このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

国産クラウドのチャレンジ!「IDCFクラウド」徹底解剖 第5回

災害対策にも最適な元祖エコデータセンターを徹底解剖

6号棟も着工!西国の雄を目指すIDCF北九州データセンター

2016年03月28日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

「アジアン・フロンティア」を名付けられたIDCフロンティアの北九州データセンター。Yahoo! JAPANのインフラのほか、ハウジング、そしてIDCFクラウドを支える元祖エコデータセンターを徹底取材する。

白河データセンターと同じ空調の仕組みとデザインを採用した5号棟

北九州データセンターを巨大なデータ集積地へ

 北九州市の中心都市である小倉から電車で15分程度。駅から歩いて同じく15分程度歩くと、IDCフロンティアのアジアン・フロンティアが見えてきた。以前、取材した白河データセンターと同じような建屋が林立しており、「とにかく巨大」というのが第一印象。過去、さまざまなデータセンターを見てきたが、ここまで大きなデータセンターは正直言って初めてだ。まずは概要について聞いてみた。

全5棟が立ち並ぶIDCフロンティアの北九州データセンター。巨大すぎて全貌が見られない

 アジアン・フロンティアは、IDCフロンティアが掲げる「国内No.1のマーケットシェア」「データ集積地」というビジョンを実現するコアデータセンター。親会社であるYahoo! JAPANのインフラを担うと共に、IDCフロンティアのハウジングサービスやIDCFクラウドの西日本リージョンでも採用されている。西日本最大の規模を誇り、全11棟を想定した4万㎡近い敷地に、約2730ものラックを収納可能な5棟が建てられている。

空撮した北九州データセンターの全5棟(IDCフロンティアより提供)

 北九州データセンターが位置しているのは、明治政府の殖産興業を長らく支えてきた官営八幡製鐵所の跡地だ。竣工当初は「なぜこんなところに作った?」と言われたこともあったようだが、そもそも大地震や河川氾濫、地滑りなどが発生する確率がきわめて低く、災害に強い立地。また、「海の港」「空の港」に次ぐ「情報の港」を整備する北九州市の「e-Port構想」の1つと位置づけてられており、データセンターのみならず、コールセンターや通信事業者など、多くのICTサービスが集積している場所と位置づけられている。物理的にアジア各国に近い北九州という地の利を活かし、アジアに向けた「IT産業のハブ」としても有効に機能するわけだ。

時代を先駆けた外気空調はすでに7年半の実績

 さっそく見学に進もう。2008年9月に竣工した北九州データセンターの1号棟は、商用として初めて外気空調を採用し、4号棟までは基本的に同じ構造で作られている。建物は鉄筋コンクリート造の2階建ての建物で、すべての建物が内部的につながっている。

5号棟の屋上から1~4号棟を望む。屋上には空調機が立ち並ぶ

1号棟と2号棟をつなぐ部分。建物の大きさがよくわかる

1号棟と3号棟の裏に当たるところ。1~4号棟は2階建ての建物

 1~4号棟での外気空調では、気温が低く、湿度が適切な外気をデータセンター内の空調機に取り込んでから、サーバールームの高床から冷気として吹き出す。ラック内を通り、暖気は天井を経由して外に放出されるという仕組み。冷気と暖気を物理的に分離し、外気を補助として吸入・放出させることで、空調機の消費電力を下げる。

外気温が低く、湿度も適切な場合は、この焼き肉屋にあるような装置で吸い込む

外気は空調機で適切な温度に調整され、サーバールームの床下へ

サーバールームは1m近く床上げされ、冷気は下から吹き上がる

IT機器の暖気は天井に逃がし、外に排出される

ハウジングが多いという1号棟のラック。すでに満床に近い状態

排出された暖気を使って、ビニールハウスで野菜を育てるという実験も行なっていた

屋上にずらりと並ぶ室外空調機の数がセンターの規模を物語る

 九州というと暑いというイメージがあるが、「北九州は日本海側なので意外と寒く、冬は日中氷点下という日もあります。夏以外であれば、外気を使える時期が長いです」とIDCフロンティアの松尾宣仁氏は語る。すでに7年半近い実績があり、最大で4割弱の空調消費電力の削減を実現しているという。

IDCフロンティア ファシリティエンジニアリング部 チームリーダー 松尾宣仁氏

 電力に関しては、九州電力から6万6000Vで受電しており、UPSや72時間分の燃料を備蓄している自家発電装置も完備。定期的に試運転も行なっているため、ガスタービン方式の発電機はきちんと「使い込んだ感」がある。

データセンターではお約束の特別高圧受電設備

ガスタービン方式の発電機は3500kVA×13台の構成。排気部が茶色くなっているのは、定期試運転による高温の排気で焼き色がついた証

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    ITトピック

    絶対王者・MS Officeを脅かす“あのツール”/ソフトウェア開発の生産性低下は「会議の多さ」から?/人手不足倒産が最多、ほか

  2. 2位

    ビジネス・開発

    生成AI時代の「エンジニアの二極化」 求められるのは“情熱駆動開発”

  3. 3位

    ネットワーク

    元Appleの技術者が立ち上げたネットワーク製品が、エンジニアのハートにもぶっささりまくり!「UniFi」ってイケてるぞ!

  4. 4位

    サーバー・ストレージ

    「VMwareからの脱却は少しずつ進む」 HPEのネリCEOが語る、仮想化・AIインフラ・運用自動化

  5. 5位

    ビジネス・開発

    基盤モデルの再学習を“ゼロ”に NTTが学習効果を引き継ぐ「ポータブルチューニング」技術

  6. 6位

    TECH

    日本人の“パスワード使い回しすぎ問題” グローバル調査で発覚

  7. 7位

    デジタル

    「無駄」「面倒」「頑張り損」 諦観していた社員を変えたkintoneの工夫

  8. 8位

    TECH

    夏野氏「もう1年早く移行しておけば」 サイバー攻撃を受けたドワンゴがAWSで進めるセキュリティ改革

  9. 9位

    ネットワーク

    HPEのJuniper買収、1年半越しで完了 「AIネイティブなネットワーキング」目指す

  10. 10位

    ソフトウェア・仮想化

    レッドハット「未来の技術を“無理せず”使えるプラットフォームに」 2025年の事業方針

集計期間:
2025年07月04日~2025年07月10日
  • 角川アスキー総合研究所