS製品企画 チーフエンジニア 上田泰史氏

SDLは発展途上だが、トヨタのSDL対応には期待できる

 上田氏によると、ディスプレイオーディオを標準搭載する対象としてカローラを選んだ理由は、今後のコネクティッドの展開において、台数的に大きなボリュームがあるからだ。販売現場でも、スマートフォン連携についてのスタッフの理解は進んできたという。

 ディスプレイオーディオとSDLを普及させたいというトヨタの動きは本物のようだ。あとはSDLによる車両データの開放がどこまで進むかだが、安全面、個人情報保護、ユーザーの感情などに配慮して、社会的にコンセンサスが得られてからということになり、期待はできるものの、もう少し先になりそうだ。


「クルマとスマホをなかよくする SDLアプリコンテスト2019」

主催:SDLアプリコンテスト実行委員会(事務局:角川アスキー総合研究所)
協力:SDLコンソーシアム日本分科会、株式会社ナビタイムジャパン
後援(予定): 独立行政法人国立高等専門学校機構、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会ほか
応募締切:2019年10月31日(木)24:00
募集内容:エミュレーターか開発キット上で開発したSDL対応アプリ(既存アプリの移植、新規開発)
募集対象:年齢、性別、国籍等不問。個人・チームどちらでも応募可
応募方法:プレゼンシートと動作解説動画をWebフォームで応募
審査:審査員が新規性、UX・デザイン、実装の巧みさ等で評価
最終審査会:2019年11月22日(金)
審査員:暦本純一(東京大学情報学環教授)、川田十夢(AR三兄弟長男)、鈴木朋子(ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー)ほか
グランプリ:賞金50万円+副賞
特別賞(5作品):賞金各10万円
公式サイト:http://sdl-contest.com/

(提供:SDLコンソーシアム)

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