国産クラウドのチャレンジ!「IDCFクラウド」徹底解剖 第1回
失敗から学んだ内製化への道、ネットワークのこだわり、500円クラウドまで
これが僕らの生きる道!IDCFクラウドの真価を語り尽くした
2015年06月30日 07時00分更新
全体最適のためにネットワークにはこだわる
大谷:先ほどのネットワークの強みってどこらへんがあるんでしょうか?
林:インターネットって、昔から同じプロトコルで動いていて、そこにいろんなアプリを突っ込んでいるんですけど、そろそろ対応できなくなりつつある。アプリのチューニング1つとってみても、インフラ設計とかタイマーの作り方で全然変わってくるでしょ。そこを相手の事業者やISPといっしょに最適化できたら、もっとアプリって作りやすくなると思うんです。だから、1つ1つのリソースではなくて、全体最適ができるといいなと。
西牧:もっと自慢しろよー(笑)。帯域の話とか、設計の話とか。
林:はいはい。だから全体最適という目的のために、まずは帯域は誰にも負けないくらいのバックボーンネットワークを目指してますし、ネットワークエンジニアも自社できちんと抱えています。これけっこう貴重だと思いますよ。大規模なネットワークを運用する体制が整っているんです。
大谷:最近はアプリ自体が分散化、マイクロ化という方向性になっていますからね。
西牧:もう1つ売りだと思うのが、L2での接続。クラウドに全面移行する会社ってそうそう多くはないし、オンプレはどうしても残る。そうするとハイブリッドクラウドになるのですが、両者をつなぐネットワークってみなさん苦労するはず。その点、うちはL2でつないでいるので、東京でも、大阪でも1つに見られる。
林:ネットワークエンジニアって少ないんですよ。少ないからこそ、意識させないようにしなければいけない。アプリエンジニアにネットワークを意識させないようにするには、L2ってけっこう重要ですよね。クラウドだけでアプリ設計できればいいですけどね。
大谷:ハイブリッドクラウドって、意外とつなぐところが軽視されていますよね。
林:そうなんです。2011年くらいから意識してL2で設計してるんですけど、L2ってループするので、本当はL3の方が運用しやすい。でもお客様のこと考えたら、L2だし、余計なヘッダを付けたくない。なるべく生の通信を使ってもらいたいので。
大谷:あと、遅延の話とかね。白河データセンターと東京の間が遅延低いという話って、普通のデータセンター系の説明だとあまり出てこないトピックですよね。
西牧:そう、場所はいいところを選んでる。白河って東京から距離的にはそこそこ遠いはずなのに、遅延的には低いという最高の場所なんですよ。
林:そこらへんも、こだわりですね。遅延とゆらぎに関して気を遣うのはネットワーク屋としては当たり前なんですけど、ゆらぎの方がアプリにとって見たら厄介ですね。速くて、安定している環境にこだわりたい。だから、ゆらぎの大きいインターネットには投げたくない。ブラウザで見ている程度ではわからないですけど、機器と機器がつながったり、サービスとサービスがつながると格段に差が出てくる。
西牧:ネットワークだけではなく、電話でのサポートと1つ上のSLAを提供するクオリティも高く評価されています。日本のお客様だと、業務時間中にメンテナンスされても困りますしね。
「500円クラウド」のインパクトとターゲット
大谷:それにしても先日、発表された「500円クラウド」は驚きました。やはりマーケティング的な戦略なんですか?
西牧:そうですよ。儲らないですよ(笑)。追従してきたのは国内事業者では2社かな。真似してもらって、うれしいです。
林:なにせ知名度が低かったんで(笑)。知ってもらわないといけないなと。
西牧:でも、月額500円でも、競合他社サービスよりメモリも多いし、十分なスペックです。
大谷:実際、そんなユーザーさんが使っているんですか?
林:ツイッターやブログを見ていると、企業内個人の方が使っている感じです。なにしろお客様から反応があるのがうれしいです。本当に勇気をいただいてます。
大谷:現在のIDCFクラウドって、どのようなユーザーがターゲットなんですか?
西牧:オンラインは特にユーザーを決めてませんが、営業が注力しているのはメディア、アドテク、ゲームの3業種です。ネットワークの定額制は喜ばれていますし、サーバー作る時間が短いのもメリットですね。エンタープライズ系はパートナーさんと協業しています。
林:最近、お客様同士のマッチングも積極的にやってますね。IDCフロンティアだけが価値を提供するのではなく、お客様がそれぞれの価値を提供し合っている場作りができたらいいなと思ってます。課題解決できるプレイヤー同士を紹介し合って、その中でIDCFクラウドの使い方を拡げていくみたいな感じで進めているイメージです。
大谷:エクイニクスさんとか事業者同士のマーケットプレイスを提供している感じです。
林:われわれIDCFが「データ集積地」と言っているのは、そのイメージですね。集まってくる方々が相互に価値を提供しあえる場所を作るという感じ。
西牧:データを集めて、それをビジネスにするのとは異なるので、プレイヤーをマッチングできる場所という感じ。ぜひなりたいですね。DC in DC、クラウド in クラウドみたいなところにも来ていただけると、ますます価値が交換しやすくなる。
林:確かにデバイスやエッジに分散する世界もあるんだろうけど、大きなものを集計するというのはデータセンター側にあると思うんです。両者がどのような形でバランスするかはわかりませんが、データセンターでやるべき処理は今後も必ずある。なにより「データ」というのは1つ共通項だと思う。
(次ページ、この半年でサービスを一気に拡充する)
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