
手書きデバイスは、さまざまなテクノロジーやコンセプトでもう何十年も続いている、字を書く唯一の動物である人類の大好きなデバイスだ
人生で初めてデジタル処理が前提の“手書きデバイス”を使いだしてほぼ四半世紀ほどが経つ。
しかし、手を変え品を変え、五月雨式にいろいろな新製品が登場してくる手書きメモのデジタル化ハードウェアには飽きる暇がない。最初の出会いは仕事として関わったIBMとボールペンの雄である米国CROSSの共同開発商品である「IBM CrossPad」だった。
あれから約20年。昨今では、普通のメモ用紙やノートに記述する製品以外も多様だ。「Surface」や「iPad」やAndroid系のタブレット、スマホの「Galaxy Note」などを含めれば、文字や絵を描く対象を液晶画面だけに限定したモノも増殖中だ。
いつまで経っても人類は「描く」ということから離れる生活は難しいのかもしれない。
手書きデバイスは誰のためのもの?
一口に“手書きデバイス”と言っても、その仕様や手段はさまざまだ。CrossPadのように、特殊な筆記具(ボールペン)と特殊なクリップボード(下敷きボード)を使用することが前提で、文房具屋さんで入手可能な普通のリーガルパッドに自由に描けるもの。
その拡張版として特殊な筆記具とボード型ではないシンプルな“クリップ”などを使用するものなどもある。
また、この世界では老舗である北欧Anotoが中心となって広めた手書きデバイスや、韓国のネオスマートペン、Anotoの拡張応用モデルである米国LiveScribeのスマートペンのように、特殊な筆記具と目に見えにくい微細な模様の印刷された特殊な専用用紙を使うものなどがある。
まあ、それぞれにメーカー側の言い分や、ユーザー側のメリット、デメリットはあるが、それも使う目的や生活環境によって真価は変わるだろう。過去から現在まで、いつの時代も、個人がどれを選択するかはなかなか悩ましい問題だ。
スマホが一人一台まで普及した昨今では、できる限りデバイスには難しい先端テクノロジーを採用しないという考え方もある。単に普通の紙に普通の筆記具で描いた結果をスマホのデジカメ機能で撮影して画像として保存し、それ以降の高度な使い方である“DB化”や“共有”、“文字認識”などはクラウドサービスであるサーバー側にすべて任せてしまうという割り切った方法も多い。
しかし、多くのメーカーがあふれる時代では、それだけではなかなか差別化のビジネスにはなりにくいことも多く、少しでも最終結果に有利な特化した専用用紙やペンを活用して、機能強化や機能の拡大を図りたいのがメーカーの本音だろう。実際に、そのような中途半端な成長をしてしまったどっち付かずの商品も多い。
そんな時代にまたしても登場した「Bamboo Slate Small」(後述)は、特殊なペンと特殊なクリップボードを使用し、筆記用紙は一般的になんでもいいという20年前のCrossPadとほぼ同様コンセプトの製品だ。
この20年で“手書きデバイス”が“できること”は、すべて一巡したが、残念ながらいまだにユーザーの求める正解を出せていない実に面白い世界なのだ。
しかし、そこは約20年近くペンデバイスで遊んでいる筆者もまったく同様で、相変わらず新商品が発表になれば期待して衝動買してしまっている有様だ。
手書きデバイスは結局のところ
物理的な紙世代には難しい!?
そんなことなので、過去から現在まで、世界中で発売された紙とペンを使用する手書きデバイスは、ほぼそのすべてを購入している。このため、よく人から「どれか1つのペンデバイス推薦してくれ!」と言われることが多い。
しかし、残念ながら、過去も現在も、“本当に使えるモノ”を真面目に探している普通の人には、今の市場にあるすべての手書きデバイスをシカトして、ごく普通のお気に入りのペンと、筆者がプライベートで商品企画している「Thinking Power Note」(ツバメ大学ノート)の2つだけをおすすめしている。
一方、物理的な紙ではないEインク系や液晶などを採用したタブレット系は、テクノロジー的には、近来、素晴らしい進化と拡大を見せている。
しかし、ボールペンと紙との高級な摩擦感覚を指先から脳みそに至るまで深く刻んでしまった過去の人類には、液晶の表面とプラスティックやエラストマー系のペン先との滑るような摩擦係数の低さの不快感は人によっては耐え難いものだ。
紙を使用せず、液晶の表面をパートナーと決めた手書きデバイスには、それらの不快感をものともしない分かりやすいメリットをユーザーに想像させることができなければ、選択の価値は低いだろう。
生まれてからずっとツルツル滑る液晶ガラスの上でお絵かきをしてきたペンデバイス・ネイティブが成人するころに結果は明らかになるだろう。人が100人いれば100通りの意見や感覚差がある手書きデバイスは、だから面白いとも言えるのだ。

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