Meet Me RackやGPUクラスター、IoT対応などの新施策
データ集積地を実現するには、膨大な計算資源、大容量のストレージ、そしてそれらをつなぐ強靱なネットワークが三位一体で必要になる。「データに焦点を当てていくと、おのずとインフラは鍛えられていく」と石田氏は語る。
データ集積地としてのデータセンターとしては、「Meet Me Rack」という考え方を導入し、ユーザー同士をつなぐ専用のラックを設ける。また、ストレージ、GPUクラスターのラックも設け、ユースケースに対して迅速に対応できるデザインを採用していくという。「たとえば先日発表したGPUコンピューティングは、ディープラーニング向け。実際、介護の現場でデータを収集・分析し、教師データを作り続けるプロジェクトも進めている。今のクラウドでは3~4日かかる処理を、数時間くらいで答えを出せるようにしたい」(石田氏)。
さらに空調に関しても、究極はゼロを目指して技術革新を進めていく。白河や北九州のデータセンターでは、すでにPUE1.2以下を実現している同社だが、「コンピューターも脳の処理能力にどんどん近づいているが、決定的に違うのは消費電力の差。でも、処理能力が上がっているのであれば、電力消費もどんどん抑えていきたい。GPUは電力消費も高いし、今後も大きな課題」ということで、終わりなき戦いを続けていく。
そして、IoTでの利用を前提にデータセンターの設計も大きく変えていく。たとえば、IoTデバイスから送られる生データを前処理として加工する「フォグ層」を設け、デバイスからデータを取り込むゲートウェイ、そしてクラウドまでを一気通貫で処理できる環境を構築する。また、人工知能の技術を積極的に導入し、データセンターの運用もIoTに最適化していくという。「IoTデバイスからフォグ層、IoTゲートウェイを経由して、弊社のデータセンターにデータが集まってくる。つまり、これからどのエリアのどのサーバーの活動が活発になるか、統計的に予測できる。負荷が高まってから冷やすという受動的な運用ではなく、IoTデータ流入量によって負荷が高まりそうなエリアを先に冷やしておくといった能動的な運用が可能になる」(石田氏)。データドリブンなデータセンターでは、運用もデータドリブンに行なっていくのが、今後の方向性というわけだ。
「IDCFクラウド=パワフル」はこれからも変わらない
IDCFクラウドに関しては「スケルトンクラウド」というキーワードで、可視化を進めていく。「クラウドも第2波が到来して、情報システム部門ではなく、事業部門が利用するようになってきた。でも、事業部門はクラウドの中身は気にしないが、情報システム部門としてはどんなコンポーネントを使っているか、どういうトポロジで、どういうデータ処理をしているか知っておく必要がある」ということで、とかくブラックボックス化しがちなクラウドをできるだけオープン化する提案だ。特にプライベートクラウドでは使用している機器や構成まで明らかにしていくという。
IDCFクラウドと言えば、500円クラウドとしておなじみだが、今後はコストコントロールできるメニュー作りも意識するという。「低価格の積み上げは低コストにならないというのが持論。たとえば、多くのIoTデバイスがデータを送受信したら、その積み上げの結果、低コストにはならない。一番必要なのは安いことではなく、コストコントロールできること。その点、データセンター内で通信すれば、通信コストもかからない。他社クラウドから移行すると、コストを1/3に抑えられたところもある」と石田氏は語る。
3年後にAWSやAzureに拮抗できる国内No.1を目指すというIDCフロンティアの方針は今後も揺るがない。そのために、認知度の向上や直販・パートナー・オンラインの販路拡大、データ分析やディープラーニングに長けた人材の採用、基幹システムのデータセンターの移行などを積極的に進めていくという。
「今後企業がクラウドに移行する上で、5つの点が重要になると考えています。クラウドの可視化、クラウドから自社運用の物理サーバーの可逆性、ユーザーと事業者の運用分界の設定、データの信頼性を確保するための保全、そしてクラウドへのマイグレーション。この5つがきちんと担保できると、より目標に近づきます。そして、『IDCFクラウド=パワフル』というのは、これからも変わりません」(石田氏)。
(提供:IDCフロンティア)