メカニカル式
高級キーボード、特にゲーミングキーボードで圧倒的に多いのが“メカニカル”。メンブレンや静電容量無接点式と違い、個々のキースイッチは小さなパッケージに格納されており、必要な数だけ並べて使用する。押下時の反発力やフィーリング、打鍵音などはキースイッチ内部のバネや軸などの構造で決まるため、さまざまなキースイッチが作られている。
メカニカル式の欠点は物理接点に頼る構造ゆえ接触不良が起こると“チャタリング(1回の押下で何度も反応してしまうこと)”が発生すること、そして特別な対策をしない限り、打鍵時の音がメンブレンや静電容量無接点式よりも大きくなってしまうことだ。
メカニカル式のキースイッチは多数のメーカーで製造されており、仕様の差異のほかにメーカーごとのテイストの違いがキーボー道住人の心を惹きつける。メカニカル式で最もメジャーなのはドイツCherry社が設計している「Cherry MX」シリーズたが、同シリーズの特許切れに伴い、Gateron、Kailh、Outemu、Greetechといった“中華メーカーのクローン品”が多数出現している。
RazerやEpig Gearなどのゲーミングデバイスメーカーも独自スイッチを擁しているが、基本的に中華メーカーのOEM品だ。
このCherry MX互換キースイッチ最大のメリットは、Cherry MX対応キーキャップなら、メーカーを問わず装着できること。市販されているCherry MX対応のキーキャップは、キーキャップが他のキーと干渉するといった物理的な制約がない限り、どんなキーボードにも装着できる。
また、静電容量無接点式キーボードでもCherry MXのキーキャップが使えるような機構を持つものであれば装着できるなど、「Cherry MX互換」というキーワードはキーキャップ界の共通規格と言ってもいいだろう。
ゲーマー向けのカスタムキーキャップや、キャラや造形に凝ったキーキャップ(Artisan Keycapと呼ばれる)が存在するのも、このおかげだ。
Cherry MX以外にもメカニカル式スイッチはあるが、アルプス電子のスイッチ(AppleのExtended Keyboardなどの採用実績あり)は現在消滅し、台湾のTai-HaoやカナダのMatiasが互換スイッチを細々と出している程度(専用のキーキャップが必要)。
またロジクール「Romer-G」、SteelSeries「QX2」など、ゲーミングデバイスメーカーが自らキースイッチを開発する流れも生まれている。
今後もCherry MXと互換性のない独自キースイッチはこれから増えていくだろうが、汎用性の高いCherry MX互換勢力を超える勢いはない。
その他
メンブレン、静電容量無接点、メカニカルがキースイッチの3大勢力といえるが、その他にも古のIBM 101キーボードなどで採用された「バックリングスプリング」式、Zowie製ゲーミングキーボードに採用されているWooting製「Flaretech」スイッチなど、さまざまな機構・種類のスイッチがあるが、今回は割愛したい。
なぜ自作キーボードには
メカニカルが向いているのか?
さて、こうしてキーボードに使われるスイッチを知ったところで、改めて自作キーボード沼からスイッチを眺めると、沼の住人達はCherry MXまたはCherry MX互換のメカニカルキースイッチを使う人が多い(最近はMXと互換性のないロープロファイルスイッチも徐々に増えてきた)。
その理由はスイッチ機構が小さなボックスにまとまっているため、必要なキーの数だけ調達し、ケースを作って固定すればよいからだ。フィルムや基板製造が必須のメンブレンや静電容量無接点式はこう簡単にはいかない。
さらにキースイッチの選択が豊富にあり、自分に合ったタッチのものを組み合わせることができる。そこで、代表的なCherry MX互換メカニカルキースイッチに関して、大ざっぱな特性をまとめておくことにしよう。
Cherry MX互換のキースイッチは、基本的にメーカー名と「軸の色」で識別する。キーボードのスペック表に“中華赤軸使用”などと書かれていることがあるが、これは「Cherry MX 赤軸と特性が似てるけど、GateronやKailhなどの中華メーカーの同等品を使っている」という意味なのだ。
今回は打鍵時のフィーリングを軸に、各社どんなスイッチがあるのかという観点からまとめてみた。次ページ以降のカッコ内の数値は、キーの重さ(アクチュエーションフォース)を示す数値で、これが大きいほど重く感じる。ただこの数値も誤差があるうえ、公式サイトと販売サイトで記載されている数値が違うこともあるので、目安として捉えていただきたい。
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