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日本人は座りすぎ!オフィス用上下昇降デスク「スイフト」がIoT化した理由

2016年03月14日 10時00分更新

文● 岸田泰幸 編集●北島幹雄/大江戸スタートアップ

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「オフィス×IoT」で何が生まれるか

 世の中にある、ありとあらゆるものが電子化/IoT化している中で、ふと考えてみると、皆さんがオフィスで使っているデスクや椅子は、電子化されていないものがまだまだ多いのではないでしょうか。

 私自身、このプロジェクトを開始するまでは、特に何も考えることなく会社のデスクや椅子を無意識に使っていましたが、進める中でふと、実は、使っている側である我々の方がデスクや椅子に合わせているのではないだろうか、と気付きました。一人ひとり身長や体重も違うのに、デスクの高さは一緒。椅子の高さは調節できますが、毎日同じ姿勢で働いていることに変わりありません。

 そのような当たり前の日常に疑問を持つことで、プロジェクトチームにひとつの道筋が見えました。「デスクや椅子などオフィス環境を形づくるものが、その形により人に働き方を決めさせるのではなく、人に応じた働き方をサポートできる存在になれないか」。つまり、「働く人を手助けするオフィス家具/環境」を創れないか、と。

立ち仕事での適切なデスクの高さとは?

 そこでプロジェクトチームは、すでに発売していた上下昇降デスク「スイフト」のアップデート版のプロトタイプ製作に取りかかりました。

 立ってデスクワークをする際、自分自身どのデスクの高さが快適で、効率が上がるのか。そのようなことをやったことも考えたこともなければ、どの高さが良いかなど想像もつかないでしょう。また、一人ひとり身長が異なるため、その快適な高さは人によって異なります。

 じつは、立った姿勢における快適なデスクの高さのポイントは肘の高さにあります。自分の身長は大体の人が分かっているものの、肘の高さを認識している人はほとんどいないでしょう。

 まずは、身長や肘など、身体の幾つかの部位の高さをKinectで検知し、立って働く際に快適なデスクの高さをデバイス(プロトタイプ時はPC)に表示してフィードバックするプロトタイプを製作しました。

 その後、このプロトタイプを岡村製作所が開催する新製品発表会で展示しました。オフィス家具メーカー×IoTというコンセプトは真新しく、完成品ではなくプロトタイプを展示すること自体が異例なことだったのですが、来場していただいた方からは好評をいただき、製品化に対する期待の声もいただきました。

本当の課題の発見:ときどき立って働くという習慣づくり

 さらに、上下昇降デスクを使ったことがない人に試しに使っていただいたところ、「これまで座って働くことが当たり前すぎて、ついつい座りっぱなしになってしまう」「いつ立っていいか分からない」「忙しく働いているとつい忘れてしまう」という課題が見えてきました。

 これは、上下昇降デスクというツールを手に入れたとしても、今までの当たり前の習慣を自分の意志だけで変えるのは難しい面もあるということです。そこでチームはこれを解決すべき最大の課題と設定しました。

 最終的な共同開発の方向性は、「Habit Design=習慣づくりのサポート」です。

 上下昇降デスクでも、高さを変えずに座っていては、宝の持ち腐れとなってしまいます。そこで、利用者がデスクの使い方を意識して、立つ頻度や時間をコントロールしなくてはならないのではなく、デスクの方から使っている人に立つタイミングを知らせる仕掛けを提供したり、デスクの利用状況を見える化したりすることで、「座り時々立つ=+Standing」という新しい習慣づくりを手助けする仕組みづくりを進めました。

 この春、共同開発の成果として、スイフト用のスマホアプリ「+Standing App」をリリースする予定です。

 たとえば、上下昇降デスク「スイフト」本体にBLEモジュールを新たに組み込むことで、スマホと通信できる環境を構築、「+Stading App」の利用が可能となります。

 代表的な機能としては、自分の好みの高さに任意に動かす上下ボタンやプリセットした高さに動かすリモコンとしての役割があります。

 また、設定した時間以上、座り姿勢が続いていると検知すると「そろそろ立ちませんか」と姿勢を変えることを推奨するリマインダー機能、さらには1日の立った回数、時間、デスクの高さ遷移などを記録、表示するログ機能と、そのデータ蓄積からの消費カロリー推計なども備えられます。

アップデートするデスク、今後に向けて

 「+Standing App」は、まだリリースされていない状態ではありますが、クオンタムと岡村製作所はその先にも目を向けていきたいと考えています。

 電気自動車のテスラモーターズは、「アップデートする車」であることでも注目を集めていますが、私たちは「アップデートするデスク」を目指します。重視しているのは、「データの活用」という視点です。

 今回リリースするバージョンでは、プライバシーの観点からあえて使用ログデータを自動取得することはしていませんが、一方で、データを蓄積し分析を進めることで「より効率的な働き方」、例えば「発想が生まれやすい姿勢と時間」「事務処理のスピードが上がる姿勢と時間」というようなことが分かるようになる可能性もあります。そうした情報や知見をもとに、一人ひとりの個性や使用状況に応じたフィードバックをすることで、「より働く人をサポートするデスク」になれるはずです。

 「座り時々立つ」という新しいワークスタイル、ぜひみなさんも実際に取り入れていただくのは、いかがでしょうか。

※お詫びと訂正:記事初出時、座りっぱなし習慣のリスクについて「禁煙」と表記がありましたが「喫煙」の誤りでした。訂正してお詫びします。(2016年3月14日)

TBWA HAKUHODO QUANTUM(クオンタム)

大企業とスタートアップによる共同事業開発モデルであるコーポレート・アクセラレーター運営サービスを主軸とした「スタートアップの革新的な技術やアイデア」と「大企業のパワー」の共創に よる事業開発の包括的な支援を行うイノベーション組織。TBWAのグローバルネットワークや博報堂グループの知見を生かし、スポンサーとなる大企業とプロジェクトに参画するスタートアップの双方に精通したプロジェクトマネージャーによる運営、経験豊富なデザイナーやエンジニアを含む多様なクリエイティブ人材やグロースハッカーチームによるサポートを提供。

岸田泰幸

TBWA HAKUHODO QUANTUMシニアプロジェクトマネージャー。博報堂にて飲料メーカーや製薬企業担当の営業及び人事、秘書役を経てクオンタムに参画。クオンタムでは複数部門や社外のパートナーにまたがる新規事業開発プロジェクトを担当。

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