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「爆買い」の舞台は中国本土へ 信頼性で急成長する越境ECベンチャーbolome

勝負の決め手は、ライブ感・現地価格・メーカー直結

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現地調達も含めた、サプライチェーンを構築

 越境ECにおいて大切なのが中国市場で人気のある商品をしっかりとおさえることだ。たとえば、中国のいわゆる爆買いユーザーの間では「神12」と呼ばれている商品がある。越境ECとしてビジネスを行う上で、まずはそれをしっかりとおさえる必要があるのだ。

 そして、その上で、まだ知られていない商品を開拓していかなければ競争力はつかない。しかし、それらもただ写真とテキストを載せただけでは買ってもらえない。動画を通じて、日本の良い商品を紹介して販売していく。bolomeではライブ動画を現地で撮るということ、そして、現地での仕入れの2つのために、日本と韓国に現地法人を置いているという。

 「商品を仕入れて売るわけなので、普通に売ってくれると思っていた。でも実際はそんなに簡単ではない。最初は、国内流通にも相手されずに、量販店で買ったこともあった」(水野氏)

 どうやって現地の流通と組めるか、サプライチェーンを築けるかという部分も、ほかとの大きな差別化点だという。bolomeは日本支社も韓国支社も、半分は現地人。だから、現地調達も含めた、サプライチェーンを作っていける。そうして関係を作りながら、まずは爆買いリストの商品を集め、さらに中国で知られていない日本の良い商品を開拓している。

 現地に支社を持つということは大きなコストを抱えることになる。しかし、それ以上にメリットがあるという。ひとつは中国で知られていない良い商品の情報をいち早く入手し、仕入れられること。そして、中国市場で絶大な支持を集めている爆買い商品をメーカーから直接、仕入れられるということだ。他社が、二次流通などから商品を仕入れているのに対して、bolomeでは主要商品の多くを現地で仕入れられる。これが商品価格の設定と利益を生み出している。

 ただし、越境ECとメーカーとの間ではさまざまな問題があるという。それが中国に現地法人を持つ場合のコンフリクトだ。

 「たとえば、なかには何年もかけて中国市場の開拓のために身銭を切りながら、コストのかかる一般貿易で税関を通して、市場を作っていった日本企業も多い。しかし、越境ECなら、その税関コストが圧倒的に安くできる。また、時間もかからない。現在では日本の新商品をリアルタイムで販売できるため、それを行った場合、そのまま現地法人にダメージとなってしまうことがある。とあるメーカーからは、1つの商品は正規で卸すから、他の商品の取り扱いを辞めてほしいと言われたこともある」

現地での小売価格で販売する

アプリ内での価格は現地の値札写真とともに

 通常、輸入販売される商品というのは流通コストが乗せられるのが当たり前だ。しかし、bolomeで取り扱っている商品は、現地価格、つまり日本の商品なら、日本国内のドラッグストアなどで販売されている価格で、中国で販売しているのだ。

 これは前述のとおり、越境ECだからこそ実現していることだ。

 「その名の通り、小売店で販売している価格でそのまま中国でも爆買いができますよということ。アプリを見てもらえればわかるが、ドラッグストアに置かれているような値札をそのまま写真で掲載している。あとは今日の為替レートがいくらだから、人民元だといくらだという表示もしている。これらも信用化のための一端。こういった写真をとれるのは現地にチームがあるため」(水野氏)

 だが、日本で仕入れて中国で売るというビジネスモデルである以上、流通コストなどはかさむ。それでいて、日本の小売価格で成立するのだろうか。現在は、2つの配送方式で使い分けているという。

 まず、越境ECによる輸入の場合、中国政府の後押しにより、一般貿易と比べて圧倒的に関税などが安い。そももそ化粧品などは、通常50%の関税がかかっている。さらに、いわゆる人気商品はロットで買い付けて大量に輸出できる。ただし、商品は「保税区」という倉庫に保管しなければならない。この保税区に商品を入れた時点では税金はかからず、そこから出すときに出す分だけ税金が掛かる仕組みだ。中国国内の物流コストは非常に安いため、そこからは通常のeコマースと変わらずに配送すれば、日本の小売価格での販売ができているという。こういった商品は、すでにきちんと利益が出ている。

 「ただ、この保税区は一度商品をいれると、出すのが大変。大量仕入れができるような、売れる商品しか入れられない。一方でテストマーケティングのために仕入れた商品や日本の店頭で仕入れた戦略的に仕掛ける商品、そして、日本限定などの数がない商品は別。こういったモノは問屋からは入手できないため、店頭で買う必要があり、こういった商品は直送用の倉庫から送っている。収益は良くてトントンでもうかるものではない」

 だが、こういった「ほかではない商品」を取り扱っていることが引きになる。これらがあることで、日本商品が好きなユーザーはbolomeを選んでくれるという。今や越境ECで取り扱っている商品の大半は横並びで、中国市場で人気の爆買いアイテムなどは他の越境ECでも購入できるのだ。

 ちなみに、直送商品は単体で発送すると赤字になるため、数百元以上購入すると送料無料といった形にしている。金額にシビアな中国人に対して、『日本の小売価格で買える』という訴求は非常に大きい。

ターゲットは可処分所得が高い20~30代の女性層

画面内に飛び交うクーポン券アイコン

 bolomeを初めとする越境ECを利用している人はどのような人なのか。水野氏によると、90%以上が女性だという。中国人の平均所得がアップしたとはいえ、それは一部の都市層の市民だけだ。結果、利用者は可処分所得の多い若い女性が多い。そのため、アプリの利用者として、iOSユーザーが圧倒的に多いそうだ。

 「一般貿易で中国に入って来た化粧品などは、日本の小売価格の2倍以上になる。そのため、越境ECの方が圧倒的に安い。化粧品や粉ミルクやおむつなど、若い女性が必要とするモノがよく売れる。また、日本の場合は、カルビーの『フルーツグラノーラ』なども人気」(水野氏)

 商品ラインナップだけでなく、売り方もさまざまなチャレンジをしている。最近スタートしたのが、動画ライブとからめた共同購入だ。これは一定数の注文が来たら、販売価格が安くなるというもの。ユーザー側が自らのコミュニティに商品のリンクを教えるなどして、拡散してくれる。また、動画ライブを試聴しているチャットルーム内のコミュニケーションもより盛り上がるという。

 このほかに、アプリ画面内に赤い封筒アイコンが表示され、当たりを引くとクーポン券がもらえる『ホンバオ』というお年玉のような仕組みや、動画ライブ中に合い言葉をコメントし、購入したユーザーに電話をかけて、その合い言葉が言えたら購入額が無料になるといった、インタラクティブなゲームも用意。こういった取り組みを通して、bolomeでの買い物そのものを楽しんでもらえるようにしているという、

 「もともと中国でも、テレビショッピングは人気があった。越境ECで動画ライブを始めたのはbolomeが最初。今大切にしているのは、新規ユーザーを獲得すること。この1年でビジネスモデルと企業としての体制がしっかりとできあがってきたので、あとはユーザー数が増えたら、利益は上昇する」(水野氏)

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