このページの本文へ

CloudStackとRightScale採用に浮かび上がる国産事業者の進む道

セルフポータル型クラウドで勝負をかけるIDCフロンティア

2012年03月01日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

データセンター事業者のIDCフロンティアは、シトリックス・システムズの「CloudStack」を採用し、クラウド管理システム「RightScale Management Platform」でも利用できるセルフポータル型クラウドの提供に乗り出している。「徹底的にオープンで行く」というIDCフロンティアに、同社のクラウド戦略について聞いた。

セルフポータル型クラウド展開までの道

 IDCフロンティアは2009年というかなり早い段階から、現在の「IaaS(Infrastracture as a Service)」にあたるクラウドサービスを展開してきた。「世界標準クラウド」「多様なバリエーション」「日本品質の信頼性」という3つを売りにした同社のクラウドは、Hyper-Vをベースにスタート。2010年にVMwareを採用し、おもにSNSやソーシャルゲームなどの事業者に展開してきた。

 しかし、これらのサービスはインフラ構築や管理まで手がける月額型のマネージド型クラウドで、これではカバーできないユーザーが多くいたという。IDCフロンティア ビジネス推進本部 カスタマーコミュニケーション部 部長の粟田和宏氏は「弊社ではこれまでHyper-V、VMwareなどマネージド型のクラウドやってきましたが、今後はよりグローバルで、より利便性の高いモノが必要だと考えていました。簡単に言えば、Amazon EC2のようにWebブラウザだけですべてが済むようなものを、オープンな環境でできないかと探っていたわけです」と、いわゆるパブリッククラウドに近いサービスを標榜した経緯を語る。

IDCフロンティア ビジネス推進本部カスタマーコミュニケーション部 部長 粟田和宏氏

 この結果として、2011年9月に提供を開始したのが、セルフポータル型のクラウドである。セルフポータル型クラウドでは、最短5分でサーバーを調達でき、サービス追加やファイアウォールやロードバランサー設定、スナップショット、監視などをすべて手元のコントロールパネルから行なえる。契約もオンラインサインアップで、課金もリソース使用量に基づいた従量課金。ユーザーやサードパーティが利用できるAPIも提供しており、まさに今どきのクラウドに仕上がった。

リソースの使用量や利用状況、問い合わせ状況なども一目で把握できるセルフポータル

 注目を集めているのは、このセルフポータル型クラウドのインフラ基盤をオープンソースのCloudStackで構築したという点だ。CloudStackは米Cloud.com(現シトリックス)が開発したオープンソースのクラウド基盤向けソフトウェアで、OpenStackやEucalyptusとともに高い人気を誇る。

 米国に何度も足を運び、提携先を探したIDCフロンティア ビジネス推進本部サービス開発部部長 大屋誠氏は、「CloudStackはすでにIaaS事業者での実績が高く、ユーザー情報管理や課金に関しても設計ができていました。ドキュメントを見ても、われわれがずっと苦労してきた点がきちんとカバーされていました」と、CloudStackを採用した理由についてこう説明する。

IDCフロンティア ビジネス推進本部サービス開発部部長 大屋誠氏

 各国の事業者がCloudStackの環境をCloud.comといっしょに構築しており、こうした事業者との運用実績も大きな選定基準になったようだ。また、RightScaleのようなクラウド管理ツールとのエコシステムが確立されていた点、オープンソースで将来性が高い点なども、CloudStack採用の大きな理由だった。「事業者がいくら囲い込もうとしても、世の中はマルチベンダー、オープン環境に動き出している。だったら積極的にオープンなものを取り込んでいこうと考えました」(大屋氏)という方向性である。

RightScaleの採用でさらにグローバルへ

 セルフポータル型クラウドのもう1つの特徴は、米ライトスケールの「RightScale Management Platform」の採用だ。RightScaleは、Amazon EC2をはじめ、米ラックスペース、韓国のKT、インドのタタ・コミュニケーションズなどのクラウドサービスを1つのポータル画面から管理できる。2月15日、IDCフロンティアはRightScale経由での利用をサポートし、試験運用を開始。APIの公開も行ない、2012年の4月には本サービスとしてスタートさせる予定となっている。

RightScale Management Platformによるセルフポータル型クラウドの管理

 RightScale採用の理由に関しては、大屋氏は「やはりCloud.comの強力なリコメンドもありましたし、RightScale自体もAmazon以外のクラウドとの連携を模索していました。お互いの利害が一致したと言うことです」と説明した。IDCフロンティアや顧客企業自体のグローバル展開においても、プライベートクラウドと連携したハイブリッドの将来性を考えても、RightScaleとの提携は有効だった。

 こうしたセルフポータル型クラウドについて、大屋氏は「すぐに使えますし、CloudStackやRightScaleなどの連携性、運用の自動化を進められる点も魅力となっているようです。すでにクラウドをある程度使っている方がこちらを選んでくれています」と述べる。一方でマネージド型もハードウェアのロードバランサーやネットワークの引き込みでなど細かいカスタマイズが可能で、すでにあるシステムをクラウドに移行する場合などでは有効だという。

 今までVMware採用の従量課金型クラウドというパターンが多かった国内のクラウド市場だが、2011年のAWSの国内本格進出で変化が現れている。コスト構造そのものを変えるべく石狩データセンターを構築したさくらインターネットしかり、クラウドのグローバル展開に乗り出したIIJしかり、OpenStackやミドクラ採用を進めているビットアイルしかり、次の布石を打ち始めた事業者も現れた。こうした中、IDCフロンティアは、CloudStackやRightScaleの採用で独自色を発揮していこうとしている。

■関連サイト

カテゴリートップへ